宅建1000本ノック
  改正法一問一答2004 

区分所有法 電磁的方法による決議,合意,議決権の行使,規約・議事録の電磁的記録 


区分所有法によれば,次の記述は,○か×か。

1.区分所有法又は規約により集会において決議すべき場合において,区分所有者全員の承諾があるときは,集会を開催することなく,書面又は電磁的方法による決議をすることができる。

2.区分所有法又は規約により区分所有者の集会において決議すべきものとされている事項については,区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があっても,集会の決議に代えることはできない。

3.「集会の議決権の行使は,集会に出席して行うことを要し,書面や電磁的方法により,又は代理人によって行うことはできない。」

4.「規約や集会の議事録は,書面のほか,法務省令で定める電磁的記録により作成することができる。」

【正解】

× ×

1.区分所有法又は規約により集会において決議すべき場合において,区分所有者全員の承諾があるときは,集会を開催することなく,書面又は電磁的方法による決議をすることができる。

【正解:≪集会を開催しない決議方法・1≫

事前に全員の承諾を得た上での『書面又は電磁的方法による決議』 
                      ⇒ 集会の決議と同一の効力を持つ

 区分所有法又は規約により集会で決議すべき場合において,区分所有者の全員の承諾があるときは,書面又は電磁的方法による決議をすることができる。(45条1項)

 区分所有者が全国に分散しているリゾート・マンションや大規模マンションのように,全員が集まって集会を開催するのが困難な場合があります。このような場合に,集会の開催をせずに,簡便な意思決定の方法として「区分所有者全員の書面又は電磁的方法による決議」が平成14年法で認められました。区分所有者が一同に会して討議を行う過程を省略するという意味においては集会決議の重大な例外と言えます。〔電磁的方法は,法務省令で定めるものに限る。具体的には,インターネットや電子メールなど電子認証を用いたもの〕(45条1項,39条3項,法務省令3条)

注意事項

・前もって事前に全員の承諾がなければならない。一人でも反対すれば,電磁的方法による決議はできない。

・決議事項についての制限はないので,特別決議,普通決議のどちらもできる。

・『書面又は電磁的方法による決議』がなされた場合でも,集会の決議が開催されたとみなされるわけではないので,管理者は,事務に関する報告(43条)のための毎年一回の集会の招集(34条2項)を免れることはできない。

書面又は電磁的方法による決議  書面又は電磁的方法による
 全員の承諾が必要
電磁的方法による議決権の行使  規約又は集会の決議が必要

法務省令・電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾

第5条第1項 集会を招集しようとする者は,法第45条1項の規定により電磁的方法による決議をしようとするときは,あらかじめ,区分所有者に対し,その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し,書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

●補充問題
「集会を招集しようとする者は,集会を開催することなく,書面又は電磁的方法による決議をしようとするときは,あらかじめ,書面又は電磁的方法による区分所有者全員の承諾を得なければならない。」

【正解:

2.区分所有法又は規約により区分所有者の集会において決議すべきものとされている事項については,区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があっても,集会の決議に代えることはできない。(昭和57年・問14・肢4改)

【正解:×≪集会を開催しない決議方法・2≫

◆書面又は電磁的方法による全員の合意 ⇒ 集会の決議と同一の効力を持つ

 区分所有法又は規約により区分所有者の集会において決議すべきものとされている事項でも,区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があれば,書面又は電磁的方法による決議があったものとみなされ,集会の決議に代えることができます。(新45条2項,1項)⇒ 分譲マンションの原始規約の設定のときに,分譲業者が規約案を作成・提示して,購入者の同意を得るという方式がとられることがありますが,これも「書面による合意」によるものです。

●改正内容

 改正前の昭和58年法では,主に小規模マンションの便宜を考慮して,書面による合意(旧45条1項,「書面決議」,「持回り決議」とも呼ばれていた。)と招集手続の省略(36条)が定められていました。

 今回の改正では,電磁的方法による決議権の行使の導入に伴い,従来の旧45条1項の書面のみに対して,電磁的方法が加えられました。

●新旧の条文の違い
【改正後】 書面又は電磁的方法による合意 

 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については,区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があったときは,書面又は電磁的方法による決議があったものとみなす。(新45条2項)

【改正前】 書面による合意

 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については,区分所有者全員の合意があったときは,集会の決議があったものとみなす。(旧45条1項)

『書面又は電磁的方法による合意』がなされた場合でも,集会の決議が開催されたとみなされるわけではないので,管理者は,事務に関する報告(43条)のための毎年一回の集会の招集(34条2項)を免れることはできません。

●招集手続の省略
【改正後】 集会は,区分所有者全員の合意があるときは,招集の手続を経ないで開くことができる。(36条2項)

 ⇒ この場合は,『集会においては,あらかじめ通知した事項についてのみ,決議することができる。』(37条1項)という規定は適用を除外されている。

3.「集会の議決権の行使は,集会に出席して行うことを要し,書面や電磁的方法により,又は代理人によって行うことはできない。」(宅建・昭和63年・問14・肢1改)

【正解:×

◆書面・電磁的方法・代理人による議決権の行使

 集会で議決権を行使することは区分所有者の権利なので,都合が悪くて出席できなくても,議決権を行使できるようにしておく必要があります。

 そのため,区分所有法では,書面・電磁的方法・代理人によって議決権を行使できるという規定を定めています。(39条2項,3項,法務省令3条)

 ・書面による議決権の行使(書面の投票)またはそれに代わる法務省令で定める電磁的方法による議決権の行使〔集会に出席できない理由を示す必要はない。〕

 ・代理人による議決権の行使〔区分所有法では,代理権を与えた旨の委任状の交付については規定されていないことに注意。〕

 ただし,電磁的方法によって議決権を行使するには,規約又は集会の決議が必要です。

 代理人による議決権の行使  規約又は集会の決議は必要ではない。
 書面による議決権の行使
 電磁的方法による議決権の行使  規約又は集会の決議が必要。

電磁的方法による議決権の行使

 区分所有者は,規約又は集会の決議により書面による議決権の行使に代えて,法務省令で定める電磁的方法によって議決権を行使することができる。(39条3項,法務省令3条)

●補充問題
「電磁的方法による議決権の行使について,集会を招集する者は,区分所有者全員の承諾を得なければならない。」

【正解:×】『全員の承諾』ではなく,『規約又は集会の決議』によります。

4.「規約や集会の議事録は,書面のほか,法務省令で定める電磁的記録により作成することができる。」

【正解:

◆規約・集会の議事録の電子化(IT化)

 改正前は,規約や集会の議事録は書面のみの規定であり,パソコンのハードディスクやフロッピィディスク等の電磁的記録で作成・保管することはできませんでした。改正により,法務省令第1項に定める電磁的記録に限り,可能になりました。(30条5項,42条2項)

●補充問題
「電磁的記録により集会の議事録を作成しようとする場合,集会を招集する者は,区分所有者全員の承諾を得なければならない。」(マンション管理士・平成15年・問7・肢3)

【正解:×

 集会の議事については,議長は,書面又は務省令で定める電磁的記録により,議事録を作成しなければならない。(42条2項,法務省令1条)

 → この場合,議長及び出席した区分所有者の2人が,署名押印に代わる電子署名をしなければならず,これを省略することはできない。(42条3項,4項,法務省令4条)

 区分所有法では,集会の議事録や規約の作成・保管を,(法務省令で定める)電磁的記録ですることについての全員の承諾は必要とはされていません。

 規約は,書面又は法務省令で定める電磁的記録により,これを作成しなければならない。(30条5項,法務省令1条)

●条文チェック
建物の区分所有等に関する法律
建物の区分所有等に関する法律施行規則 (法務省令)

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