Brush Up! 権利の変動篇
賃貸借の過去問アーカイブス 平成18年・問10 転貸借・賃借権の譲渡
AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。 (平成18年・問10) |
1.「AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。」 |
2.「AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。」 |
3.「AがEに対して賃借権の譲渡を行う場合のBの承諾は、Aに対するものでも、Eに対するものでも有効である。」 |
4.「AがBの承諾なく当該建物をFに転貸し、無断転貸を理由にFがBから明渡請求を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の一部又は一部の支払を拒むことができる。」 |
<コメント> |
4肢すべてが判例からの出題であり,受験者の方々はかなり迷ったようです。 肢1,肢2は過去問で出題歴がありましたが,肢3・肢4は初出題であったため,正答率は55%とやや低いものになっています。 転貸・賃借権の譲渡についての出題は頻出ですが,今回の論点を整理すると以下のようになります。 |
●出題論点● |
無断転貸の場合に, ・賃貸人が解除できない場合があるか(肢1), ・転借人が賃貸人から明渡し請求があったとき転借人は賃料の支払を拒否 できるか(肢4) 転貸に賃貸人の承諾がある場合に,原賃貸借が債務不履行により解除された とき,転貸借は終了するか(肢2) 賃借権の譲渡の承諾は 賃借権の譲渡人・譲受人のどちらにするか(肢3), |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
正答率 | 54.6% |
1.「AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。」 |
【正解:○】平成6年・問12・肢1 賃貸人の承諾なく,賃借権の譲渡や転貸が行われた場合,賃借人が第三者に賃貸借契約の目的物の使用収益をさせたときに(註1)契約の解除をすることができます。(民法612条2項) しかし,背信的行為と認めるに足りない事情(註2)がある場合には,信頼関係が破壊されたとはいえないので,解除することはできません(判例)。 (註1) 賃借人が転貸借の契約をしただけでは,賃貸人は解除権を行使すること (註2) 一時的なもの,錯誤によるもの,離婚した夫から妻へ,親から子へな |
●関連過去問 |
AがBから賃借している建物をCに転貸した。 AC間の転貸借がBの承諾を得ていない場合でも,その転貸借がBに対する 背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Bの解除権は発生 しない。 【正解】○ http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/lease/lease-ans9.html |
2.「AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。」 |
【正解:×】平成10年・問6・肢4,類題・平成16年・問13・肢4 ◆債務不履行を理由にした原賃貸借の解除には対抗できない 原賃貸借が賃料不払いにより解除された場合,賃貸人Bが転借人Dに対して,目的物の返還を請求してきたときに,AD間の転貸借契約は終了します(最高裁・平成9.2.25)。 ---●対比 原賃貸借が賃貸人と賃借人の合意により解除されたとき----------- |
●関連過去問 |
1 AはBから建物を賃借し、Bの承諾を得て、当該建物をCに転貸している。 Bが,Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を適法に解除した場合,Cは, AC間の転貸借契約に基づく転借権をBに対抗することができない。 【正解】○ 債務不履行によって原賃貸借〔AB間の賃貸借契約〕が解除になった場合,転借人Cは転借権を原賃貸借の賃貸人に主張することはできない。 http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/rent-ans4.html 2 AはBに対し甲建物を月20万円で賃貸し,Bは,Aの承諾を得た上で,甲建 |
3.「AがEに対して賃借権の譲渡を行う場合のBの承諾は、Aに対するものでも、Eに対するものでも有効である。」 |
【正解:○】初出題 |
4.「AがBの承諾なく当該建物をFに転貸し、無断転貸を理由にFがBから明渡請求を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の一部又は一部の支払を拒むことができる。」 |
【正解:○】初出題 賃貸人に無断で賃借権の譲渡や転貸借があった場合に,賃貸人は,以下の請求ができるとされます(判例)。 本肢のBは、この1) により、転借人のFに明渡請求をしています。 この場合,Fに何ができるかを本肢で問うています。 転借人Fが賃貸人Bから明渡請求を受け,転借人Fが目的物を使用収益できなくなるときは,Fは,転貸人(賃借人)Aに対して,明渡し請求以後の賃料の全部または一部の支払を拒否できます(559条,576条,判例)。 |