Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

不法行為に関する問題5 


【正解】

× × ×

●不法行為

 過失相殺、共同不法行為、損害賠償請求権の時効消滅、損害賠償の履行遅滞の起点

Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述は、民法の規定及び判例によれば、○か×か。
(平成12年)

1.「Aの不法行為に関し、Bにも過失があった場合でも、Aから過失相殺の主張が

なければ、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができない。」

【正解:×

◆過失相殺

 (加害者)
 | 不法行為
 (被害者) ・・・過失があるとき

不法行為で、被害者にも過失があるときは、裁判所は損害賠償の額を定めるときに、公平の見地から過失相殺がなされ、この過失を斟酌し、賠償額を減額することができます。(722条2項)

  裁判所は、加害者が過失相殺を主張しなくても、斟酌できるとされており、過失相殺するかどうか、また相殺する割合についても裁判官の裁量によるとされています。(最高裁、昭和34.11.26)

2.「不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失が

Cより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。」

【正解:

◆共同不法行為では、各加害者に、全損害の賠償義務

        不法行為
 (加害者)・・・・・・・・・・・(加害者)
    
       ↓ 
         (被害者)

  共同不法行為によって他人に損害を与えたときは、その全額について、共同不法行為者は各自連帯して賠償責任を負います。(719条1項)

 → この意味は、各加害者は独立に全損害を賠償する義務があるということです。したがって、Aの過失が軽微だからといって、その分免じられるということはありません

判例によれば、共同不法行為での賠償債務は不真正連帯債務とされています。(最高裁、昭和57.3.4)

 連帯債務では、債務者の1人に消滅時効が完成すれば、他の債務者の債務も消滅しますが、不真正連帯債務では、債務者の1人に対する損害賠償請求権が消滅時効にかかったときでも、そのことによってほかの債務者に対する損害賠償の義務が消滅することはない、とされています。

→ 共同不法行為者間での求償関係については、平成14年に出題。

3.「Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を

行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。」

【正解:×

◆損害賠償請求権の時効消滅 

 不法行為の損害賠償請求権は、

 ・知ったときから3年 (消滅時効)

 ・不法行為時から20年 (除斥期間) (最高裁・平成元.12.21)

経過すると消滅。

 不法行為の損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから3年の経過で時効により消滅します。(724条前段)

また、不法行為の時から20年が経過した場合も賠償請求権は消滅します。(724条後段)判例によれば、これは除斥期間とされており、消滅時効のように中断によって新たな期間が再び進行するということはなく、この期間に権利行使がなければ、原則として損害賠償の請求権は消滅するというものです。(一定の場合には例外も。最高裁・平成10.6.12)

4.「Aの損害賠償債務は、BからAへ履行の請求があった時から履行遅滞となり、Bは、

その時以後の遅延損害金を請求することができる。」

【正解:×

◆不法行為の損害賠償債務の履行遅滞の起点

 不法行為の損害賠償債務は、被害者の救済という点から、不法行為の時点から履行遅滞になるとされています。(最高裁・昭和37.9.4)

 不法行為の損害賠償債務は、不法行為の時点から履行遅滞になる。 

 その消滅時効の起算点は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」(724条前段)

●チェック
不法行為に基づく損害賠償請求債務の履行遅滞に陥る時期又は消滅時効の起算点は,損害が発生したときである。

【正解:×


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