税法その他 基礎編

所得税・贈与税―譲渡所得・贈与に関する税・住宅借入金の特別控除

譲渡所得のアウトライン―平成の過去問の分析結果

●最近の所得税・贈与税の出題  
    9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年
住宅借入金特別控除                     
譲渡所得                  
譲渡損失の繰越控除                        
相続時精算課税制度                   

平成11年・18年は、譲渡損失の繰越控除と住宅借入金控除が重畳適用可能か問う問題。


敵を完全に知り尽くすまず、出題内容をしっかり押さえましょう。

(1) 問題文中に出てきた用語による出題状況―所得税・贈与税―

   着色欄=その項目が舞台になっていることを示す。 =問題文中に出てきたもの

・・ 元年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年
税率短期譲渡所得                      
税率長期譲渡所得                         
居住用財産3,000万特別控除      
収用事業5,000万円特別控除            
軽減税率―居住用財産      
軽減税率―優良住宅地造成                  
課税繰り延べ―居住用・特定             
課税繰り延べ―収用事業                    
中高層耐火建築物建設の為

の買換え特例

                     
譲渡損失繰越控除

―居住用財産の買換え

                     
住宅借入金の特別控除                    
贈与されたものの譲渡                      
相続税の物納                                
離婚に伴う財産分与                      
保証債務履行のための譲渡                      

・・ 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年
税率短期譲渡所得            
税率長期譲渡所得            
居住用財産3,000万特別控除        
収用事業5,000万円特別控除           
軽減税率―居住用財産   ○        
軽減税率―優良住宅地造成          
課税繰り延べ―居住用・特定      
課税繰り延べ―収用事業               
中高層耐火建築物建設の為

の買換え特例

             
譲渡損失繰越控除

―居住用財産の買換え

           
住宅借入金の特別控除              
譲渡所得の定義など          
相続時精算課税

註1.平成9年の住宅借入金特別控除は、「住宅取得促進税制」という略称で出題され

   ました。その後、略称は、平成13年6月までの「住宅ローン控除制度」になり、現在では、

   「住宅ローン減税制度」になっています。(財務省・国税庁の略称)

註2.昔は、譲渡所得への税の内容そのものが出題されていました。回帰すれば、難問に

    なってしまうかもしれません。下の段の緑色のところが出題された問題です。

    (追記。平成17年に出題。)

註3の所は詳しく見なくても構わないと思います。記憶力には限りがあります。

   中高層耐火建築物建設の為の買換え特例▲は、正確には以下の名称です。

   <既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物建築の為の買換え及び交換

    の場合の長期譲渡所得の課税の特例

(2) 譲渡所得の特例の出題形式(問題の基本的なシナリオ)―基本的には、この2つだけ。

 ・重畳適用ができるかを問う問題 (軽減税率が適用されるか問うものが多い)

 ・その特例の内容、要件について問う問題 

<〜について税額を計算せよ、というものは出題されていない>

学習上の問題点

1.基本書を学ぶとき、とっつきにくい理由

・全体像がつかみにくい

・こまごまとしたものに圧倒される

・ほかの章に比べ、説明不足が目立つ

2.過去問を解くときのイライラの原因

問題文のどこを読むか、わからない

 ―ポイントを押さえる (基本的には、シナリオは2つしかありません)

 ―言葉に惑わされないようにしよう

 ―同じものが言葉を変えて出題される場合がある

 ―特例の内容を明確にしておく。混同しないようにする。

  ・三つを区別し、所有期間、内容をしっかり把握

   課税標準の特例・軽減税率・譲渡益課税の繰り延べ・

  ・大雑把な理解で良いところ

   譲渡損失の繰越控除・住宅借入金特別控除

課税の特例

(これ以外にもたくさんの特例があります。しかし、出題されているのはごく一部)

課税標準 × 税率 = 税額

 ここのどこが優遇されているかをよく見ておきましょう。

  原則として 長期譲渡所得 5年超 ・・・税率15%

         短期譲渡所得 5年以内・・・税率30%

  は、その特例の要件、内容など細かく出題された事のないものを示します。

  は、いわば、深入り無用のところです。 出題された場合、一般の受験者には

  対応できません。

  重畳適用の可否はよく出題されるものを○×で示しています。

1.課税標準の特例に当たるもの

イ.特別控除額の特例 

    a居住用財産 3,000万円特別控除 所有期間制限ナシ

       重複適用・・・○居住用財産の軽減税率、×優良住宅地の造成の軽減税率

    b収用事業対象 5,000万円特別控除 所有期間制限ナシ

               3000万円特別控除とは 選択適用なので注意。

       重複適用・・・○居住用財産の軽減税率、×優良住宅地の造成の軽減税率

2.軽減税率 

  ウ.居住用財産 10年超・15or10パーセント(6,000万円で区分)

  エ.優良住宅地の造成 5年超・15or10パーセント(2,000万円で区分)

     収用対象事業・公共団体・一定の開発業者への譲渡に適用。

    平成16年の改正により、「優良造成地の造成の軽減税率」と、以下の

     居住用財産(特定)の買換え特例、

     3,000万円特別控除、収用交換の5,000万円特別控除、

     収用交換等により代替資産等を取得した場合の課税の特例(課税の繰り延べ)

    とは併用不可になった。

3.買い換え・交換の譲渡益課税の繰り延べ

  オ.居住用財産(特定) 所有10年超・10年以上の居住

    3,000万円の特別控除と選択適用

     取得価額≧譲渡収入・・・課税ナシ

     取得価額<譲渡収入…差額相当分に課税

  カ.収用に伴う代替資産の取得のときの課税の繰り延べ   

     5000万円の特別控除と選択適用

     所有期間制限ナシ

     代替資産の取得価額≧補償金・・・課税ナシ

     代替資産の取得価額<補償金…差額相当分に課税

4.譲渡損失の損益通算・繰越控除 平成13年出題(11年、18年)

 キ.居住用財産の買い換え等の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

 ク.特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

5.住宅借入金特別控除 ←これは重要です。

  所得税額から、年末のローン残高×一定比率 を控除する(税金をマケてくれる)。

<従来の制度>

 控除期間 10年間 

 控除率  2,000万円以下のローン残高×1年目〜6年目 1%

       2,000万円以下のローン残高×7年目〜10年目 0.5%

       (1年目〜6年目 年間限度額20万円、
       7年目〜10年目 年間限度額10万円、10年間で最大160万円控除)

<新制度>

 控除期間 15年間 

 控除率  2,000万円以下のローン残高×1年目〜10年目 0.6%

       2,000万円以下のローン残高×11年目〜15年目 0.4%

       (1年目〜10年目 年間限度額12万円、
       11年目〜15年目 年間限度額8万円、15年間で最大160万円控除)

<条文での用語について>

条文では、以下のようになっています。これをご覧になっても、お分かりいただけますように

の課税の特例」という末尾で終わっているものが多く、紛らわしい為、

位置付けをしっかり把握しておくことが大切です。

(1)軽減税率

短期譲渡所得の課税の特例(5年以内)

長期譲渡所得の課税の特例(5年超)

居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例 (10年超)

優良住宅地の造成のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(5年超)

(2) 特別控除

収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除(5,000万円特別控除)

居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円特別控除)

(3) 課税の繰り延べ

特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例

特定の居住用財産の交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例

収用などに伴い代替資産を取得した場合の課税の特例


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