税法その他 基礎編
所得税・贈与税―譲渡所得・贈与に関する税・住宅借入金の特別控除
●譲渡所得に関する税 0 譲渡所得の基本
正解・解説
譲渡所得では、最近の傾向では「特例」が花盛りですが、昔は、本節に集めた問題も 出題されていました。再登場に備えて、見るだけ見ておきましょう。(17年にこのセクションから出題) |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
<KEY WORDS> ・譲渡所得の意味 個人の、営利を目的としない「資産の譲渡」による所得 ・譲渡所得になるもの、課税されないもの |
<KEY WORDS> 所得税 所得税法では、課税対象になる所得を、以下の10に区分しています。 利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、 山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得 譲渡所得は、資産の譲渡による所得のことですが、 土地建物の譲渡の場合は 分離課税 土地建物以外の譲渡の場合は 総合課税 になります。 なお、ご覧のように、山林の譲渡による所得は、譲渡所得ではありません。 <参考> 不動産所得 土地建物の賃貸・土地建物に関する権利などからの収益で、譲渡所得と区別。 不動産所得は、「収入額―必要経費」になります。 |
次のそれぞれの記述は、所得税法、租税特別措置法の規定によれば○か、×か。 |
1.「個人からの贈与により取得した土地を譲渡した場合のその譲渡所得の金額の
計算上控除される土地に係る取得費はその贈与を受けたときの時価とされる。」
H1-29-2
【正解:×】
◆贈与により取得したものの取得費 この場合の、土地に係る取得費は、その「贈与を受けたときの時価」ではなく、「贈与した者が取得したときの時価」です。 <取得費> 取得費とは、土地建物等の取得に要した費用と取得後の設備費及び改良費の合計額 ただし、通常の修繕費は改良費には入りません。(所得税法38条1項) 昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等を譲渡した場合の取得費は原則として、収入額の5パーセントとされています。 |
<KEY WORDS> 譲渡所得の計算方法 譲渡所得=資産の譲渡による収入金額−必要経費(取得費+譲渡費用) 課税される譲渡所得の金額=譲渡所得の金額−特別控除額 |
2.「協議離婚に伴う財産分与として自己が所有する土地・家屋を妻の名義に変更
した場合には、その土地・家屋は、慰謝料の代わりに無償で妻に与えているので、
譲渡所得の金額はないものとして、課税されない。」H2-29-3 改
【正解:×】
◆協議離婚に伴う財産分与は譲渡所得―譲渡の対価は<現金>とは限らない 個人に対する贈与については、原則として譲渡所得の課税はされません。 (法人に対する贈与などの無償譲渡や、有償であっても時価に比べ著しく低い価額 での法人への有償譲渡は、譲渡所得として課税されます。) しかし、民法768条による協議離婚に伴う財産分与は、贈与ではなく、 資産の譲渡になります。 財産分与による資産の移転は、「財産分与義務の消滅」という経済的利益を対価と する譲渡であると、みなされるからです。 したがって、この場合は、<財産分与をした時の時価で譲渡した>とされ、 譲渡所得として課税されます。(所得税法33条1項、所得税法基本通達33-1の4) |
3.「相続税を納付するために、相続により取得した土地を税務署長の許可を受け
て物納した場合には、その物納価額を譲渡による収入金額として課税される。」
H2-29-1
【正解:×】
◆物納は課税されない 財産の譲渡はなかったものとみなされ、所得税は課税されません。 (租税特別措置法・40条の3) |
<KEY WORDS> 売買以外の譲渡 資産の交換、国・地方公共団体に収用された場合、法人への贈与、 みなし譲渡、法人への現物出資、借入金の返済を代物弁済、借地権・地役権を 設定し対価として権利金を受け取る、など |
4.「保証債務を履行するために土地を譲渡した場合において、その履行に伴う
求償権の一部を行使することができないこととなったときは、その行使することが
できないこととなった金額は、なかったものとされる。」H2-29-2
【正解:○】
◆保証債務の履行で譲渡し、求償権を行使できなくなったとき 保証債務の履行として資産を譲渡したが、主たる債務者が破産したり、強制執行を受けたりしたために、その主たる債務者に対して 求償権の一部を行使することができないこととなったとき、行使できないこととなった金額は、譲渡所得の計算上、なかったものとされます。(所得税法64条2項) <参考> 所得税が課税されないもの <一定の要件で、譲渡担保として資産を移転したとき> <資力喪失の場合の強制換価手続による資産の譲渡> <国・地方公共団体への寄付> <公益法人に寄付して国税庁長官の承認を受けた場合> <相続税を納めるための物納> <個人に対して資産を贈与> 強制換価手続・・・滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売 |
<KEY WORDS> 1月1日現在での期間で所有(保有)年数を決める ●短期譲渡所得(5年以下)の税率 30パーセント ●長期譲渡所得(5年超)の所得税率 15パーセント |
●最近の所得税・贈与税の出題
平成11年肢2は、譲渡損失の繰越控除と住宅借入金控除が重畳適用可能か問う問題。 |
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