Brush Up! 権利の変動編

区分建物の登記に関する問題3 共用部分

正解・解説

区分建物の登記の記載例


【正解】

× × ×

 区分建物についての登記に関する次の記述は○か、×か。

1.「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又は

その一部の共用に供されるべき共用部分は、区分建物として登記をすることが

できない。」H1-16-4改

【正解:

◆法定共用部分

 法定共用部分(数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき共用部分)は、区分建物の要件(構造上の独立性、利用上の独立性)を満たさないので、区分建物として登記することはできません。

 もっとも、法定共用部分であっても、区分所有者全員の同意の上で(共有物の変更、民法251条)、構造上・利用上の独立性をもつように区画して区分建物として登記申請することは可能ですが、本肢はそこまでは想定外と思われます。

法定共用部分の例

専有部分以外の

建物の躯体部分など

 廊下、階段室、玄関、ロビー、バルコニー、ベランダ、屋上、

 屋根、外壁、柱・梁、耐力壁、基礎、電気室、機械室、

 共用トイレ、エレベーター室(隔壁については議論があります)

専有部分に属さない

建物の附属物

 電気の配線、ガス、水道の配管、排水管、消火・冷暖房設備、

 エレベーター、屋外の給水塔、避雷設備、共聴アンテナ等

2.「法定共用部分は,その旨の登記を,区分建物の属する一棟の建物の表題部に

記録される。」昭和62-15-3

【正解:×

◆法定共用部分である旨=登記されない

 法定共用部分である旨は、規約共用部分と異なり、登記されません。

1棟の建物のうち、専有部分とされないものは全て法定共用部分とされます。

規約共用部分である旨の登記  当該区分建物の登記記録の表題部
法定共用部分である旨の登記  このようなものはない

3.「区分建物が規約による共用部分である旨の登記は、当該区分建物の登記記録の

表題部にされる。」H13-14-3,H8-16-3,

【正解:】重要!

◆規約共用部分の登記=区分建物の表題部

 規約共用部分は、区分建物(専有部分)及び附属の建物で、区分所有者の規約の設定により共用とされた部分をいいます。

 「規約による共用部分の登記」は、区分所有者全員が知っておくべき事項なので、規約共用部分である旨の登記の申請があると、当該区分建物の登記記録の“表題部”にされます。

 「(規約)共用部分たる旨の登記」がなされると、表題部は残されますが、甲区および乙区になされた所有権その他の権利の登記はすべて抹消され、所有権その他の権利に関する登記は一切されません。→設問6

規約共用部分である旨の登記  当該区分建物の登記記録の表題部
法定共用部分である旨の登記  このようなものはない

規約共用部分の例

その1棟の建物の中にある

(区分所有権の目的となる部分)

 管理人室、倉庫・車庫、集会室、トランク

 ・ルーム(収納設備)など

別棟・附属の建物など  管理事務所、集会所、物置、倉庫、車庫、

 ゴミ置場、処理場など

 トランク・ルームは、規約共用部分として、専用使用権が設定されている場合が
 あります。(各専用部分の附属建物として登記されている場合もあります。)

規約共用部分は、独立して取引の対象になりうるものであるため、規約共用部分である旨の登記をしておかないと第三者に対抗することができませんこれは、取引の安全のために、区分所有法第4条2項の後段で規定されています。ただ、この登記は強制されているわけではなく、申請期間も特に定められているわけではありません。

規約の廃止などにより、規約共用部分を専有部分に復する場合も、その旨を登記することにより、第三者に対抗できます。

●参考問題
1.「区分建物を規約により共用部分とした場合には、その旨の登記をしなければ、これを第三者に対抗することはできない。」頻出問題

【正解:

●共用部分の登記と対抗関係→混同しがちなものを分節化しましょう。
●共用部分の持分の移転は、専有部分の移転に連動する

 共用部分については、区分所有法11条3項で、「民法177条の規定は、共用部分には適用しない」とされています。(民法177条 不動産の物権の得喪及び変更は登記をしておかなければ第三者に対抗できない。)この11条3項の意味は次のようなことです。

 区分所有法では、共用部分の持分を専有部分と分離して処分することは原則として禁止されており(15条1項)、また共用部分の持分は専有部分の処分に従うものとされています。(15条2項)

 11条3項はこれを受けて、専有部分の登記をもって共用部分の持分に関する物権変動を第三者に対抗できるとしているわけです。(共用部分の持分の取得を共用部分に登記しなくても、専有部分の取得の登記で、共用部分の持分の取得を第三者に対抗できることになります。)

⇔〔比較〕▼民法上の共有では、共有物の持分を譲り受けた者は、その持分を登記しておかなければ177条により第三者に対抗することができないとされています。

●規約共用部分、団地共用部分の登記

 また、区分所有法4条2項後段では、特定の専有部分または附属の建物を規約共用部分と定めた場合は、「共用部分たるの旨の登記をしなければ、第三者に対抗することができない」とされています。

規約共用部分  共用部分たる旨の登記をしておかないと
 第三者に対抗できない。
団地共用部分  団地共用部分たる旨の登記をしておかないと
 第三者に対抗できない。
法定共用部分  共用部分であることは登記されないが、
 第三者には対抗できる。

▼団地共用部分

 一団地内の附属施設や専有部分は、団地の規約により、団地共用部分とすることができますが、この場合もその旨の登記をしなければ第三者に対抗できないとされています。

▼公正証書

 規約共用部分、団地共用部分の登記申請においては、次のものを添付することに注意する必要があります。(赤字の部分はデベロッパー・分譲業者などを示します。)

規約共用部分  最初に建物の専有部分の全部を所有する者が設定した規約は、
 公正証書により作成したものでなければならない。

 (区分所有法32条)

団地共用部分  団地内の附属施設(区分所有建物の場合は専有部分)である
 建物を団地共用部分にする場合、一団地内の数棟の全部を
 所有する者
が設定した規約は、公正証書により作成されたもの
 でなければならない。(区分所有法67条1項、2項)
●参考問題
1.「共用部分についても、区分所有者の専有部分の所有権保存又は移転の登記とあわせて、共有持分の登記をする必要がある。」マンション管理士・平成13-17-1改

【正解:×

◆共用部分の持分は、専有部分の処分に従う。

 法定共用部分についてはもともと登記することはできず〔不動産登記法・91条3項〕、また共用部分の持分については、専有部分の所有権移転登記で、物権変動を(共用部分の持分の取得を)第三者に対抗できるとされており、登記はされません。〔区分所有法・11条3項〕

敷地権の持分の割合は、専有部分の表題部の「敷地権の表示」の欄に記載されます。

4.「区分所有建物における規約共用部分の登記は、その旨を当該建物の登記記録の

甲区に記載することにより表示される。」昭和62-15-2

【正解:×

◆規約共用部分の登記=当該建物の表題部

 × 当該建物の登記記録の甲区

ex.管理人室、集会室などの、「専有部分が規約共用部分」の場合は、当該区分建物の表題部の「原因及びその日付」の欄に、<規約設定、共用部分>と記載されることにより「共用部分たる旨」が記載されたことになります。

5. 「共用部分である旨の登記は、共用部分とされる建物の表題登記がしていなくても

することができる。」(調査士択一・昭和44年・問17肢2改)

【正解:×

◆共用部分たる旨の登記

 表題登記がされていない建物については、規約共用部分である旨の登記をすることはできません。

 建物の表題登記がされ、表題部に規約共用部分たる旨の登記がなされていれば、規約共用部分となります。(法定共用部分である旨は登記されないため、共用部分たる旨の登記がなされているのは規約共用部分のみになります。)

●参考問題
1.「専有部分と規約による共用部分は、その旨の表示登記をすることができるが、法定共用部分はその旨の表示登記をすることができない。」マンション管理士・平成13-4-4

【正解:

 専有部分、規約共用部分は、構造上・利用上の独立性を有しており、単独で売買の対象にもなり得るものですが、法定共用部分は、構造上・利用上の独立性を有しておらず、不動産登記法でも特にその旨の登記がされるわけではありません。

6. 「共用部分たる旨の登記がされている区分建物については、所有権その他権利に

関する登記をすることはできない。」(調査士択一・平成7年・問13)

【正解:

◆規約共用部分には権利に関する登記はない

 規約共用部分には、民法177条の規定は適用されないので、所有権その他の権利に関する登記をすることはできません。(区分所有法11条3項)

 → 設問3参照


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