Brush Up! 権利の変動篇
地役権の過去問アーカイブス 昭和61年・問11
地役権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。(昭和61年・問11) |
1.「承役地を第三者が不法占拠している場合,地役権者は,その者に対して,当該承役地を自己に引き渡すよう請求できる。」 |
2.「地役権者は,特約を定めたとしても,要役地と別に地役権のみを譲渡することはできない。」 |
3.「土地の共有者の一人が時効で地役権を取得したというだけでは,他の共有者は同じ内容の地役権を取得することはできない。」 |
4.「地役権は,物権であるから,消滅時効にかかることはない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
1.「承役地を第三者が不法占拠している場合,地役権者は,その者に対して,当該
承役地を自己に引き渡すよう請求できる。」
【正解:×】 ◆地役権者には不法占拠者に対して引き渡し請求はできない 地役権は、承役地を一定の範囲内での目的で利用する権利です。したがって、地役権者には、承役地を排他的に占有する権利はありません。 このため、承役地に不法占拠者がいたとしても、地役権者は当該承役地を自己に引き渡すように請求することはできません。 ▼地役権も土地に対する物権なので、承役地の利用を妨げられている場合には、回復する為の物権的請求権は認められています。(妨害排除請求権・妨害予防請求権) |
2.「地役権者は,特約を定めたとしても,要役地と別に地役権のみを譲渡することは
できない。」
【正解:○】 ◆地役権は要役地に付従する 要役地から分離して地役権を譲渡することはできません。(281条2項) 要役地の所有権が移転すれば、特約がない限り、地役権も移転します。(281条1項) 地上権や賃借権、永小作権を設定した場合にも、それらの権利者は地役権を行使できます。 ▼承役地の所有権が移転したときに、要役地の所有者が通行地役権を主張するには、原則として、地役権の登記を必要とします。→平成14年の問題 |
3.「土地の共有者の一人が時効で地役権を取得したというだけでは,他の共有者は
同じ内容の地役権を取得することはできない。」
【正解:×】 ◆地役権の取得時効と不可分性(民法284条1項) 共有者の1人が時効で地役権を取得すると、他の共有者もやはり地役権を取得します。 地役権は、民法では「取得しやすく、消滅しにくい」性質の規定になっています。 |
4.「地役権は,物権であるから,消滅時効にかかることはない。」
【正解:×】 ◆地役権の消滅時効 地役権も、やはり20年間行使しないと消滅時効にかかります。(167条2項、291条) |