Brush Up! 権利の変動篇

制限行為能力者の過去問アーカイブス 未成年 (平成11年・問1) 


次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。(平成11年・問1)

1.「満20歳に達した者は,成年とされる。」

2.「満15歳に達した者は,父母の同意を得て,婚姻をすることができる。」

3.「未成年者が婚姻をしたときは,成年に達したものとみなされる。」

4.「満15歳に達した者は,父母の同意を得なくても,遺言をすることができる。」

【正解】

×

近年の不可思議問題のうちの一つ。

1.「満20歳に達した者は,成年とされる。」

【正解:

◆成年の定義

 満20年をもって成年とす。(民法4条)

 この定義ソノママの問題です。成年擬制については,肢3参照。

→皇室の場合は少し違いますが,これはかなりマニアック。そこまでは訊いていないです。

2.「満15歳に達した者は,父母の同意を得て,婚姻をすることができる。」

【正解:×

◆婚姻

は満18才に,は満16才にならなければ,婚姻をすることができない。(民法731条)

 未成年の子が婚姻をするには,父母の同意がなければならない。(民法737条1項)

父母の一方の同意がなくても他の一方が同意すればよく(民法737条2項),また父母双方の同意のない婚姻の届出が受理されれば,婚姻を取り消すことはできなくなります(判例)

3.「未成年者が婚姻をしたときは,成年に達したものとみなされる。」

【正解:

◆成年擬制−行為能力の擬制

 未成年者が婚姻したときは,これによって成年に達したものとみなす。(753条)

 未成年者が婚姻したときは,民法上は成年者の扱いをします。したがって,婚姻の後は法律行為をするのに親の同意は必要ではなくなります。このほかには,成年擬制によって以下のものが可能になります。

 例・認知されることへの承諾(782条),養子をとること(792条),遺言の証人又は立会人になること(974条),遺言執行者になること(1009条)など。

 ただし,民法以外の法律では,原則として成年擬制の効果は及ばないので,結婚していても飲酒や喫煙は禁止されており,選挙権も与えられません。

このほかの成年擬制としては,第6条の『営業が許された未成年者』がありますが,成年者として扱われるのは許された営業に関してのみです。→未成年

    民法  民法以外
 婚姻した未成年者  成年者として扱われる  原則として 

 未成年者として扱われる

 営業の許可を得た未成年者  営業の許可以外では,
 未成年者として扱われる。

通説では,婚姻を解消(夫婦の一方の死亡,離婚)した未成年者への成年擬制の効果は消滅しないとされていますが,反対説もあります。

4.「満15歳に達した者は,父母の同意を得なくても,遺言をすることができる。」

【正解:

◆遺言

   遺言とは、ある人の最後の意思表示であるため、その意思を最大限尊重して実現させるというのが遺言制度の目的でもあり、「未成年者の財産に関する意思表示は、法定代理人の同意がなければ取消すことができる(民法第5条)」という大原則の例外として、遺言の場合は、“行為能力”までは要求されていません。成年被後見人,被保佐人,被補助人も保護者の同意を要せずに,遺言をすることができます。

 人は15歳にもなれば“意思能力”はあると認められ、また遺言をするという行為は代理人による行為にもナジまないため、未成年者であっても、満15歳になれば、“単独で” 有効な遺言をすることができます(第961条)

  制限行為能力者の遺言については,平成4年に本設問と全く同一の問題,昭和49,54年に被保佐人に遺言ができるか問う問題が出題されています。→ 遺言

■関連知識

 死因贈与   贈与者の死亡によって効力を生じる贈与契約。満20才からできる
 (満15才から20才未満の場合は、法定代理人の同意が必要。)
 遺 贈  遺言による財産処分。単独行為。満15才からできる

単独行為・・・相手方の意向には関係なく、承諾を必要とせずに、一方的な意思表示により、行うことができる法律行為。法律行為には、単独行為、契約、合同行為の三つの類型がある。

■女性

 遺言・遺贈   婚姻          成年・死因贈与

 ―――――――――――――――――――――――

  15才      16才            20才

■男性

 遺言・遺贈          婚姻    成年・死因贈与     

 ―――――――――――――――――――――――

  15才             18才     20才    

■関連知識・今後出題が予想されるもの

未成年と不法行為責任

 未成年者が他人に損害を加えた場合,『加害行為の法律上の責任を弁識するに足るべき知能』〔=責任能力〕があれば,未成年であることを理由として,不法行為の損害賠償責任を免れることはできない(712条,大審院・大正6.4.30)

 ⇒ 未成年者が責任能力を有している場合であっても,その不法行為による損害その監督義務者の監督義務違反とに因果関係が認められる場合は,監督義務者について709条の不法行為が成立する。(判例・最高裁・昭和49.3.22)

 ⇔ 未成年者に,責任能力がない場合は,未成年者の損害賠償責任は免除されるが(第712条),その監督義務者が責任を負う。(第714条本文)
 しかし、その監督義務者が、当該未成年者の監督義務を怠らなかったこと (または、その義務を怠らなくても損害が生ずること) を証明した場合その責任は免除される(第714条但書)


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