Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記  改正対応

土地の合筆禁止−所有権の登記以外の権利が登記されているとき 


●メッセージ
 「“所有権の登記以外の権利に関する登記”」及び「要役地である旨の地役権の登記」があるときには,土地の合筆はできないというのはマル暗記で覚えていても,いざ具体的なものが出題されると迷うものです。ここでは,本試験で出題されたときに迷わないように,免疫力をつけておきましょう。

 ここはワカってしまえばどうということもないのですが,ワカルまでには個人差があるようです。要するに,所有権そのものでないものが,一方の土地または双方に,登記されていれば原則として合筆はできないということだけ覚えておけばいいのです。

 甲区に記載されていても『所有権の本登記(保存・移転)』以外のものが登記されているときは,原則的に,全て合筆禁止と覚えてください。↓以下の二つを除く

 「所有権の登記」以外の「権利の登記」がある土地を合併(合筆)することは原則としてできませんが,次の場合は例外として合併できます。

 ・承役地の登記がある場合 (出題=平成11年)
 ・抵当権設定登記の登記原因登記原因の日付登記の目的受付番号が同じ場合
  (出題=昭和54年)

▼「所有権の登記」以外の「権利の登記」のあるものについて,原則として合併できないのは建物でも同じです。

 また抵当権設定登記の登記原因登記原因の日付登記の目的受付番号が同じ場合に,例外として建物の合併ができるというのも同じです。→ 出題・平成6年・問15

土地の合筆の登記の申請に関する次の記述は,○か,×か。

1.「甲地及び乙地について,いずれもを名義人とする所有権移転の仮登記がされている場合,この両地の合筆の登記の申請はすることができない。」

2.「甲地及び乙地につき,いずれも債権者をとする差押えの登記がされている場合,このこの両地の合筆の登記の申請はすることができない。」

3.「甲地については敷地権たる旨の登記がされているが,これに隣接し一体として使用されている乙地については敷地権たる旨の登記がされていない場合,この両地の合筆の登記の申請はすることができない。」
4.「買戻しの特約の登記がされていても,その期間が経過していれば,合筆の登記の申請をすることができる。」

5.「地上権設定の登記がされていても,その存続期間が経過していれば,合筆の登記の申請をすることができる。」

6.「根抵当権設定の登記がされていても,その確定期日が経過していれば,合筆の登記の申請をすることができる。」

【正解】

× × ×

1.「甲地及び乙地について,いずれもを名義人とする所有権移転の仮登記がされている場合,この両地の合筆の登記はすることができない。」(土地家屋調査士・平成2年)

【正解:

 甲区 所有権移転の仮登記 → 「所有権の登記以外の権利に関する登記
 したがって,「所有権の登記以外の権利に関する登記」があるので合筆できない。
 (昭和35.7.4民甲1594号通達)

仮登記名義人が同じであってもダメ。

2.「甲地及び乙地につき,いずれも債権者をとする差押えの登記がされている場合,このこの両地の合筆の登記はすることができない。」(土地家屋調査士・平成2年)

【正解:

 甲区 差押えの登記→ 「所有権の登記以外の権利に関する登記
 したがって,「所有権の登記以外の権利に関する登記」があるので合筆できない。

差押えの債権者が同じであってもダメ。

3.「甲地については敷地権たる旨の登記がされているが,これに隣接し一体として使用されている乙地については敷地権たる旨の登記がされていない場合,この両地の合筆の登記の申請はすることができない。」(土地家屋調査士・平成2年)

【正解:

 甲区or 乙区 敷地権たる旨の登記 → 「所有権の登記以外の権利に関する登記
 したがって,「所有権の登記以外の権利に関する登記」があるので合筆できない。

敷地権たる旨の登記は,敷地権の目的たる土地の相当区〔所有権のときは甲区,地上権or賃借権のときは乙区〕になされます。

たとえ同一の敷地権たる旨の登記がされている土地どおしであってもダメ。

4.「買戻しの特約の登記がされていても,その期間が経過していれば,合筆の登記の申請をすることができる。」(土地家屋調査士・昭和49年)

【正解:×

 甲区 買戻しの特約の登記 → 「所有権の登記以外の権利に関する登記
 したがって,「所有権の登記以外の権利に関する登記」があるので合筆できない。

5.「地上権設定の登記がされていても,その存続期間が経過していれば,合筆の登記の申請をすることができる。」(土地家屋調査士・昭和49年)

【正解:×

 乙区 地上権設定登記 → 「所有権の登記以外の権利に関する登記
 したがって,「所有権の登記以外の権利に関する登記」があるので合筆できない。

6.「根抵当権設定の登記がされていても,その確定期日が経過していれば,合筆の登記の申請をすることができる。」(土地家屋調査士・昭和49年)

【正解:×

 乙区 確定期日が経過 → 元本確定したに過ぎない
 したがって,「所有権の登記以外の権利に関する登記」があるので合筆できない。

建物の合併でも,土地の合筆と同様の禁止規定がある(法56条)

・所有権の登記以外の権利に関する登記がある建物は合併できない。(法56条5号)
 → 平成6年・問15

・所有権の登記のない建物と所有権の登記のある建物の合併はできない。(同・4号)


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