Brush Up! 権利の変動篇
抵当権の基本確認7 法定地上権
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
○ | ○ | ○ | ○ | × |
法定地上権に関する次の記述は、民法の規定及び判例によれば、○か、×か。 |
1.「Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に
抵当権を設定した。Bの抵当権の実行により、Cが建物、Dが土地を競落した場合、Dは、
Cに対して土地の明渡しを請求することはできない。」(H10-5-1)
【正解:○】
◆土地と建物の双方に抵当権設定 土地と建物の双方に抵当権が設定されたのち、双方が別々の者に競落された場合にも、法定地上権が成立します。(判例) これは共同抵当(同一の抵当権者に土地と建物双方とも抵当権設定)に限らず、成り立ちます。 したがって、Dは、Cに対して土地の明渡しを請求することはできません。 |
●参考問題 |
1.「土地と建物の双方に抵当権が設定されたのち、双方が別々の者に競落された場合
にも、法定地上権が成立する。」(昭和61-5-4) |
【正解:○】 |
2.「土地に対する抵当権設定当時、建物について保存登記がなされていない場合にも、
建物が存在していれば法定地上権は成立する。」(昭和61-5-1)
【正解:○】
◆建物の保存登記の有無には関係ない 土地に対する抵当権設定当時に存在した建物に所有権保存登記がなされていなくても、法定地上権は成立する。(大審院・昭和7.10.21) ▼建物が未登記の場合に、法定地上権を認めた判例としては、最高裁・昭和44.4.18などもあります。 |
3.「法定地上権の成立を抵当権設定当事者の特約によって排除することはできない。」
【正解:○】
◆抵当権設定当事者の特約 法定地上権の成立を抵当権設定当事者の特約によって排除することはできません。(大審院・明治41.5.11) |
4.「建物のみに抵当権が設定されたのち、抵当権実行前に土地が譲渡された場合にも、
法定地上権は成立する。」(昭和61-5-2)
【正解:○】
◆建物に抵当権設定 建物に抵当権が設定された当時に、土地と建物が同じ所有者のものであったならば、抵当権実行前に土地と建物が別々の所有者に属することになっても、法定地上権は成立します。(大審院・昭和8.3.27) ▼参考 土地に抵当権が設定された当時に、土地と建物が同じ所有者で、その後、建物が第三者に譲渡され、抵当権実行前に土地と建物が別々の所有者に属することになっても、法定地上権は成立するとされています。 |
5.「土地に対する抵当権設定当時に存在した建物が火災で滅失し、抵当権実行前に
同様の建物が再築された場合には、法定地上権は成立しない。」(昭和61-5-3)
【正解:×】
◆再築した建物にも法定地上権が成立 土地に対する抵当権設定当時に建物が存在したが、火災で滅失し、抵当権実行前に同様の建物が再築された場合にも、滅失した建物に成立するはずであった法定地上権が成立します。(大審院・昭和10.8.10) |
●参考問題 |
1.「AがBのためにAの所有地に抵当権を設定した当時、Cが当該土地を賃借し、建物を所有していた。この場合、土地について競売が実施されると、建物について法定地上権が成立する。」(過去問・改)」 |
【正解:×】 法定地上権の要件は、土地・建物の一方または両方に抵当権が設定され、 ・抵当権設定時に、土地と建物が同一人の所有であること。 ・抵当権実行後に、土地と建物の所有者が異なることになったこと。 この2つになっており、本設問の設定では、 ・抵当権設定時に、土地と建物の所有者が異なっていた (土地の所有者A、建物の所有者C) ことから、法定地上権は成立していません。 ▼抵当権設定当時に、土地と建物が別人の所有になっていた場合には、すでに建物に何らかの土地利用権が設定されている為、法定地上権を成立させる必要はないわけです。 |
2.「AがBのためにA所有の更地に抵当権を設定した後、Aが当該更地の上に建物を新築した。この場合、土地について競売が実施されると、建物について法定地上権が成立する。」(昭和62-5-2) |
【正解:×】 法定地上権とは、抵当権設定当時に、土地と建物が同一人が所有していて、抵当権の実行によって土地と建物の所有者が異なることになったときに、成立するものであり、 本設問のケースでは、抵当権設定当時には建物はないため、法定地上権は成立していません。 ▼このケースでは、抵当権者は土地と建物を一括競売することもできます。 |
●法定地上権 |
・法定地上権も借地借家法の適用を受けるため、存続期間は当事者の合意がなければ30年になります。(借地借家法3条) ・地代は、当事者の協議で定まらないときは裁判所が決定します。(388条但書) |