宅建1000本ノック
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改正法一問一答2004
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区分所有法 共用部分の変更・規約の適正化の確保・管理者の権限・法人化
次の記述は,区分所有法によれば,○か×か。 |
1.「改良を目的とし,かつ著しく多額の費用を要する共用部分の変更については,規約に別段の定めがない場合は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決することができる。」 |
2.「管理者は,共用部分・建物の敷地・附属施設について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領に関して,区分所有者を代理することができる。」 |
3.「規約を設定・変更する場合には,専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設につき,これらの形状,面積,位置関係,使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して,区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。」 |
4.「区分所有法3条に規定する団体〔管理組合〕は,区分所有者が30人以上であるときは,所定の手続を経て法人となることができるが,その際監事をおかなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | × |
1.「改良を目的とし,かつ著しく多額の費用を要する共用部分の変更については,規約に別段の定めがない場合は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決することができる。」(類・平成10年問13肢2) |
【正解:×】 ◆共用部分の変更 本肢は改正前の記述であり,誤りです。
改正により,特別決議を必要とする共用部分の変更の定義が次のように変わりました。
この改正は,改正前の「著しく多額の費用」となる基準がアイマイで,定期的に実施する予定になっている外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕を行おうとするときに特別決議にするか普通決議にするかで紛争を生じやすかったため改正されたものです。これにより費用が多額であることは,特別決議を必要とする共用部分の変更かどうかの基準からは外されました。 この改正により,「建物の基本的構造部分を取り壊す工事」や「効用の著しい変更」などを伴わない限り,通常の大規模修繕については普通決議でよいことになります。 ●特別決議を必要とするもの cf.共用部分の形状の著しい変更の例−階段室を改造してエレベーター室にする。 cf.共用部分の効用の著しい変更の例−集会室を廃止して賃貸店舗に転用する。 註 マンションのIT化(光ファイバー・ケーブルの敷設など),バリアフリー化(スロープの併設・エレベーターの新設),耐震基準を満たすための改修工事は,建物の基本的構造部分を取り壊すなどの著しい加工を伴わない限り,普通決議でよいとされる。 『一問一答 改正マンション法』(法務省民事局参事官・吉田徹編著・商事法務)p.24
●改正により「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」は<狭義の管理>となり,普通決議〔区分所有者及び議決権の各過半数〕でよいことになりました。→18条参照
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●関連問題 |
「共用部分の形状の変更は,著しい変更ではない場合でも,集会の特別決議で決する。」 |
【正解:×】本肢を○とするマチガイが多いので注意。
「共用部分の著しい形状の変更」については特別決議が必要ですが,「著しい形状の変更とはいえない場合」は普通決議で足ります。 ▼本肢の間違いは,17条1項の括弧書きの部分を その「形状の変更」又は「効用の著しい変更」を伴わないものを除く。 と読んでしまったことに由来します。このような読み方をしないようにしてください。 |
2.「管理者は,共用部分・建物の敷地・附属施設について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領に関して,区分所有者を代理することができる。」 |
【正解:○】 ◆管理者の代理権・訴訟追行権の拡充
改正前は,共用部分・建物の敷地・附属施設について,不法占拠している者に対して妨害排除請求することについての代理権や訴訟追行権は付与されていても,損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領に関しては代理権や訴訟追行権が付与されていないというアンバランスがありました。改正により,この不均衡が解消されました。 |
●関連問題 |
「管理者は,共用部分・建物の敷地・附属施設について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領に関して,規約又は集会の決議により,区分所有者のために,原告又は被告となることができる。」 |
【正解:○】 |
3.「規約を設定・変更する場合には,専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設につき,これらの形状,面積,位置関係,使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して,区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。」 |
【正解:○】 ◆規約の適正化の確保−利害の衡平が図られるように規約を定める 今回の改正で,規約の設定・変更の際には,衡平性の判断要素を総合的に考慮して,区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならないという義務規定が新設されました。 これにより,区分所有者間の利害の衡平を著しく害する規約の設定・変更は無効と判断されます。また,この義務規定は,附則や本則で,改正施行前に設定されていた規約について適用を排除されていないので,改正施行前に設定されていた規約でも,区分所有者間の利害の衡平を著しく害している場合は無効と判断されることになります。 『一問一答 改正マンション法』(法務省民事局参事官・吉田徹編著・商事法務)p.35
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4.「区分所有法3条に規定する団体〔管理組合〕は,区分所有者が30人以上であるときは,所定の手続を経て法人となることができるが,その際監事をおかなければならない。」(平成2年問14肢1) |
【正解:×】 ◆管理組合法人の人数制限は撤廃された 本肢は,改正前の記述であり,誤りです。 平成14年の改正により30人以上とする管理組合法人の人数要件が撤廃されました。〔本肢は原題のまま。出題当時は○の設定。なお,改正後も後半の監事については正しい。〕 この改正は,30人未満の管理組合でも法人化の要望が多かったためです。 ▼法人格の取得によって,『融資などの取引や訴訟で当事者としての法律関係が明確になる』,『法人名義で不動産登記ができる』,『管理組合法人の財産と区分所有者の個人財産との区別が明確になる。』などのメリットがあります。 ●注意・1 2人以上が必要 法3条に規定する区分所有者の団体〔管理組合〕は2名以上の区分所有者で構成されている必要があるため,管理組合法人になる場合でも, 区分所有者が2名以上であることを要する。(建物区分所有法改正要綱中間試案の注を抜粋) ●注意・2 区分所有者が一人の場合は法人化できない 管理組合法人の人数要件を撤廃するものとしても,区分所有者の数が一人である場合にまで法人化を認めるものではない。なお,管理組合法人が設立された後に各専有部分が一人の区分所有者に帰属するに至った場合であっても,その後の権利変動で複数の区分所有者に帰属する事態が容易に生じうることなどから,これを解散事由とするのは相当ではないと考えられる。(建物区分所有法改正要綱中間試案補足説明から抜粋)
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