Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
相続の過去問アーカイブス 相続と登記1
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
× | × | × | ○ | × |
不動産登記に関する次の記述は,○か×か。 |
1.「相続による所有権移転登記を申請する場合には,申請情報と併せて被相続人の
所有権の登記の登記識別情報を提供しなければならない」(H10-14-1)
【正解:×】 ◆相続による所有権移転登記 登記を申請するためには,登記義務者(権利を失う者)の権利に関する登記識別情報(登記済証)を提供するのが原則です(不動産登記法第22条)。 しかし,登記原因が“相続”の場合は,登記義務者は既に死亡しているため,登記権利者が単独で申請することになり(第63条2項),「相続を証する市町村長,登記官その他の公務員が職務上作成した情報及びその他の登記原因を証する情報」を添付情報として提供することになります(登記令別表22項)が,登記識別情報は不要です。 また,登記識別情報の所在を死者に尋ねようもない,という至極常識的な事情もあります。
|
●関連問題 |
「登記の申請は,登記権利者及び登記義務者が共同してするのが原則であるが,相続による登記は,登記権利者のみで申請することができる。」(平成14年・問15) |
【正解:○】 |
2.「所有権の登記名義人に相続が開始した場合,当該不動産を相続により取得した
者は,相続の開始を知った時から1年以内に,所有権の移転の登記の申請をしなけ
ればならない。」(H9-14-3)
【正解:×】 ◆相続による所有権移転登記 権利に関する登記は、当事者に申請義務はありません。「相続の開始を知った時から1年以内」というのはブラフで意味はナシ。 |
3.「遺産分割協議書に基づく相続を原因とする所有権移転の登記の申請は,
共同相続の登記がされていない場合には,することができない。」(H9-15-4)
【正解:×】 ◆遺産分割協議による登記 協議による遺産分割までの登記は、相続開始後、 ・相続人全員で共有の登記→分割協議→遺産分割協議書に基づく所有権移転登記 ・分割協議→遺産分割協議書に基づく所有権移転登記 この二通りありますが、本肢の、「共同相続の登記がされていない場合には,遺産分割協議書に基づく相続を原因とする所有権移転の登記の申請はできない」という制限はありません。
|
●重要判例 |
相続財産の個々の不動産について、遺産分割によって相続分と異なる権利(共有持分・所有権)を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、遺産分割後に当該不動産について権利を取得した第三者に対して自己の権利の取得を対抗することができない。(民法177条, 最高裁・昭和46.1.26) → 解説はこちらです。 |
4.「A名義の所有権の登記がある土地をBに売り渡す契約が締結された後,所有権
移転の登記がされないうちにAが死亡し,Cが相続をした場合には,C名義への相続
による所有権移転の登記がされなくても,B名義への所有権移転の登記をすることが
できる。」(H6-16-1)
【正解:○】 ◆売主が死亡したときの買主の登記 A (売主)―――B (買主) 未登記 このような場合,Aの相続人Cは,被相続人Aに代わって,Bとの共同申請によって,AからBへの所有権移転登記をすることができます(一般承継人の登記,不動産登記法62条) 登記義務者Aの相続人であるC,登記権利者B なぜならば,相続人は被相続人が死亡した時点で「被相続人の財産に属した一切の権利・義務」と「地位」を承継するので(民法896条),CはAの「Bへの所有権移転の登記義務」を承継しています。そのため,Cは当事者(登記義務者)として登記権利者Bと共同申請することになるわけです。 ▼登記義務者の相続人が複数いる場合は,相続人全員が登記義務者として申請しなければいけません(昭和27.8.23民甲74号回答)。∵登記申請義務は不可分債務であるため。 |
●相続と物権変動−相続人と譲受人 |
1.「Aの所有する土地について,AB間で,代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨を約定して売買契約が締結された。
BがAに代金全額を支払った後、AがBへの所有権移転登記を完了する前に死亡し、CがAを相続した場合、Bは、Cに対して所有権の移転を主張することができる。」(平成8年・問3・肢2) |
【正解:○】 A (売主)―――B (買主) 未登記 上の解説参照。BはAに代金全額を支払っているので、支払いの時点でこの土地の所有権は、AB間で締結した約定により、AからBに移転しています。 したがって、Aが死亡していても、Bは、Cに対して所有権の移転を主張することができます。 |
●相続と物権変動−遺贈と譲受人 |
1.「AがBに土地を譲渡した場合で,Bに登記を移転する前に,Aが死亡し,Cがその土地の特定遺贈を受け,登記の移転も受けたとき,Bは,登記なしにCに対して土地の所有権を主張できる。」(平成9年・問6・肢3) |
【正解:×】 A (売主)―――B (買主) 移転登記は未了 この場合、Aを起点として二重譲渡が行われたものとみなすことになります。 遺贈により不動産を取得した者〔C〕は、遺言者〔A〕から不動産の移転を受けた者〔B〕との間で物権の帰属を争う関係となり、対抗問題となります。 本設問のB、Cのどちらも、所有権を主張するには登記を必要とします。 ▼Cが、特定遺贈ではなく、死因贈与を受けた場合でも、同じです。 |
5.「土地の登記簿の表題部に被相続人が所有者として記載されている場合において,
その相続人が複数あるときは,共同相続人の1人は,自己の持分についてのみ所有権
保存登記ができる。」(H12-14-2)
【正解:×】 ◆共同相続人の所有権保存登記 相続人A 表題部に被相続人が所有者として記載されている場合、共同相続人の1人は,共有財産の保存行為として,共同相続人全員の所有権保存登記を申請することができます。(民法・252条但書、先例・明治33.12.18,昭和30.10.15) 共同相続人の1人が自己の持分のみを保存登記申請することはできません。(先例・明治32.8.8民事局長回答)
|