Brush Up! 権利の変動篇
不動産登記の基本事項 登記情報の公開 改正対応
●メッセージ |
この下位セクションは,平成3年以来出題がありません。(それまでは全く同一の肢が5年から7年間隔で出題されていました。)
法務大臣の指定する登記所(指定登記所)では,昭和63年より,登記簿は,磁気ディスクにより調製され,登記ファイルとしてコンピューターに入力されていますが,実はこの関係の出題がこれまでのところありません。(指定登記所では登記用紙とは言わずに登記記録といいます。) 今日では,コンピューター化された一部の登記所のみとはいえ,指定法人と情報提供契約を締結し,利用者IDとパスワードを付与されれば,登記所に出向くことなく,パソコンからインターネットを利用して登記情報を得ることができるようになっています。(不動産の登記物件全体が全国で約2億7,000万件,そのうちの44%がコンピュータ化完了。平成12年現在) 財団法人 民事法務協会 http://www.touki.or.jp バインダー方式の登記簿のところも数多く残ってますが,今後もバインダー方式時代のものを出題し続けることは難しく,いずれコンピューター化された登記簿に関するものが出題されると思われます。 |
登記情報の公開に関する次の記述は,○か,×か。 |
1.「誰でも,利害関係のある部分に限り,手数料を納付して登記簿の附属書類の政令で定める図面の閲覧を請求することができる。」 |
2.「誰でも,手数料のほか送付に要する費用を納付して登記事項証明書の送付を請求することができる。」 |
3.「不動産登記法の規定により登記所に備える地図は,すべて一筆の土地ごとに作成され,土地の区画及び地番が明確にされている。」 |
4.「二個の登記所の管轄区域にまたがっている一個の不動産の登記は,どちらの登記所でも備え付けてある。」 |
5.「登記記録は永久保存であるが,建物に関する閉鎖登記記録の保存期間は,閉鎖の日より30年間である。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
× | ○ | × | × |
○ |
1.「誰でも,利害関係のある部分に限り,手数料を納付して登記簿の附属書類の政令で定める図面の閲覧を請求することができる。」(昭和58年-15-3改) |
【正解:×】 ◆閲覧 誰でも,手数料を納付して, 地図等(地図・建物所在図・地図に準じる図面)・登記簿の附属書類(政令で定める図面(土地所在図等)以外のものは請求人が利害の関係ある部分に限る)の閲覧を請求することができます(不動産登記法120条2項,121条2項)。 登記簿の附属書類の政令で定める図面は,利害関係がなくても,閲覧を請求することができるので誤りです。 |
●類題 |
1.「登記事項証明書の交付は,手数料を納めれば,だれでも請求することができるが,すべて登記所に出頭しなければならない。」(昭和53-12-4) |
【正解:×】出頭しなくても,送付請求することもできます。 |
2.「登記事項証明書の交付を請求する場合の手数料の納付は,収入印紙をもってしなければならない。」(昭和61-15-3) |
【正解:○】
◆手数料の納付は『印紙』 登記事項証明書の交付・附属書類の閲覧・写しの交付の手数料の納付は「収入印紙(従来の登記印紙も当面は可)」をもってしなければいけません。(法119条4項) |
2.「誰でも,手数料のほか送付に要する費用を納付して登記事項証明書の送付を請求することができる。」(昭和63年・問15改) 同・(昭和58年-15-4) |
【正解:○】 ◆送付 登記所に出頭しなくても,誰でも,手数料のほか送付に要する費用を納付して, 登記事項証明書,地図等(地図・建物所在図・地図に準じる図面)・登記簿の附属書類中政令で定める図面(土地所在図等)の全部又は一部の写しの交付を請求することもできます(登記規則197条6項,200条3項,201条3項)。 |
●登記簿の附属書類中の 地積の測量図、建物の図面 其他の図面 (地積測量図等と称す) |
●登記簿の附属書類中の 地積測量図等以外のもの |
|
閲覧 | ○ | ○ 利害の関係ある部分に限る |
写しの
交付 |
○ 全部若くは一部 | × |
写しの
送付 |
○ 全部若くは一部 | × |
3.「不動産登記法の規定により登記所に備える地図は,すべて一筆の土地ごとに作成され,土地の区画及び地番が明確にされている。」(平成3-16-2) |
【正解:×】 ◆法14条地図(地図・建物所在図) 登記所に備える地図は,<すべて一筆の土地ごとに作成されるのではない>ので,誤り。 ―*―−―*―−―*―−―*―− 登記所には,土地および建物の所在・位置・区画を明らかにするために地図・建物所在図を備えることになっています。(法14条)
▼地図に準じる図面 登記所に法14条地図が備えられるまでの間,これに代えて「地図に準じる図面」を備えるものとされています。(不動産登記法・14条4項,登記規則10条5項,準則13条,平成5年7月30日民三通達) 登記所には,地図に準じる図面として,以下のものがあり,閲覧に供されます。〔註・法14条地図になっていないもの〕 ・公図 (旧・土地台帳附属地図) ・地籍図 (国土調査法) ・土地の所在図 |
●類題 |
「地図は,すべて一筆の土地ごとに作成され,土地の区画及び地番が明確にされている。」(昭和59年-16-2) |
【正解:×】 |
●地図等 |
(地図等) 第14条 登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする。 2 前項の地図は、一筆又は二筆以上の土地ごとに作成し、各土地の区画を明確にし、地番を表示するものとする。 3 第一項の建物所在図は、一個又は二個以上の建物ごとに作成し、各建物の位置及び家屋番号を表示するものとする。 4 第一項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる。 5 前項の地図に準ずる図面は、一筆又は二筆以上の土地ごとに土地の位置、形状及び地番を表示するものとする。 6 第一項の地図及び建物所在図並びに第四項の地図に準ずる図面は、電磁的記録に記録することができる。 |
4.「二個の登記所の管轄区域にまたがっている一個の不動産の登記簿は,どちらの登記所でも備え付けてある。」(昭和55-15-3) |
【正解:×】 ◆管轄登記所 登記記録は管轄する登記所に備えられています 。各登記所の管轄区域は,行政区画を基準に法務大臣が定め,原則として管轄区域に存在するものの登記事務を扱います。(法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則・昭和24年法務府令12号) そのため,管轄区域ではない登記所になされた登記申請は却下され,万一登記がなされたとしても,その登記は一定の手続を経て無効な登記として登記官の職権によって抹消されます。(不動産登記法25条1項,71条1項) → 出題・平成5年 建物が数個の登記所の管轄区域にまたがって存在する場合には,それらの登記所を監督する法務局長または地方法務局長もしくは法務大臣の指定を受けて初めて管轄登記所が確定します(不動産登記法・6条2項)。 したがって,二個の登記所の管轄区域にまたがっている一個の不動産の登記記録は,指定された登記所においてのみ備え付けてあるので,本肢は×です。 |
●類題 |
「二つの登記所の管轄区域にまたがっている一個の不動産の登記記録は,どちらの登記所においても備えられている。」(昭和63年・問15) |
【正解:×】 |
●関連問題 |
「建物の新築による建物の表示の登記は,管轄を誤って登記されたものであっても,登記が完了すれば,職権によって抹消されることはない。」(平成5年・問16・肢1) |
【正解:×】
管轄区域ではない登記所になされた登記は無効な登記として登記官の職権によって抹消されます。 |
「管轄登記所でない登記所において,建物の表題登記がされた場合でも,その建物につき権利に関する登記がされたときは,その建物の表題登記は,有効になる。」(土地家屋調査士・昭和44年) |
【正解:×】
管轄区域ではない登記所になされた登記は無効。 |
●登記所 |
登記所というのは,不動産登記法上の呼称です。行政機関としての名称は,「法務局,地方法務局,その支局または出張所」です。
全国は七つの管区に分かれていて,各管内には,管区法務局と地方法務局がおかれ,さらに法務局または地方法務局の事務を分掌するため支局と出張所がおかれます。 |
5.「登記記録は永久保存であるが,建物に関する閉鎖登記記録の保存期間は,閉鎖の日より30年間である。」(昭和55-15-4)法改正により改題 |
【正解:○】 ◆閉鎖登記記録 登記記録は,閉鎖登記記録を除いて,永久保存です(登記規則・28条1号)。 土地または建物の滅失の登記,合筆・合併の登記などで登記記録としての存在理由を失った登記記録は,表題部に閉鎖の事由・年月日・閉鎖した登記官の識別番号を記録し,閉鎖する登記記録の不動産の表示を抹消する記号を記録します(登記規則・108条)。 閉鎖された登記記録は効力をもつものではありませんが,過去の権利関係や経緯を知る上で必要なものです。〔附則3条の指定の際,現に登記所に備え付けてある閉鎖登記簿についても閲覧や謄本等の交付の請求ができます。〕(不動産登記法・附則4条,登記規則・附則5条) 閉鎖された登記記録の保存期間は,閉鎖の日より土地登記記録は50年,建物登記記録は30年です(登記規則・28条4号,同5号)。 |