Brush Up! 権利の変動篇

共有の過去問アーカイブス 昭和60年・問7


共有に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。(昭和60年・問7)

1.「各共有者は,その持分に応じて共有物の管理の費用を負担しなければならないが,ある共有者がこの負担義務を1年以内に履行しないときは,他の共有者は,相当の償金を支払ってその共有者の持分を取得することができる。」

2.「共有者の1人が相続人なくして死亡したときは,その持分は,国庫に帰属する。」

3.「共有物の分割に際し,各共有者の協議が調わないときは,裁判所に分割を請求することができる。この場合において,現物を分割することができない場合又は分割により著しく価格が低下するおそれがある場合は,裁判所はその競売を命ずることができる。」

4.「共有物の分割に際しては,共有物につき権利を有する者及び各共有者の債権者は,分割に参加することができる。この場合において,参加の請求があったにもかかわらず,その参加を待たずに分割をしたときは,分割の効力は参加を請求した者に対抗できない。」

【正解】

×

1.「各共有者は,その持分に応じて共有物の管理の費用を負担しなければならない

が,ある共有者がこの負担義務を1年以内に履行しないときは,他の共有者は,相当

の償金を支払ってその共有者の持分を取得することができる。」

【正解:

◆管理費用の負担−持分の売渡請求権

 各共有者は、その持分に応じて管理の費用を払うほか、その他の共有物の負担もしなければいけません。(253条1項)平成6年出題

 管理の費用とは、具体的には、税金などの租税公課、共有物の保存・利用及び改良・変更行為に伴うものを意味します。

 (共有者の一人がその費用を支払ったときはほかの共有者に対して当然、償還請求をすることができます。)

 また、本肢にあるとおり、共有者の一人がこの負担義務を1年以内に履行しないときは,他の共有者は、相当の償金を支払ってその共有者の持分を取得することができます。(253条2項)

→ 管理の費用については、このほかに、特定承継人に対する債権確保の問題が平成3年の肢4で出題されています。

2.「共有者の1人が相続人なくして死亡したときは,その持分は,国庫に帰属する。」

【正解:×

◆共有者の一人が死亡→その持分は他の共有者に帰属(特別縁故者がいないとき)

 共有者の1人が,その持分を放棄したとき又は相続人なくして死亡したときは,その持分は他の共有者に帰属します。(255条)

共有者の1人が,その持分を放棄

共有者の1人が,相続人なくして死亡したとき
(ただし,特別縁故者がいない場合)

   その持分は他の共有者に帰属

 したがって、本肢は×になります。

判例では,共有者の一人が相続人なくして死亡した場合、特別縁故者(958条の3)他の共有者の順に受け継がれるとしています。(最高裁・平成元.11.24) 

 平成4年の問題では、「特別縁故者に対する財産分与もなされない場合」となっており、この判例が出たことによって出題の仕方が変わっていることがわかります。

3.「共有物の分割に際し,各共有者の協議が調わないときは,裁判所に分割を請求

することができる。この場合において,現物を分割することができない場合又は分割に

より著しく価格が低下するおそれがある場合は,裁判所はその競売を命ずることが

できる。」

【正解:

◆裁判による共有物分割−競売

 共有物の分割はまず協議により行われ(258条1項)、共有者全員でしなければいけません。(大審院・明治41.9.25)

 共有者の協議が調わないときは裁判所に分割を請求することができますが(258条1項)、 このとき、

現物を分割することができない場合
又は分割により著しく価格が低下するおそれがある場合

 は,裁判所はその競売を命ずることができます。(258条2項)共有者はその競売で得た代金を分けることになります。

4.「共有物の分割に際しては,共有物につき権利を有する者及び各共有者の債権者

は,分割に参加することができる。この場合において,参加の請求があったにもかかわ

らず,その参加を待たずに分割をしたときは,分割の効力は参加を請求した者に対抗

できない。」

【正解:

◆参加請求のあった権利者の参加を待たずに分割した場合のペナルティ

 共有物の分割は協議により行われ(258条1項)、共有者全員でしなければいけませんが(大審院・明治41.9.25)、その協議には、共有物について地上権・賃借権・抵当権・質権などの権利を有する者および共有者の債権者は、分割によって重大な影響を受けるため、事故の費用で分割協議に参加できます。(260条1項)

 分割の協議に参加したこれらの債権者・権利者は分割についての意見を述べることができます。

 共有者はこれらの者に通知する義務はありませんが、これらの者から参加の請求がありながら、その参加を待たずに、分割をした場合は、ペナルティとして分割の効力は参加を請求した者に対抗できないことになっています。(260条2項)


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