民法クローズ・アップ
  判例による意思表示の研究
 意思の欠缺 / 意思表示・第2回・意思表示の流れ

この連載は、本試験の傾向分析と意思表示の基本(条文・判例・通説)を毎回、

まとめていきます。

◆前回のまとめ◆

意思表示単独の知識で解ける問題は減少傾向複合化している

・意思表示単独の知識を問うものにしても、昨年の通謀虚偽表示の例で見るようにこれまでの基本書の範囲に収まらないものが出題されている

(ただ、これは部分的であり、仮に知らないものが出題されても、二択にしぼる所まではいきます。)

民法を既習の方は、判例や通説まで収めたコンパクトな民法の参考書を、手元に

おいておくと、基本書に掲載していないものがあっても安心。(全くの初心者には

この種の本は向かないのでご注意を。)

◆今回の傾向分析 : 代理で出題された意思表示 (複合問題の例)

2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年
未成年
被保佐人
心裡留保
通謀虚偽表示
錯誤
詐欺
強迫
公序良俗
相続
顕名
無権代理
表見代理
双方代理
自己代理
複代理
代理人の破産
授与者の死亡

 これでみると、代理では、未成年の代理人、詐欺が複合されていることが

わかります。9年、11年の代理は複合問題ではありませんでした。

 最近の民法の出題では、より実務に近い債権、物権、不法行為などの出題が

目立ちます。

◆今回のお題
意思表示 (意思から表示へ)←民法での心理分析

●意思表示の流れ

動機→効果意思→表示意思→表示行為

 動機(彼女と自分の車でドライブしたい)

 効果意思(会社の隣のディーラーでトヨタのアリストを買おう)

 表示意思(あのディーラーにアリストを買いたいと言おう)

 表示行為(ディーラーの販売員にアリストを買いたいと表示する行為)

大雑把にまとめれば、このようになります。

宅建の本試験には出題されませんが、アタマに入れておくと流れがつかめます。

●意思の欠缺〔意思の不存在〕 → 契約当事者双方または一方に契約をする意思がない

表示行為に対応する意思が欠けていたり、一致していない場合を「意思の欠缺

(けんけつ)」〔意思の不存在〕といいます。これが、心裡留保・虚偽表示・錯誤の3類型あります。

(意思と表示の不一致、

原則としては 心理留保は有効

         虚偽表示は無効

         錯誤は、要素の錯誤のみ、無効)

●瑕疵ある意思表示 

効果意思形成過程に瑕疵を生じたものを「瑕疵ある意思」と呼んでいます。

ご存知のように、詐欺・強迫があります。

この2つは、効果意思と表示は一致しているが、他者の違法行為が介入して

効果意思が歪められたもので、取消うるものとして表意者を保護しています。

●動機

さらに、意思表示の流れでいくと、動機もポイントだと思います。

90条 不法な動機でなされた法律行為は公序良俗違反で無効

96条1項 詐欺・強迫で動機に不法な作用が加えられたときは、

その法律行為は、取消しうるものとされています。

無効と取消は、Echoさんが以前、まとめてくださったことがあり、

全体像はEchoさんにおまかせします。→参照・民法重点ノート

意思表示の流れの中に、無効と取消が潜んで

いることは注意しておいていいと思います。


引き続き、意思表示の2回目を読む

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