Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記 分筆の登記 改正対応


分筆の登記に関する次の記述は,○か,×か。

1.「土地の分筆の登記の申請人は,登記記録の甲区に記載された所有権の登記名義人でなければならない。」

2.「土地の分筆の登記の申請情報である分割前の土地の地積は,登記記録上の地積と一致していなければならない。」

3.「抵当権の登記のある土地の分筆の登記を申請する場合において,分割後の数筆の土地にその権利が存続するときは,申請書に共同担保目録を提供する必要はない。なお,登記申請しようとする登記所は,共同担保目録について不動産登記法附則第3条の指定を受けている登記所(共担未指定登記所)であるとする。」

4.「抵当権設定の登記のある土地の分筆の登記を申請する場合,抵当権者の分筆に関する承諾を証する情報又はその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を,申請情報と併せて提供しなければならない。」

5.「承役地についてする地役権の登記がある土地の分筆の登記を申請する場合において,分割後の土地の一部に地役権が存続するときは,申請情報と併せて,当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報及びその部分を示した図面(地役権図面)を提供しなければならない。」

6.「甲地を甲地及び乙地に分筆の登記をする場合は,甲地に登記されている抹消された登記も,乙地に転写される。」

7.「一筆の土地の一部について地目の変更があったときは,表題部所有者又は所有権の登記名義人は,土地の分筆の登記及び地目の変更の登記を申請しなければならない。」

8.「土地の分筆の登記を申請するには,申請情報と併せて,分筆前の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供しなければならない。」

【正解】

× ×

× ×

1.「土地の分筆の登記の申請人は,登記記録の権利部の甲区に記録された所有権の登記名義人でなければならない。」

【正解:×

◆分筆の登記の申請人

 土地の分筆の登記の申請人は,

・表題部所有者
    または
・甲区の所有権の登記名義人です。(不動産登記法・39条1項)

 もし,『甲区に記録された所有権の登記名義人』しか分筆できないとすれば,所有権保存登記をしていない〔登記記録に甲区がない〕土地の所有者は,分筆できなくなってしまいます。

●類題

1.「地上権の設定の登記がされている土地の分筆の登記は,所有権の登記名義人又は地上権者が申請することができる。」(平成8年・問15)

【正解:×

土地の分筆の登記申請は,当然のことながら,その土地の登記記録の表題部所有者または所有権の登記名義人でなければできません(不動産登記法・39条1項)

 本肢は,<所有権の登記名義人又は地上権者が申請することができる>としているので,誤りです。

2.「土地の分筆の登記の申請情報である分割前の土地の地積は,登記簿上の地積と一致していなければならない。」

【正解:

◆分筆前の地積は登記簿と一致していなければならない

 分筆の登記を申請するには,申請情報として,『分筆前の地番,地目,地積』が必要ですが(登記令・別表8項),この記載は登記簿上の表示と一致していなければなりません。

3.「抵当権の登記のある土地の分筆の登記を申請する場合において,分割後の数筆の土地にその権利が存続するときは,申請書に共同担保目録を提供する必要はない。なお,登記申請しようとする登記所は,共同担保目録について不動産登記法附則第3条の指定を受けている登記所(共担未指定登記所)であるとする。」(平成2年・問15,平成12年問15)

【正解:

抵当権のある土地の分筆

 抵当権の登記がされている土地の分筆の登記がされると,その抵当権は分筆後の土地それぞれに及んで,分割後の数筆の土地が同一の債権を担保することになり,共同担保関係が生じます。

 土地の分筆等の登記を申請しようとする登記所がオンライン指定庁や法附則3条の事務指定を受けているコンピュータ庁(ブックレス庁)の場合は,共同担保目録を添付情報として提供する必要はありません(登記規則102条,166条〜168条)。しかし,下記の経過措置があります。

経過措置

 共同担保目録について不動産登記法の附則第3条指定を受けていない登記所(共担未指定登記所)では,担保権(抵当権・質権・先取特権)の登記がある土地の分筆登記申請をする場合に,分筆後の数筆の土地にその担保権が存続するときは,改正前の従前の例により,共同担保目録を添付しなければなりません(不動産登記規則附則第9条(共同担保目録)3号,旧・不動産登記法・81条の4・第2項)。分筆後の数筆の土地にその担保権が存続するときは,申請書に共同担保目録

●問題文の読み方について

 『分割後の数筆の土地』という表現についてご質問を受けたことがあります。

 この表現は『分割したうちの一部の土地』というように読めるというものでした。しかしながら,ここは素直に『一筆の土地を分割したら数筆の土地になるので,分筆後の全ての土地』と読んでください。

4.「抵当権設定の登記のある土地の分筆の登記を申請する場合,抵当権者の分筆に関する承諾を証する情報又はその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を,申請情報と併せて提供しなければならない。」(平成6年・問15)

【正解:×

抵当権設定登記のある土地の分筆

 抵当権設定の登記のある土地の分筆の登記を申請する場合(分筆後の土地の全てに抵当権が存続するものとする。),抵当権者の承諾書やその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を申請情報に併せて提供する必要はありません

 抵当権の登記がされている土地の分筆の登記がされると,その抵当権は分筆後の土地それぞれに及んで,分割後の数筆の土地が同一の債権を担保することになり,共同担保関係が生じます。

分筆の登記で,添付情報として,抵当権者の承諾を証する情報(抵当権の登記名義人が抵当権を消滅させることを承諾したことを証する当該登記名義人が作成した情報)又は当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供するのは分筆された土地の一筆ないし数筆について抵当権が存続しないで消滅する場合です。(不動産登記法・40条,登記規則・104条1項)

 分筆後に抵当権が存続する  抵当権者の承諾を証する情報は不要 
 分筆後一筆ないし数筆について
 抵当権が消滅する
 抵当権者の承諾を証する情報が必要

5.「承役地についてする地役権の登記がある土地の分筆の登記を申請する場合において,分割後の土地の一部に地役権が存続するときは,申請情報と併せて,当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報及びその部分を示した図面(地役権図面)を提供しなければならない。」(平成12年・問15)

【正解:

承役地についての地役権が分筆後・合筆後の土地の一部に残るとき

 承役地についてする地役権の登記がある土地の分筆または合筆の登記を申請するときには,土地の分割後または合併後に,土地の一部に地役権が存続するときは,添付情報として,

 「当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報」
 及び
 「その部分を示した図面(地役権図面)」を提供しなければいけません(登記令別表・8項,9項)

分筆の登記申請では,「分筆後の土地の地積測量図」も添付情報として必要です。

●類題

「一筆の土地の一部に地役権の存する土地を,地役権の存する部分と存しない部分とに分割する分筆の登記を申請するには,申請情報と併せて,地役権図面を提供することを要する。」(土地家屋調査士・平成2年)

【正解:×】 ヒッカケ問題

 分割後の土地の一部に地役権が存在する場合には,「当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報」及び「その部分を示した図面(地役権図面)」を提供する必要があります(登記令別表・8項)

 しかし,本肢のように「分割後の土地の全部に地役権が存在する土地」と「存在しない土地」に分ける場合では『地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報(または,当該地役権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報)』及び『地役権の図面』は不要』です。 地役権の登記がある承役地の分筆の登記申請では,地役権設定の範囲が分筆後の土地の一部であるときは)「当該地役権設定の範囲を証する地役権者が作成した情報」または「当該地役権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報及び地役権図面」です

6.「甲地を甲地及び乙地に分筆の登記をする場合は,甲地に登記されている抹消された登記も,乙地に転写される。」(平成5年問16)

【正解:×(ゆっくりと、イメージしながら解説を読んでください)

◆抹消された登記は分筆のときに転写されない

       甲地 
     /
  甲地
     \
       乙地

 甲地を甲地と乙地に分筆するとき,乙地の登記記録の権利部の相当区に甲地の登記記録から登記を転写しますが,抹消された登記は,現に効力を有しないため転写されません(登記規則・5条1項)

7.「一筆の土地の一部について地目の変更があったときは,表題部所有者又は所有権の登記名義人は,土地の分筆の登記及び表示の変更の登記を申請しなければならない。」(平成2年・問15)

【正解:

◆分筆登記した上で地目の変更の登記 (一部地目変更分筆)

 土地の一部分だけの地目の変更をすることはできません。

・土地の分筆の登記をしてから一方の土地に地目の変更の申請を行う(分筆の登記+地目の変更登記),

・土地の分筆の登記及び表示の変更の登記を申請を同一の申請書で同時に行う(土地一部地目変更・分筆登記)

 このどちらかをすることになります。

土地の一部が地目変更したときは登記官が職権で分筆の登記をすることもできますが,土地の所有者又は所有権の登記名義人には,地目の変更の登記の申請義務が課せられているので(不動産登記法・37条1項),変更の日から1ヵ月以内に一部地目変更による分筆の登記を申請する義務があるとされています。

8.「土地の分筆の登記を申請するには,申請情報と併せて,分筆前の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報を提供しなければならない」

【正解:×

◆分筆の登記には,登記識別情報は不要

 所有権の登記のある土地の合筆の登記申請では,添付情報として登記識別情報を提供しなければいけません(登記令別表・8条1項1号)。,分筆の登記申請では,登記識別情報を提供しなくてもよいので,誤りです(登記令別表・8項)

所有権の登記のある土地の合筆  登記識別情報を提供しなければならない。
分筆の登記  登記識別情報を提供する必要はない。

●職権による分筆の登記
 登記官は、分筆の登記申請がない場合であっても,一筆の土地の一部が別の地目となり,又は地番区域(地番区域でない字を含む。)を異にするに至ったときは,職権で,その土地の分筆の登記をしなければならない(不動産登記法・39条2項)

 不動産登記法14条1項の地図を作成する場合に必要があるときは,登記官は,表題部所有者・所有権の登記名義人の異議がなければ,職権で分筆または合筆の登記をすることができます。(不動産登記法・39条3項)


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