Brush Up! 権利の変動篇
意思表示の過去問アーカイブス 通謀虚偽表示 (平成5年・問3)
Aが,その所有地について,債権者Bの差押えを免れるため,Cと通謀して,登記名義をCに移転したところ,Cは,その土地をDに譲渡した。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(平成5年・問3) |
1.「AC間の契約は無効であるから,Aは,Dが善意であっても,Dに対し所有権を主張することができる。」 |
2.「Dが善意であっても,Bが善意であれば,Bは,Dに対して売買契約の無効を主張することができる。」 |
3.「Dが善意であっても,Dが所有権移転の登記をしていないときは,Aは,Dに対し所有権を主張することができる。」 |
4.「Dがその土地をEに譲渡した場合,Eは,Dの善意悪意にかかわらず,Eが善意であれば,Aに対し所有権を主張することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「AC間の契約は無効であるから,Aは,Dが善意であっても,Dに対し所有権を主張することができる。」 |
【正解:×】 ◆通謀虚偽表示 : 善意の第三者には対抗できない A−通謀虚偽表示−C−D(善意) AC間の登記名義の移転は通謀虚偽表示なので無効ですが、善意の第三者には対抗することができません。(94条2項) したがって、Aは,Dが善意の場合は,Dに対し所有権を主張することはできません。 |
2.「Dが善意であっても,Bが善意であれば,Bは,Dに対して売買契約の無効を主張することができる。」 |
【正解:×】難 ◆Aの債権者も,善意の第三者Dには無効を主張できない(判例) B(Aの債権者) AC間の登記名義の移転は通謀虚偽表示なので無効ですが、善意の第三者には対抗することができません。(94条2項) これは当事者だけではなく、当事者AC以外の者であっても、無効であることを善意の第三者には対抗できないと解されています。 このことを、肢1では当事者Aの視点から問い、肢2では当事者以外の,Aの債権者であるBの視点から問うています。 判例によれば、直接の当事者のAだけでなく、Aの債権者であるBも、善意の第三者Dが出現した時点で、通謀虚偽表示により無効であることを、Dに対しては主張できなくなります。(大審院・明治37.12.26) ▼Bの善意という設定は、この問題を考えるには意味のないノイズまたはブラフです。 |
3.「Dが善意であっても,Dが所有権移転の登記をしていないときは,Aは,Dに対し所有権を主張することができる。」 |
【正解:×】 ◆善意の第三者は,登記がなくてもAに対抗できる A−通謀虚偽表示−C−D(善意・未登記) 判例では、善意の第三者として保護されるには、ただ単に善意でありさえすればよく、登記がなくても(大審院・昭和10.5.31)、また過失があっても(大審院・昭和12.8.10)、善意の第三者CはAに対抗できる、としています。 |
4.「Dがその土地をEに譲渡した場合,Eは,Dの善意悪意にかかわらず,Eが善意であれば,Aに対し所有権を主張することができる。」関連・平成7年 |
【正解:○】 ◆善意の第三者 A−通謀虚偽表示−C−D(?)−E(善意) 通謀虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗できません。判例によれば、この善意の第三者には転得者(その後さらに譲り受けた者)も含まれており、Dの善意・悪意がこの設問ではわかりませんが,この場合のEは善意であることから、Aに対して所有権を主張することができます。(最高裁・昭和45.7.24) ⇔善意の第三者Pからの転得者Q A−通謀虚偽表示−C−P(善意)−Q(?) 判例では、善意のPによって権利関係は確定し、その後のQは悪意であっても所有権を取得し、Aに対し所有権を主張することができるとしています。(大審院・昭和6.10.24) |