Brush Up! 権利の変動篇
不法行為の過去問アーカイブス 平成18年・問11 使用者責任
事業者Aが雇用している従業員Bが行った不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。 (平成18年・問11) |
1.「Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Bには被害者に対する不法行為に基づく損害賠償責任は発生しない。」 |
2.「Bが営業時間中にA所有の自動車を運転して取引先に行く途中に前方不注意で人身事故を発生させても、Aに無断で自動車を運転していた場合、Aに使用者としての損害賠償責任は発生しない。」 |
3.「Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Aが被害者に対して売買代金債権を有していれば、被害者は不法行為に基づく損害賠償債権で売買代金債務を相殺することができる。」 |
4.「Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合、A自身は不法行為を行っていない以上、Aは負担した損害額の2分の1をBに対して求償できる。」 |
<コメント> |
不法行為は17年(717条中心)に続いて,連続出題でした。正解肢は過去問でも頻出のものであったわりには,正答率は意外に低い数値でした。 肢1は使用者側についての不真正連帯債務の過去問はありましたが,被用者側のものはなかったのでマゴついたかもしれません。 肢2は「事業の執行」についての問題で,過去問で内容を確認していれば,正誤に迷う問題ではありません。 肢4は,求償権の問題ですが,信義則上相当と認められる範囲かどうかがポイントで,2分の1とか特に定められていないのですが,2分の1には迷った方がいたようです。(平成14年に細部にわたった求償権の問題がある。) |
●出題論点● |
使用者責任が認められる場合に,被用者は免責されるか(肢1) 不法行為が,被用者の職務範囲に属していれば,使用者は,使用者責任を負 う。使用者と被用者の間の内部事情は関係ない(肢2) 「不法行為に基づく損害賠償請求権」を自働債権として相殺できるか(肢3) 使用者が被用者に求償できるのは,信義則上相当と認められる範囲内(肢4) |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
正答率 | 60.0% |
1.「Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Bには被害者に対する不法行為に基づく損害賠償責任は発生しない。」 |
【正解:×】 民法715条1項は,「被用者が行った不法行為について使用者にも責任がある」というだけであって,使用者責任がある場合は被用者は免責されるということではありません(判例)。 被用者は不法行為について責任を免れることはできないので,本肢は誤りです。 |
2.「Bが営業時間中にA所有の自動車を運転して取引先に行く途中に前方不注意で人身事故を発生させても、Aに無断で自動車を運転していた場合、Aに使用者としての損害賠償責任は発生しない。」 |
【正解:×】 使用者が責任を負うのは,被用者が,その事業の執行について第三者に損害を加えた場合ですが,「事業の執行について」とは,その被用者の行為が外形的に被用者の職務行為の範囲内にあることをいうとされています(判例)。 本肢の人身事故は被用者Bが取引先に行く途中に起きたのですから,使用者Aの事業に関する業務をBがしているときにその事故は起きたことになり,使用者Aには使用者責任が生じます。 自動車を運転していたのが使用者に無断であったとしても,使用者責任は発生するので,本肢は誤りです。 |
●関連過去問 |
Aの被用者Bが,Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為を し,CからAに対し損害賠償の請求がされた。 Bの行為が,Bの職務行為そのものには属しない場合でも,その行為の外形 から判断して,Bの職務の範囲内に属すると認められるとき,Aは,Cに対し て使用者責任を負うことがある。(平成11年・問9・肢4) 【正解】○ http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/fuhou-ans4.html |
3.「Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Aが被害者に対して売買代金債権を有していれば、被害者は不法行為に基づく損害賠償債権で売買代金債務を相殺することができる。」 |
【正解:○】平成4年・問9・肢1,平成7年・問8・肢3,平成16年・問8・肢2,
不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権として相殺※することはできるので, |
●関連過去問 |
不法行為の被害者は,損害賠償債権を自働債権として,加害者に対する金銭返還債 務と相殺することができない。(平成4年・問9・肢1) 【正解】× http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/fuhou-ans2.html |
4.「Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aが使用者としての損害賠償責任を負担した場合、A自身は不法行為を行っていない以上、Aは負担した損害額の2分の1をBに対して求償できる。」 |
【正解:×】平成4年・問9・肢4,平成11年・問9・肢4,平成14年・問11・肢3 使用者が被害者に損害賠償金を支払ったときは,被用者に対して求償すること |
●関連過去問 |
1 Aの被用者Bと,Cの被用者Dが,A及びCの事業の執行につき,共同して Eに対し不法行為をし,A,B,C及びDが,Eに対し損害賠償を負担した。 Aは,Eに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は, 損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において, Bに対し,損害の賠償又は求償の請求をすることができる。 (平成14年・問11・肢3) 【正解】○ http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/fuhou-ans7.html 2 従業者Aが宅地建物取引業者Bの業務を遂行中に,第三者Cに不法行為による 3 Aの被用者Bが,Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為を |