税法その他 基礎編
所得税・贈与税―譲渡所得・贈与に関する税・住宅借入金の特別控除
●譲渡所得に関する税 2 居住用財産譲渡の3,000万円特別控除
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
5 | 6 | 7 | 8 |
× | × | ○ | × |
<KEY WORDS> 譲渡所得の計算方法 譲渡所得=資産の譲渡による収入金額−必要経費(取得費+譲渡費用) 課税される譲渡所得の金額=譲渡所得−特別控除額 |
●3,000万円の特別控除のときの税率一覧 | ||
5年以内 | 短期譲渡所得 | 30パーセント |
5年超 | 長期譲渡所得 | 15パーセント |
5年超 | 軽減税率
優良住宅地の造成 |
15パーセント(2,000万円超)
10パーセント(2,000万円以下) |
10年超 | 軽減税率
居住用財産を譲渡 |
15パーセント(6,000万円超)
10パーセント(6,000万円以下) |
次のそれぞれの記述は、所得税法、租税特別措置法の規定によれば○か、×か。 |
1.「個人が所有し、かつ居住する土地建物のうち、その住宅の敷地のみを譲渡し
て当該住宅に引き続き居住する場合にも、その土地の譲渡について、居住用財産
を譲渡した場合の3,000万円特別控除の適用を受けることができる。」
【正解:×】
◆「家屋を残して、土地だけ譲渡」には適用されません。 この特例は、以下の場合に適用されます。 1.現に自己が住んでいるか、住んでいた家屋を譲渡した場合 2.自己が住んでいるか、住んでいた家屋とともに、その家屋の敷地である土地や借地権を譲渡した場合 3.災害にあって滅失した家屋の敷地であった土地や借地権を災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合 本設問の設定では、この中に該当するものはありません。 |
≪参考≫3,000万円特別控除を受けられる要件 |
●家屋と土地の所有者の名義が同じ場合
・現に住んでいる ・転勤などで住んでいなくても身内が住んでおりいずれその家屋に戻って住む予定であった(参考知識) ・かつて住んでいた場合でも、住むのをやめた日から3年を経過する年の12/31までの間の譲渡 ●家屋と土地の所有者の名義が異なる場合(参考知識) 土地と家屋の所有者が異なる場合でも、1)〜3)全てに該当すれば適用は受けられる。 1)土地・家屋一緒に処分 2)土地・家屋の所有者が親族関係で生計を一つにしていること 3)土地の所有者が家屋の所有者と共にその家屋に居住していること ●土地や借地権だけ譲渡してもこの適用が受けられる例外 ・災害で滅失した家屋のあった土地を災害のあつた日から3年を経過する年の12/31までの間の譲渡 ・自分が住んでいる家屋の敷地である土地や借地権を譲渡するために、その家屋を取り壊した時は、土地や借地権だけ譲渡したときでも、その取り壊した日から1年以内に売買契約を締結するなどの一定の要件を満たすならば、この特例の適用を受けられる場合がある。(参考知識) |
2.「居住の用に供している家屋をその者の長男に譲渡した場合には、その長男が
その者と生計を一にしているか否かに関係なく、その譲渡について、居住用財産の
譲渡所得の特別控除の適用を受けることができない。」 H6-29-1
【正解:○】
◆譲渡先の要件―譲渡した相手が配偶者、直系家族はダメ 配偶者や直系血族に譲渡した場合には、適用されません。 「配偶者や直系血族」以外の親族でも、生計を共にしている人、同居する人にも 適用されません。 親族ではなくても、内縁関係にある人、内縁者の親族で内縁者と生計を共にしている人、 譲渡者から受ける金銭や財産により生計を維持している人、同族会社や同族法人なども 、譲渡先の要件からは外れます。 |
3.「居住の用に供していた家屋をその者が居住の用に供さなくなった日から2年を
経過する日の翌日に譲渡した場合には、その譲渡について、居住用財産の譲渡
所得の特別控除の適用を受けることができない。」 H6-29-2
【正解:×】
◆居住しなくなった日の要件 居住の用に供さなくなった日から <3年を経過する日の属する年の12月31日まで>に譲渡した場合には、 適用されます。これは、居住用財産の譲渡の軽減税率でも同じです。 本設問では、 <居住の用に供さなくなった日から2年を経過する日の翌日に譲渡した場合> ですが、これは<3年を経過する日の属する年>までの期間内のため、 当然適用は受けられることになり、本設問は×になります。 |
4.「その土地が居住用財産に該当するなど所定の要件を満たせば、前々年に
特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の課税の特例の適用を受けている
ときでも、居住用財産を譲渡した場合の 3,000万円特別控除の適用を受けること
ができる。」 H10-28-3
【正解:×】
◆前々年からの3年間に以下の適用があれば3,000万円特別控除はダメ × 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の課税の特例 × 3,000万円特別控除 |
5.「建物の所有期間が4年、土地の所有期間が6年である居住用財産を譲渡した
場合には、居住用財産の譲渡所得の 3,000万円の特別控除は、譲渡所得が最も
多額な資産のほうから順次控除する。」 H2-29-4
【正解:×】
◆控除の順序 短期譲渡所得→長期譲渡所得 短期譲渡所得から先に控除して、まだ控除額が3,000万円に到達しないときに、 残った分を長期譲渡所得から控除します。 |
6.「居住用財産を譲渡した場合に、その譲渡所得が短期譲渡所得の課税の特例
の適用を受けるものであるときには、居住用財産の 3,000万円特別控除の適用を
受けることはできない。」 H8-28-3
【正解:×】
◆短期譲渡所得 居住用財産の 3,000万円特別控除には、所有期間の制限がないため、 5年以内の所有期間でも適用されます。この場合は、短期譲渡所得の課税の 特例を受けることになります。(所得税率30%) |
7.「居住用財産を譲渡した場合の 3,000万円特別控除の適用を受ける場合で
あっても、その譲渡した居住用財産の今年1月1日における所有期間が10年を
超えるときは、 3,000万円の特別控除を控除した後の長期譲渡所得については、
居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けることができる。」
H3-29-1, 【類題】H8-28-2, H10-28-4, H12-26-2
【正解:○】
◆10年超なら、居住用財産譲渡の軽減税率 ○ 居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例 |
8.「今年1月1日における所有期間が10年以下の居住用財産の譲渡については、
居住用財産を譲渡した場合の 3,000万円特別控除を控除した後の金額に、15パ
ーセントの税率により、所得税が課税される。」 H4-28-1
【正解:×】
◆所有期間10年以下で3,000万円控除のときの税率 10年以下の場合は、通常のケースでは、 5年超〜10年ジャスト 長期譲渡所得 15パーセント、 5年以下 30パーセント のどちらかでなので、必ず15パーセントということはありません。 <軽減税率> 10年以下なので当然、居住用財産の軽減税率は使えません。
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●居住用財産の譲渡所得の3000万円控除 重畳適用一覧 | |
短期譲渡所得・5年以内 | ○ |
長期譲渡所得・5年超 | ○ |
居住用財産を譲渡した場合の軽減税率・10年超保有 | ○ |
優良住宅地の造成の軽減税率 | × |
居住用財産の譲渡所得の3000万円控除 | ― |
収用交換等の場合の5,000万円控除 | × |
居住用財産の買い換え特例(特定) | or |
収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例 | × |
orは、選択適用である事を示します。(以下同じ)
<KEY WORDS> ●居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円の特別控除)の使い分け ―重畳適用できるかどうか、を考える前に、このフローチャートで流れをつかむ ―実際には、重畳適用で悩むのは、軽減税率の可否が多い ▼譲渡先は、収用対象事業か? Yes! → 収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除(5,000万円特別控除) 収用などに伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(課税の繰り延べ) ▲買い換えない場合は、5,000万円特別控除のみになります。 ▲買い換える場合は、2つのうち有利なものを選べばいいわけです。 No! ↓ ▼所有期間が10年を超えるか? No! → 居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円特別控除) Yes! ↓ ▼買い換えるか? No! → 居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円特別控除) Yes! → 居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円特別控除) 特定の居住用財産の買い換えの特例 (このうち有利なものを選べば良い) |
●最近の所得税・贈与税の出題
平成11年肢2は、譲渡損失の繰越控除と住宅借入金控除が重畳適用可能か問う問題。 |
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