Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の基本確認10 共同抵当・同時配当・異時配当
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
●共同抵当の意義 |
一個の債権を担保する抵当権が複数の不動産に設定されていることを共同抵当といいます。この制度のメリットとしては以下のものがあります。
・一つ一つの不動産では被担保債権の額に不足しても、いくつかの不動産をまとめることによって、被担保債権に見合った担保価値を有する目的物を得ることができる。 ・一つの抵当不動産が滅失・毀損、地価の下落などによりその価値が低下しても、他に抵当不動産があれば合わせて弁済を受けることでリスクが分散できる。 ●共同抵当の公示 共同抵当の目的物全ての登記で『共同抵当関係にある他の不動産が存する旨』が記載され,共同抵当の目的物のそれぞれを管轄する登記所〔法務局〕に共同担保目録が備え付けられ,共同抵当になっている全ての不動産を記載することになっています。 |
Aは,Bから3,000万円の借金をし,その借入金債務を担保するために,A所有の甲地と, 乙地と,乙地上の丙建物の上に,いずれも第1順位の普通抵当権(共同抵当)を設定し, その登記を経た。その後甲地については,第三者に対して第2順位の抵当権が設定さ れ,その登記がされたが,第3順位以下の担保権者はいない。この場合,民法の規定 によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。(平成13年・問7) |
土地・甲 | 土地・乙 | 建物・丙 |
第1順位B(共同抵当) | 第1順位B(共同抵当) | 第1順位B(共同抵当) |
第2順位・第三者の抵当権 | ・・・ | ・・・ |
1.「甲地が1,500万円,乙地が2,000万円,丙建物が500 万円で競売され,同時
に代価を配当するとき,Bはその選択により,甲地及び乙地の代金のみから優
先的に配当を受けることができる。」
【正解:×】
◆同時配当
▼共同抵当権の目的物に抵当権が実行され同時に代価を配当するときは、各不動産の売却代金の割合に応じて配当を受けます。(民法392条1項) 同時配当では、Bは特定の不動産を選択して優先的に配当を受けることはできません。後順位抵当権者が配当予測するのを可能にするためです。 ●Bの受け取る配当(利息・損害遅延金はゼロとして計算、競売費用等は控除した場合) 土地・甲 3,000万円×15/40=1,125万円 土地・乙 3,000万円×20/40=1,500万円 建物・丙 3,000万円× 5/40= 375万円 ●第三者の受け取る配当=土地・甲の売却代金−Bの受け取った配当 土地・甲 1,500万円―1,125万円=375万円 この金額の中から配当を受ける。 もし、被担保債権額が375万円を超えるならば、配当の375万円で足りない分は無担保債権になって存続します。抵当権は消滅しますが、被担保債権はなくなりません。 ▼同時配当の場合、共同抵当権者の任意の配分に委ねてしまうと、後順位の抵当権者に不利が生じる可能性があり、後順位での抵当権の設定を受けて融資しようとする者がいなくなり、ひいては担保価値がまだあるのに債務者が融資が受けられなくなるという債務者にとって不利な事態にもなりかねないからです。 例えば、上の表でBが土地・甲から1,500万円、土地・乙から1,500万円の配当を受けるとすると、第三者は土地・甲の抵当権者であるにもかかわらず、配当が受けられなくなります。 |
2.「甲地のみが1,500万円で競売され,この代価のみがまず配当されるとき,B
は,甲地にかかる後順位抵当権者が存在しても,1,500万円全額(競売費用等
は控除)につき配当を受けることができる。」
【正解:○】
◆異時配当
共同抵当で、特定の不動産のみがまず競売され、その代価が配当されるときは、共同抵当権者は、その売却代金全額まで債権金額の優先弁済を得ることができます。(392条2項) 本設問の設定では、債権総額が3,000万円で、甲地の売却代金は1,500万円の為、Bは債権の一部しか弁済は得られないことになります(一部弁済)。Bは完済を受けていないため、土地・乙や建物・丙へのBの抵当権は消滅していません。 甲地にかかる後順位抵当権者は、同時配当を受けた場合を基準とした一定の範囲で、土地・乙、建物・丙への共同抵当権者Bの抵当権の代位行使ができるので不利益があるとは言えません。→ 詳しくは昭和42年の問題を参照してください。 |
3.「Bは,Aの本件借入金債務の不雇行による遅延損害金については,一定の
場合を除き,利息その他の定期金と通算し,最大限,最後の2年分しか,本件登記に
かかる抵当権の優先弁済権を主張することができない。」(類題・平成7年)
【正解:○】
◆抵当権者以外の債権者との関係 抵当権設定後にも後順位抵当権者やほかの債権者などが抵当不動産に利害関係を持つことがあります。そのため、民法では先順位抵当権者以外の者の利益を保護する為に、被担保債権の範囲を制限しています。 後順位抵当権者やほかの債権者がいる場合は、特別な登記をしていなければ、 |
4.「Bと,甲地に関する第2順位の抵当権者は,合意をして,甲地上の抵当権の
順位を変更することができるが,この順位の変更は,その登記をしなければ効
力が生じない。」(類題・昭和59)
【正解:○】
◆順位の変更
抵当権の順位の変更は、各抵当権者の合意によってすることができます。また、利害関係人がいればその承諾も得る必要があります。(374条1項) この順位の変更は登記をすることによって効力を生じます。(374条2項) |