Brush Up! 権利の変動篇

抵当権の基本確認1

正解・解説


【正解】

× ×

× ×

 関連項目 → 担保物権の通則

 抵当権に関する次の記述は、民法の規定及び判例によれば、○か、×か。

1.「抵当権は、不動産だけでなく、地上権及び永小作権にも設定することができる。」
元年7-1、類・昭和56、昭和47

【正解:

◆抵当権の設定

 民法では、抵当権は、不動産、地上権及び永小作権に設定することができます。(地上権、永小作権に抵当権を設定することは実際は少ない)

このほかにも、特別法で抵当権を設定できるもの(船舶・工場財団など)もあります。

●判例 最高裁・昭和25.10.24

 抵当権は登記をしなければ第三者に対抗できませんが、登記のない抵当権も当事者間では有効であり競売の申立をすることができます。(確定判決や公正証書等が必要。)

 ただし、未登記の抵当権には優先弁済権はないため、一般債権者として配当を受けることになります。〔一般債権者がほかにいる場合は債権額に応じた平等配分になります。〕

●類題
1.「抵当権の性質上、その目的物は公示制度になじむものであることを要するから、不動産、地上権および永小作権に限られ、動産に抵当権の効力が及ぶことはない。」

【正解:×

 動産も抵当不動産の附加一体物(建物の附合物も含む)・抵当権設定当時に存在した従物の場合には、抵当権の効力が及び、不動産とともに抵当権の目的物になります。

2.「地上権に基づき建物を所有しているときは、建物のほか、地上権に対しても抵当権を設定することができる。」(昭和62-5-3)
【正解:
3.「債権者を同じくする数個の債権を一括して担保する1個の抵当権を設定することはできない。」(司法書士・昭和63-9-3)

【正解:×】判例によりこのように抵当権を設定することも認められています。(最高裁・昭和33.5.9) 

4.「2,000万円の貸金債権の一部である1,000万円を被担保債権とする抵当権設定契約は無効である。」(司法試験択一・昭和51年問36)

【正解:×】債権の一部に抵当権を設定することもできます。(一部抵当) 

2.「抵当権設定者の債務の弁済期から10年が経過してその債務が消滅しても、抵当権の

消滅時効の期間は20年であるから、債務の弁済期から20年経過しなければ抵当権設定者

は抵当権者に対して抵当権の消滅を主張することはできない。」(H-7-6-4)

【正解:×類題・

◆附従性

 担保物権とは、本来、債権を担保するための手段であり、債権という主役の従たる存在です。このため、「被担保債権が存在しなければ担保物権も存在せず、被担保物権が消滅すれば担保物権も消滅する」と考えられています。このことを担保物権の附従性といいます。

 条文には明記されていませんが、抵当権には、債権との附従性があると解されています。(附従性・随伴性は条文には明記されていません。)

 したがって、被担保債権が消滅時効によって消滅すれば、抵当権も附従性によって消滅し、抵当権設定者は抵当権者に抵当権の消滅を主張できます。

(H9-4-3)

 判例 被担保債権が無効なときは抵当権も効力を生じない。(大審院・昭和8.3.29)

●参考問題
1.「金銭債権以外の債権を担保するために、抵当権を成立させることはできない。」

【正解:×

 抵当権の被担保債権の種類に制限はありません。

2.「公序良俗に反する契約から生ずる債権を担保するため設定された抵当権は効力を生じない。」(司法書士・昭和63-9-3)

【正解:】債権が無効なら成立における附従性によって抵当権も効力を生じません。

3.「抵当権者は,被担保債権が発生原因たる法律行為の取消しによって消滅したときは,抵当権を失う。」(司法試験択一・昭和60年)

【正解:】債権の原因である法律行為が取り消されたら成立における附従性によって抵当権も効力を失います。

3.「将来発生する債権のために、あらかじめ抵当権を設定することはできない。」
(類題 : 平成3年,平成15年)

【正解:×

◆成立段階での附従性の緩和

 抵当権は、本来、現に存在する債権を担保するものです。しかし、その被担保債権が抵当権設定当時に存在していない場合、例えば、将来発生する債権や条件付債権のために抵当権を設定することも判例により認められています。(最高裁・昭和33.5.9)

判例の補足

 将来発生する債権でも現時点で特定できるならば公示することは可能であることから,将来発生する債権のためにも抵当権を有効に設定できるとしています。(大審院・大正2.5.8)

●参考問題
1.「将来の一定の時期に成立する債権を担保するためあらかじめ抵当権を設定することができる。」(司法書士・昭和63-17-1)

【正解:

4.「抵当権者は、抵当権設定者が抵当権のついた不動産を第三者に譲渡しても、

抵当権設定者が期限までに債務を弁済しない場合には、抵当権の登記をしていれば

その第三取得者に対抗でき、その不動産を差し押さえて競売にかけることができる。」

【正解:

◆追及効

 通説では、抵当権設定の登記をしていれば、抵当権者は第三取得者の所有になった不動産にも抵当権を実行できるとされています。(民法の条文には明確なものはない)

 つまり、抵当権者は、抵当不動産の所有権が次々に第三者に移転しても、どこまでも抵当不動産に追及して抵当権の実行をすることができます。これを「追及効」といいます。

 抵当権設定者 → 第三取得者
                ↑
             抵当権者は、抵当不動産が第三取得者に移転しても、
             抵当権に基づき、
抵当権を実行できます。

5. 「AがBに対する債務の担保のためにA所有建物に抵当権を設定し、登記をした。

AはBのために抵当権を設定したのであるから、この債権が同一性を保ったままBから

Cに譲渡された場合、Cは、Aの承諾がない限り、抵当権を取得することはできない。」

【正解:×

◆随伴性

 本設問は,債権譲渡の成立要件を

 被担保債権が同一性を保ったまま第三者に譲渡された場合には,その債権を担保するための抵当権もまた第三者に移転します。債権譲渡契約の当事者は譲渡人と譲受人であり,債務者は当事者ではないので,債務者の承諾がなくても当事者の意思表示のみで債権譲渡の効力が生じます。

 したがって,債権譲渡により抵当権が移転することについて抵当権設定者の承諾は不要です。

 抵当権者の債権第三者に譲渡
              ↑
             被担保債権が第三者に譲渡されると、この債権に随伴して、
             
抵当権もこの第三者に移転し、この第三者は抵当権を実行
             できます。

債権譲渡の債務者への対抗要件としては,「債務者への債権者からの通知」または「債務者の承諾」が必要ですが,本設問ではこのことを訊いているのではありません。本設問は,債権譲渡の成立要件を訊いている問題です。

●第三者への対抗要件
「抵当権は随伴性を有するから,債権譲渡により移転し,債権譲渡の通知または移転登記のいずれかをすれば第三者に対抗できる。」(司法試験・択一・昭和38年)
【正解:×

 債権を譲り受けた者が抵当権の取得を第三者〔後順位抵当権者など〕に対抗するには,以下の二つが必要です。どちらか一つでいいというわけにはいきません。

・債権譲渡の『債務者への債権者からの通知』または『債務者の承諾』〔通知・承諾のどちらも確定日付ある証書が必要。〕(467条)

・抵当権移転の登記(177条)

6.「抵当権者は、その被担保債権について債権全額の弁済が行われるまで、当該物件

の全体について、その権利を行使することができる。」昭和49

【正解:

◆不可分性

 被担保債権の全部の弁済があるまで、担保物権は目的物の全部の上に存続し、その効力を及ぼします。つまり、被担保債権の一部が弁済されたからといって抵当権がなくなるわけではありません。

●参考問題
1.「被担保債権の一部が弁済されれば、抵当権の担保の範囲はその限度で当然に縮減することはない。」

【正解:×

 抵当権の担保の範囲=優先弁済を受ける範囲

 被担保債権の一部が弁済されれば、抵当権の担保の範囲はその限度で当然に縮減します。

 不可分性との混同に注意しましょう。不可分性とは、被担保債権が存在する限り、抵当権の目的物全体が担保になることです。

7.「AがBに対する債務の担保のためにA所有建物に抵当権を設定し、登記をした。

第三者の不法行為により建物が焼失したのでAがその損害賠償金を受領した場合

Bは、Aの受領した損害賠償金について物上代位することができる。」平成7年

【正解:×

◆物上代位は差押えが要件(ヒッカカル可能性大)

 抵当権では、抵当権の対象が滅失・毀損したり、売却・賃貸されたとき、物上代位によりその保険金、損害賠償金、売却代金、賃料などの請求権に抵当権の効力が続することになっています。

 滅失した抵当物件に関する損害賠償金につき、抵当権者が物上代位するには、先取特権の規定が準用されます。(第372条、第304条)

 判例によれば、物上代位は現実の金銭の上に効力を及ぼすものではなく、目的物の滅失により生じた「損害賠償請求権」の上に効力を及ぼすものであって、当該賠償金を債務者が受領した後においては、債務者の一般財産と混同(マゼコゼ)してしまい、分離不可能となるため、物上代位することはできません。

 つまり、払い渡しされる前に請求権にもとづき差押え等の必要があります。差押えが必要なのは第三債務者を保護するためとされています。(最高裁・平成10.1.30)

▼物上代位の対象となるもの

 売却代金(H2-6-3),損害賠償金(H7-6-3),建物の賃貸借の賃料(H11-4-1),

このほかには、火災保険金債権(昭和55-7-4)に対する抵当権の物上代位も判例では認められています。(大審院・明治40.3.12)

●参考問題
1.「抵当建物が火災によって消滅した場合、その火災保険金に対して抵当権を行うことができる。」(昭和55-7-4)

【正解:

◆物上代位は差押えが要件

 「抵当権を行う」というのは迷わせますが、民法372条による304条の読み替えによる準用のためにこの表現が問題文で使われたと思われます。

 抵当権では、抵当権の対象が滅失・毀損したり、売却・賃貸されたとき、物上代位によりその保険金、損害賠償金、売却代金、賃料などの請求権に抵当権の効力が続することになっています。(払い渡しされる前に、請求権にもとづき差押え等をする必要があります。)

番外知識・抵当権と時効

債権の消滅時効…被担保債権の消滅時効が完成したときには、第三取得者もこれを援用することにより、抵当権の消滅を主張できます。(最高裁・昭和48.12.14)

・後順位抵当権者は、先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用できない。(最高裁・平成11.10.21)

抵当権の消滅時効(396条)第三取得者や後順位抵当権者との関係では、被担保債権とは関係なく、抵当権は20年の消滅時効にかかります。(大審院・昭和15.11.26)

債務者や物上保証人との関係では、債務者や物上保証人は抵当権者に義務や責任を負担しており、被担保債権が消滅時効にかからないで抵当権だけが消滅時効にかかることを民法396条は否定しています。

しかし、被担保債権が消滅時効にかかっているときには、抵当権設定者はこの時効を援用することで抵当権の消滅を主張できます。(H9-4-3)

取得時効による抵当権の消滅(397条)…「債務者と物上保証人」を除いた者が抵当不動産を時効により取得すれば、抵当権は消滅します。

  大審院・昭和15.8.12 第三取得者には397条を適用しない。

  最高裁・昭和43.12.24 未登記の第三取得者には取得時効を認める。

●チェック
1.「抵当権の存在を知らない第三者が抵当不動産を時効によって取得したときは抵当権は消滅する。」(司法試験択一・昭和48年)
【正解 :

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