Brush Up! 権利の変動篇
借家に関する問題 定期建物賃貸借 改正法レポートNo.5
借地借家法第38条に規定する期間の定めのある建物賃貸借契約(以下この問において「定期建物賃貸借」という)に関する次のそれぞれの記述は、借地借家法の規定によれば○か、×か。 |
1.「定期建物賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約するときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができ、20年を超える期間を定めることもできる。」 |
2.「定期建物賃貸借をしようとするときは、Aは、あらかじめ、Bに対し、建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することにつき、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならず、当該説明のないときは、期間の定めのない建物賃貸借とみなす。」 |
3.「存続期間を1年以上とする定期建物賃貸借の場合、Aは、期間満了の1年前から3月前までの間に、Bに対し、期間の満了により建物の建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了をもって、Bに対抗することができない。」 |
4.「期間の定めがある居住の用に供する建物(当該部分の床面積が200平方メートル未満に限る)の定期建物賃貸借において、転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情により、Bが建物を自己の生活の本拠に使用することが困難となったときは、Bは、建物の解約の申入れをすることができ、当該契約は、その解約の申入れの日から3月を経過することにより終了する。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「定期建物賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約すると
きに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができ、20年を超える期間を定める
こともできる。」
【正解:○】 定期建物賃貸借をする場合、公正証書による等書面により契約をするときに限り、契約更新がない旨を定めることができ(借地借家法第38条1項)、借地借家法では、民法第604条に規定する賃借期間の最高限度の20年は適用除外となる(第29条2項)ため、存続期間を20年を超える建物賃貸借契約も有効です。 なお、契約の更新は禁止されますが、更新ではなく、この賃貸借契約期間終了時において、当事者間の合意により、新たに契約(=新規契約として)することは禁止されていません。 |
2.「定期建物賃貸借をしようとするときは、Aは、あらかじめ、Bに対し、建物の賃貸借は
契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することにつき、その旨を
記載した書面を交付して説明しなければならず、当該説明のないときは、期間の定めのな
い建物賃貸借とみなす。」
【正解:×】 定期建物賃貸借をしようとする建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することにつき、その旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません(第38条2項)。 しかし、当該説明のないときは、「契約の更新がない定め」ノミが“無効”となります(〃3項)。 ≪参考≫ 賃貸人の義務とされる、「定期建物賃貸借」である旨の事前の説明・書面の交付は、代理人に委任してもよいことに注意してください。賃貸人と言っても、ほとんどが零細な賃貸業を営んでいることが多く、賃貸業のほかに仕事を持っていることが多いため、実務では、賃貸の媒介をしている宅建業者に委任することが多いものと思われます。 |
3.「存続期間を1年以上とする定期建物賃貸借の場合、Aは、期間満了の1年前から3月
前までの間に、Bに対し、期間の満了により建物の建物の賃貸借が終了する旨の通知を
しなければ、その終了をもって、Bに対抗することができない。」
【正解:×】 存続期間を1年以上とする定期建物賃貸借の場合、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から「6月前」までの間に、建物賃借人に対し、期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了をもって建物の賃借人に対抗することができません(第38条4項)。 ただし、前項の期間が経過後〔契約期間満了前に限る〕であっても、その旨の通知をすれば、その通知の日から「6月後」に、建物賃貸借の終了を対抗できます(〃〃但書)。 |
4.「期間の定めがある居住の用に供する建物(当該部分の床面積が200平方メートル未
満に限る)の定期建物賃貸借において、転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事
情により、Bが建物を自己の生活の本拠に使用することが困難となったときは、Bは、建物
の解約の申入れをすることができ、当該契約は、その解約の申入れの日から3月を経過す
ることにより終了する。」
【正解:×】 定期建物賃貸借の場合、原則として、当該期間内は解除できませんが、設問文に記述された小規模住宅賃貸借契約〔200平方メートル未満〕の場合、転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠に使用することが困難となったとき、建物の賃借人に解約権が与えられ、解約の申入れ日から「1月」を経過することにより終了します(第38条5項)。 ≪参考≫ 民法上では、解約の申入れから3月で契約を終了しますが(民法617条)、「定期建物賃貸借」では、適用除外されます。 |
≪参考≫ 「定期建物賃貸借」は、平成12年3月1日から施行されました。 なお、平成12年2月末日以前に締結された借家契約の更新については、従前の規定に従い、改正法は適用されないことに注意してください。 また、居住用建物の当事者が合意により平成12年2月末日以前に締結された借家契約を終了させ、新たに定期建物賃貸借契約とすることは認められていません。 ⇒ 事業用建物の賃貸借では、以前に締結された借家契約を終了させ、新たに定期建物賃貸借契約とすることができる。 ≪補足≫ 取壊し予定の建物の賃貸借(借地借家法39条) 平成11出題 法令または契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すことが明らかな場合、建物を取り壊すこととなるときに契約が終了する旨の特約を定めることができます。 ただし、この特約は、建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければなりません。(この書面は、公正証書でなくても構いません) |