Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

請負に関する問題2   平成7年・問10


【正解】

× × ×

請負契約により注文者が請負人に建物(木造一戸建て)を建築させた。
この場合、次のそれぞれの記述は、民法の規定及び判例によれば○か、×か。
ただし、担保責任に関する特約はないものとする。 (平成7年・問10)

(住宅品確法との違いに注意してください。請負に関する問題1・設問3の解説を参照。)

1.「建物の完成後その引渡しを受けたは、引渡しの時から2年以内に限り、その建物の

瑕疵について、修補又は損害賠償の請求をすることができる。」

【正解:×

 民法の規定によれば、木造建物の瑕疵を担保すべき期間は、「引渡の時から5年」(堅固な建物の場合は10年)です(民法第638条1項)。

 問題の冒頭で「民法の規定によれば」となっていますから、これを、宅地建物取引業法第40条の瑕疵担保責任についての特約の制限と混同しないようにしましょう。

2.「が建物の材料の主要部分を自ら提供した場合は、が請負代金の全額を建物の完

成前に支払ったときでも、特別の事情のない限り、は、自己の名義で所有権の保存登記

をすることができる。」

【正解:×

 請負建物の所有権の帰属につき、判例によれば、「建物の材料の主要部分を請負人が提供した場合であっても、注文者が、建築工事完了前に請負代金の全額の支払いを完了している以上、特段の事情のない限り、建物は工事完了と同時に注文者に所有権を帰属させる合意があったものとみなされる」とされ、請負人Bは工事の完成前であっても、自己の名義で所有権の保存登記をすることはできません。

3.「から完成した建物の引渡しを受けた後、に対して建物を譲渡したときは、は、

その建物の瑕疵について、に対し修補又は損害賠償の請求をすることができる。

【正解:×

        引渡し           譲渡
 (請負人)―――――(注文者)―――――(譲受人)

 仕事の目的物に瑕疵があるとき、注文者は請負人に対し、相当な期間を定めてその瑕疵の修補を請求することができます(第634条1項)。

 しかし、本設問の記述の場合は、建物は完成しており、さらにその建物は注文者AからCに譲渡されており、CはAに対して瑕疵担保責任を追及することはできます(第570条、第566条)が、Cは注文者(請負契約の当事者)ではないので、直接Bに対して修補や損害賠償の請求をすることはできません。

 この場合、Cから瑕疵担保責任を追及された注文者Aは、請負人Bに対して、引渡から5年間は責任を追及することができます。

4.「は、が建物の建築を完了していない間にに代えてに請け負わせ当該建物を

完成させることとする場合、損害を賠償してとの請負契約を解除することができる。」

【正解:

 請負契約とは、一般的に完成するまでの期間も長く、また費用も膨大なものも多く、その間に注文者の事情も異なることもあり、例えばその請負の目的物が注文者にとって、社会事情等の変動によって不要になることもあり、そのような事情があっても、当初の約束を法によって履行させることは、注文者にとってばかりでなく、社会経済的にもマイナスと考えられます。

 また、請負人の仕事ぶりが注文者の意に沿わない場合などもあって、「契約は履行されるべきものである」という契約法の原則の例外として、「注文者」は、仕事の「完成前」であれば、請負人のそれまでの支出や、完成したら請負人が得られたであろう利益等を“賠償”して、“契約を解除”することができる(第641条)と、注文者に解除権が与えられ、合理的に図られています。


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