Brush Up! 権利の変動篇

保証の過去問アーカイブス 平成15年・問7 単純保証と連帯保証の違い


は,の所有する土地をに売却し,の売買代金の支払債務についてとの間で保証契約を締結した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。(平成15年・問7)

1.「の保証債務がとの連帯保証債務である場合,に対して保証債務の履行を請求してきても,に対して,まずに請求するよう主張できる。」

2.「の保証債務にと連帯して債務を負担する特約がない場合,に対して保証債務の履行を請求してきても,は,に弁済の資力があり,かつ,執行が容易であることを証明することによって,の請求を拒むことができる。 」

3.「の保証債務がとの連帯保証債務である場合,に対する履行の請求による時効の中断は,に対してもその効力を生ずる。」

4.「の保証債務にと連帯して債務を負担する特約がない場合,に対する履行の請求その他時効の中断は,に対してもその効力を生ずる。」

【正解】

×

1.「の保証債務がとの連帯保証債務である場合,に対して保証債務の履行を請求してきても,に対して,まずに請求するよう主張できる。」

【正解:×平成10年問4肢2,昭和56年問5肢1,検索の抗弁権がない平成5年問4肢3
◆補充性−催告の抗弁権と検索の抗弁権
 → 連帯保証人は,「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」を主張できない。

      (主たる債務者)
   /
  
   \
      (連帯保証人)   催告の抗弁権はない

 連帯保証には,債権者から見ると,主たる債務者・連帯保証人のどちらからでも自由に選んで弁済を請求できるという性質があります。この点が保証とは異なる点です。

 このため,連帯保証人には,「まず主たる債務者であるに対して請求する」催告の抗弁権(452条)はありません。検索の抗弁権もありません。(454条)
 したがって,本肢は×になります。

(注意) 1) 保証契約でも,また連帯保証でも,主たる債務者には,催告の抗弁権は認められていない。

2) 債権者は,もし保証人が催告の抗弁権を行使しても,その後どんな方法でも〔裁判外でも一言「払え」と言えばよい〕主たる債務者に請求すれば,保証人に履行を請求できるので,余り実効性はないと言われています。

2.「の保証債務にと連帯して債務を負担する特約がない場合,に対して保証債務の履行を請求してきても,は,に弁済の資力があり,かつ,執行が容易であることを証明することによって,の請求を拒むことができる。 」

【正解:昭和45年
◆補充性−催告の抗弁権と検索の抗弁権
 → 保証人は,「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」とも主張できる。

 保証〔単純保証,普通保証〕とは,債権者が債務者から債権を回収できない場合に初めて保証人に請求できるという性質があります。〔補充性

 このため,民法では,保証人に「催告の抗弁権(452条),「検索の抗弁権(453条)を認めています。

≪検索の抗弁権≫
 保証人が「債権者に弁済の資力があり、かつ執行が容易であること」を証明した場合には、債権者はまず主たる債権者の財産について執行しなければならない。(453条)

◇本問題は,肢1とセットの問題。

●類題

1.「保証人は,主たる債務者の委託を受けて保証をしたときは,検索の抗弁権を有しない。」(昭和45年)

【正解 : ×

 主たる債務者の委託を受けたか受けなかったかで異なるのは,保証人が弁済をしたときに,主たる債務者への求償権の範囲等に差があるだけです。(459条,460条,462条)

 検索の抗弁権催告の抗弁権委託の有無によって変わりはありません

3.「の保証債務がとの連帯保証債務である場合,に対する履行の請求による時効の中断は,に対してもその効力を生ずる。」

【正解:平成7年問3肢1,平成10年問4肢3,昭和63年問9肢2
◆連帯保証人への履行の請求による時効の中断は,主たる債務者にも及ぶが,
 保証人への履行の請求による時効の中断は,主たる債務者には及ばない。

 連帯保証人は,主たる債務者と連帯して債務を負担しなければならないので,債権者が連帯保証人に履行の請求をすれば,主たる債務者に請求したのと同じ効力を持つことになります。この結果,主たる債務者に対しても時効中断の効力が生じます(458条,434条)

 しかし,保証人に履行を請求しても,主たる債務の時効は中断されません
つまり,先に主たる債務が時効によって消滅すれば,保証人はこれを援用して責任を免れることができます。

4.「の保証債務にと連帯して債務を負担する特約がない場合,に対する履行の請求その他時効の中断は,に対してもその効力を生ずる。」

【正解:昭和63年問9肢2;連帯保証人について 平成7年問3肢3
◆主たる債務者への履行の請求は,保証・連帯保証人にも及ぶ

 債権者が主たる債務者に対してした時効の中断は,保証人にも及びます(457条1項)

 このようにしておかないと,保証債務と主たる債務は別個のために,保証債務だけが時効によって消滅することがありえるからです。つまり,主たる債務が消滅しない限り,保証債務も存続することになっています。

●類題

 主たる債務者を,その連帯保証人を,債権者とした場合,次に掲げる権利のうち,連帯保証人に認められないものはどれか。(宅建・昭和48年)

 1 に対する同時履行の抗弁権をもってに抗弁する権利

 2 に対する反対債権により,相殺をもって対抗する権利

 3 に主たる債務の履行を請求してきた場合の催告の抗弁権

 4 が主たる債務を弁済した場合のに対する求償権

【正解 : 】1の同時履行の抗弁権については,昭和41年出題を参照してください。

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