宅建過去問 権利の変動篇
抵当権の過去問アーカイブス 平成19年・問8 根抵当権
Aは、自己所有の甲不動産につき、B信用金庫に対し、極度額を3,000万円、被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し、その旨の登記をした。なお、担保すべき元本の確定期日は定めなかった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。 (平成19年・問8) |
1 元本の確定前に、被担保債権の範囲を変更するには、後順位の抵当権者がいる場合は、その者の承諾を得なければならない。 |
2 元本の確定前に、B信用金庫から、被担保債権の範囲に属する個別債権の譲渡を受けた者は、確定日付のある証書でAに対し債権譲渡通知を行っておけば、その債権について根抵当権を行使できる。 |
3 B信用金庫は、確定した元本が極度額以下であれば、その元本に係る最後の2年分の約定金利については、極度額を超えても、根抵当権を行使できる。 |
4 Aが友人CのためにB信用金庫との間で保証契約を締結し保証債務を負担した場合、B信用金庫のAに対するこの保証債権は、「信用金庫取引による債権」に含まれ、この根抵当権で担保される。 |
<コメント> |
正解肢は初出題ですが,他の3肢は過去問でも出題歴のある基本問題でした。正答率が低かったのは,内容が難しかったからではなく,初出題が○の設定,他の3肢が×の設定であったためと思われます。
根抵当権は苦手意識が強いので,得点調整のために好んで出題されているようです。 |
●出題論点● |
(肢1) 元本の確定前に根抵当権の被担保債権の変更をするのに,後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得る必要はない。
(肢2) 元本の確定前に根抵当権者から被担保債権の範囲に属する個別債権を取得した者は,その債権について根抵当権を行使することはできない(随伴性の否定)。 (肢3) 根抵当権の行使は極度額の範囲内。 (肢4) 根抵当権の被担保債権には,根抵当債務者に対する保証債権も含まれる。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
正答率 | 25.3% |
1 元本の確定前に、被担保債権の範囲を変更するには、後順位の抵当権者がいる場合は、その者の承諾を得なければならない。 |
【正解:×】平成元年・問5・肢2, 元本の確定前に根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができます。被担保債権の変更をするのに,後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得る必要はありません(民法398条の4第1項,第2項)。 ただし,元本の確定前に登記をしなかったときは,被担保債権の変更をしなかったものとみなされます(民法398条の4第3項)。 ⇒ 登記によって変更の効力が生じる。
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2 元本の確定前に、B信用金庫から、被担保債権の範囲に属する個別債権の譲渡を受けた者は、確定日付のある証書でAに対し債権譲渡通知を行っておけば、その債権について根抵当権を行使できる。 |
【正解:×】平成12年・問5・肢4,平成15年・問6・肢3, 元本の確定前に根抵当権者から被担保債権の範囲に属する個別債権を取得した者は,その債権について根抵当権を行使することができません(民法398条の7第1項前段)。 根抵当権が債権に随伴することを認めると,処理が煩雑になりすぎるためです。譲渡された債権は担保のない債権になります。 ▼第三者が根抵当権の被担保債権の範囲に属する個別債権を弁済して,債権者に代位しても,その債権について根抵当権を行使することができません(民法398条の7第1項後段)。 |
3 B信用金庫は、確定した元本が極度額以下であれば、その元本に係る最後の2年分の約定金利については、極度額を超えても、根抵当権を行使できる。 |
【正解:×】昭和50年・肢2,平成8年・問8・肢2,平成15年・問6・肢4, 根抵当権者は,確定した元本,利息その他の定期金,債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として,その根抵当権を行使することができます(民法398条の3第1項)。 元本に係る約定金利は,極度額の範囲内であれば,最後の2年分に限らず,根抵当権を行使できますが,最後の2年分であっても極度額の範囲を超えるならば,根抵当権を行使することはできません。 |
4 Aが友人CのためにB信用金庫との間で保証契約を締結し保証債務を負担した場合、B信用金庫のAに対するこの保証債権は、「信用金庫取引による債権」に含まれ、この根抵当権で担保される。 |
【正解:○】初出題 (主たる債務者) C 判例によれば,被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」として設定された根抵当権の被担保債権には,信用金庫の根抵当債務者に対する保証債権も含まれます(最高裁・平成5.1.19)。 つまり,根抵当権の被担保債権には,根抵当債務者に対する保証債権 (保証契約による債権) も含まれるということです。 |