Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

不法行為に関する問題7 共同不法行為と使用者責任


【正解】

×

●共同不法行為(719条)・使用者責任(715条)

 今回の問題は、共同不法行為と使用者責任のダブル出題です。

Aの被用者Bと,Cの被用者Dが,A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為をし,A,B,C及びDが,Eに対し損害賠償を負担した場合に関する次の記述は,民法の規定及び判例によれば,○か×か。(平成14年)

1.「Aは,Eに対するBとDの加害割合が6対4である場合は,Eの損害全額の賠償

請求に対して,損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。」

【正解:×

◆『使用者責任』、『共同不法行為は連帯責任』

 (使用者)             (使用者)
 |                  |
 (被用者) …共同不法行為… (被用者)
 加害割合6     ↓      加害割合4 
             (被害者)

 共同不法行為によって他人に損害を与えたときは、共同不法行為者は各自とも連帯して、損害賠償の全額について責任を負います。(719条1項) ← 共同不法行為

 被用者が不法行為をした場合は、原則として使用者も使用者責任を負うので、被用者だけではなく使用者も、損害賠償の全額について責任を負います。(715条)
 ← 不法行為での使用者責任

 したがって、共同不法行為によってB、Dとも加害割合には関係なく、損害賠償の全額を支払う責任があり、また使用者責任によってA、Cとも、B、Dの加害割合には関係なく、損害賠償の全額を支払う責任があります。

 したがって、Aは、被害者Eに対して、損害賠償の全額を支払う責任があります。

加害割合は、共同不法行為者側での責任の割合に過ぎず、被害者に対しては各自とも損害賠償の全額を支払う責任があります。(被害者が損害賠償全額の支払いを受けるまで)。また、本設問では、Eは、A,B,C,Dいずれに対しても全額の損害賠償を請求することができます。→不真正連帯債務 平成11年肢3平成12年肢2

2.「Aが,自己の負担部分を超えて,Eに対し損害を賠償したときは,その超える

部分につき,Cに対し,Cの負担部分の限度で求償することができる。」

【正解:

◆負担部分を超えて賠償−求償権 (判例)

 (使用者)             (使用者)
 |                  |
 (被用者) …共同不法行為… (被用者)
             ↓      
             (被害者)

 は、共同不法行為者Dの使用者Cに対して、求償できるかを本設問では訊いています。

 共同不法行為の加害者間では、過失割合に応じて求償が認められます。(通説・判例)

 共同不法行為を行った者が自己の負担部分を超えて、被害者に損害賠償したときは、他の共同不法行為者に対して自己の負担部分を超えた損害賠償分について求償権を持ちます。

 本設問では、Bの使用者であるAが、Dの使用者であるCに対して、Cの負担部分の限度で求償することができます。 (最高裁、平成3.10.25)

3.「Aは,Eに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は,損害

の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において,Bに対し,損害

の賠償又は求償の請求をすることができる。」

【正解:

◆被用者への求償権の限度 (判例)

 (使用人) 損害賠償債務を負担
 |
 (被用者)――――(被害者) 
  不法行為

 使用者が被害者に損害賠償金を支払ったときは、被用者に対して求償することができますが(715条3項)、使用者が被用者に無制限に求償することはできず、判例では、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」使用者は被用者に対して求償することができる、としています。(最高裁、昭和51.7.8)

4.「Dが,自己の負担部分を超えて,Eに対し損害を賠償したときは,その超える部分

につき,Aに対し,Aの負担部分の限度で求償することができる。」

【正解:

◆負担部分を超えて賠償−求償権 (判例)

 (使用者)             (使用者)
 |                  |
 (被用者) …共同不法行為… (被用者)
             ↓      
             (被害者)

 は、共同不法行為者Bの使用者Aに対して、求償できるかを本設問では訊いています。これも判例をベースにした出題です。

 Dが自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分については、共同不法行為者Bの使用者であるAに対しAの負担部分の限度で求償することができます。(最高裁、昭和63.7.1)


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