Brush Up! 権利の変動篇
意思表示の過去問アーカイブス 平成17年・問2 意思の不存在・錯誤
AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。この場合、次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(平成17年・問2) |
1.「錯誤が、売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり、法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。」 |
2.「錯誤が、売却の意思表示をなすについての動機に関するものであり、それを当該意思表示の内容としてAがBに対して表示した場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。」 |
3.「錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAに重い過失があるときは、Aは自らその無効を主張することができない。 」 |
4.「錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の意思表示の無効を主張できる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
正答率 | 86.4% |
1.「錯誤が、売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり、法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。」 |
【正解:×】 錯誤が,意思表示の内容の重要な部分に関するものであり,法律行為の要素の錯誤と認められる場合,その意思表示は無効となるので,誤り(民法95条本文)。 |
2.「錯誤が、売却の意思表示をなすについての動機に関するものであり、それを当該意思表示の内容としてAがBに対して表示した場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。」 |
【正解:×】 原則として,錯誤が,意思表示をなす動機に関するものである場合はその意思表示は無効とはならないが,それを当該意思表示の内容として表示したときは,錯誤が成立することがあり,その意思表示は無効となることがあるので誤り(判例)。 |
3.「錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAに重い過失があるときは、Aは自らその無効を主張することができない。 」 |
【正解:○】 錯誤を理由として意思表示が無効となる場合でも,表意者に重大な過失があるときは,表意者は自ら錯誤による無効を主張することができない(民法95条但書)。 |
4.「錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の意思表示の無効を主張できる。」 |
【正解:×】 錯誤による意思表示の無効を主張することができるのは,原則として,保護されるべき表意者のみであり,相手方や第三者は当該意思表示の無効を主張することはできない(判例)ので誤り。 ▼表意者に対する債権を有する第三者がその債権を保全する必要があり,表意者が錯誤を認めているときは,表意者に錯誤による無効を主張する意思がなくても代位行使する前提として錯誤による無効を主張することができる(判例)。 |
●講評 |
意思表示の問題のレベルとしては,本問題はすでに基本的な出題となっている。正答率もほぼ90%になっていることから,絶対に落としてはいけない問題である。 |