Brush Up! 権利の変動篇
共有の過去問アーカイブス 平成6年・問3
A・B・Cが別荘を持分均一で共有し,特約がない場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。(平成6年・問3) |
1.「管理費は,A・B・Cがその利用の程度に応じて負担しなければならない。」 |
2.「別荘の改築は,A・B・C全員の合意で行うことを要し,Aが単独で行うことはできない。」 |
3.「Aは,不法占拠者Dに対して単独で明渡請求を行うことができるが,損害賠償の請求については,持分の割合を超えて請求することはできない。」 |
4.「分割の請求については,Aは,いつでもすることができ,B・Cとの協議が調わないときは,裁判所に請求することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「管理費は,A・B・Cがその利用の程度に応じて負担しなければならない。」
【正解:×】 ◆管理費用は持分に応じて負担する ×…「利用の程度」 → ○ …「持分に応じて」 各共有者は、その持分に応じて管理の費用を払うほか、その他の共有物の負担もしなければいけません。(253条1項) 管理の費用とは、具体的には、税金などの租税公課、共有物の保存・利用及び改良・変更行為に伴うものを意味します。 (共有者の一人がその費用を支払ったときはほかの共有者に対して当然、償還請求をすることができます。) |
2.「別荘の改築は,A・B・C全員の合意で行うことを要し,Aが単独で行うことはできない。」
【正解:○】 ◆変更行為 共有物の物理的な変更(土地の形状変更・増築・改築・建替えなど)、法律的な処分(売買契約の締結・取消・解除)をするなど、共有物の性質や形状を変更することには、共有者全員の同意が必要です。 例・田畑 → 宅地 に造成する。(土地の形状変更にあたる。) |
●共有物の保存・管理・変更 | ||
保存行為 | 共有物の現状を維持する行為 | 単独でできる |
管理行為 | 使用方法の協議
利用行為 (収益を図る) 改良行為 (経済的価値を増加) |
共有者の持分の価格に従い,
その過半数で決定する |
変更行為 | 物理的な変更
法律的な処分 |
全員の同意が必要 |
3.「Aは,不法占拠者Dに対して単独で明渡請求を行うことができるが,損害賠償の
請求については,持分の割合を超えて請求することはできない。」
【正解:○】 ◆保存行為は単独でもできるが、損害賠償は持分の割合で請求 不法占拠者に対する返還要求(明渡し請求)は保存行為なので単独でもできます(252条但書)が、その損害賠償請求については、持分の割合を超えて共有物全部の損害について請求できないとされています。(最高裁・昭和41.3.3) 共有物が侵害されたとき、各共有者は持分権に基づいて損害賠償を請求することができます。 |
4.「分割の請求については,Aは,いつでもすることができ,B・Cとの協議が調わない
ときは,裁判所に請求することができる。」
【正解:○】 ◆共有物分割請求の自由 各共有者は,いつでも分割請求することができ(256条1項)また5年を超えない期間で分割しないとする特約をすることもできます。(256条1項但書) 共有物の分割はまず協議により行われ(258条1項)、共有者全員でしなければいけません。(大審院・明治41.9.25)共有者の協議が調わないときは裁判所に分割を請求することができます。(258条1項) |