宅建過去問  権利の変動篇

連帯債務と連帯保証の過去問アーカイブス 平成20年・問6 

債務免除,履行の請求,消滅時効の完成,契約の無効,

(連帯保証人について生じた事由の効力)


AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れる場合と、DからEが1,000万円を借り入れ、Fがその借入金返済債務についてEと連帯して保証する場合とに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。(平成20年・問6)

1 が、に対して債務を免除した場合にはが、に対して債務を免除した場合にはが、それぞれ500万円分の債務を免れる。が、に対して債務を免除した場合にはが、に対して債務を免除した場合にはEが、それぞれ全額の債務を免れる。

2 が、に対して履行を請求した効果はに及び、に対して履行を請求した効果はに及ぶ。が、に対して履行を請求した効果はに及び、に対して履行を請求した効果はに及ぶ。

3 について時効が完成した場合にはが、について時効が完成した場合にはが、それぞれ500万円分の債務を免れる。について時効が完成した場合にはが、について時効が完成した場合にはが、それぞれ全額の債務を免れる。

4 AB間の契約が無効であった場合にはが、AC間の契約が無効であった場合にはが、それぞれ1,000万円の債務を負う。DE間の契約が無効であった場合はが、DF間の契約が無効であった場合はが、それぞれ1,000万円の債務を負う。

<コメント>  
 連帯債務と連帯保証の比較問題は,平成16年・問6に出題歴がありますが,その問題よりも幾分やさしい出題です。

 各肢とも前半の連帯債務についての記述は正しく,後半の連帯保証についての記述の正誤を判定〔各肢とも,厳密には,連帯保証人について生じた事由の効力を判定〕すれば各肢の正誤が決まるからです。

●出題論点●
 (肢1) 債務免除

 (肢2) 履行の請求

 (肢3) 消滅時効の完成

 (肢4) 契約の無効

【正解】2

× × ×

 正答率  68.5%

1 が、に対して債務を免除した場合にはが、に対して債務を免除した場合にはが、それぞれ500万円分の債務を免れる。が、に対して債務を免除した場合にはが、に対して債務を免除した場合にはEが、それぞれ全額の債務を免れる。

【正解:×平成16年・問6・肢2,
◆債務免除

〔連帯債務〕債権者が,連帯債務者の一人にその債務を免除すると,他の連帯債務者は,債務を免除された者の負担部分の額〔債権総額の1/2なので500万円〕についてその債務を免れ,それを差し引いた額〔500万円〕の債務を負うことになります(民法437条)

〔連帯保証〕債権者が,主たる債務者に債務を免除すると,保証債務の附従性(主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅する)により,連帯保証人も債務を免れます(民法446条)。しかし,債権者が連帯保証人の保証債務を免除したからといって,主たる債務者は債務を免れることはできません。

 したがって,前半は正しくても,後半が誤っているので,本肢は誤りです。

連帯債務 連帯保証
 の債務を免除した場合

      (連帯債務者)(負担部分は1/2)
    |   は,の負担部分だけ
 A  ┤   債務を免れる。     
    |        ↑
    |   から債務全額を免除される
    └
  (連帯債務者)
         (負担部分は1/2)

が,の債務を免除した場合

     (主たる債務者)     
     には,何の効力も及ぼさない。
 D      
   \ から保証債務全額の免除
     (連帯保証人)    

 債権者が連帯債務者の一人
 債務の全額を免除した場合,
 の負担部分について
 債務を免れる
(民法437条)
 債権者が連帯保証人の保証債務全額を

 免除しても,主たる債務者の債務は

 消滅しない。

2 が、に対して履行を請求した効果はに及び、に対して履行を請求した効果はに及ぶ。が、に対して履行を請求した効果はに及び、に対して履行を請求した効果はに及ぶ。

【正解:
◆履行請求

〔連帯債務〕 連帯債務では,債権者が,連帯債務者の一人に履行の請求をすれば,他の債務者にもその効力が及び,連帯債務者全員に履行の請求をしたものと扱われます(民法434条)

〔連帯保証〕 債権者が,主たる債務者に履行の請求をすれば,連帯保証人にもその効力が及びます(民法446条)。また,債権者が,連帯保証人に履行の請求をすれば,主たる債務者に履行の請求をすれば,連帯保証人にもその効力が及びます(民法458条,434条)

 したがって,前半・後半とも正しく,本肢は正しい記述です。

3 について時効が完成した場合にはが、について時効が完成した場合にはが、それぞれ500万円分の債務を免れる。について時効が完成した場合にはが、について時効が完成した場合にはが、それぞれ全額の債務を免れる。

【正解:×
◆時効の援用

〔連帯債務〕 連帯債務者の一人に消滅時効が完成すれば,他の連帯債務者は,債務を免除された者の負担部分の額〔債権総額の1/2なので500万円〕についてその債務を免れ,それを差し引いた額〔500万円〕の債務を負うことになります(民法439条)

〔連帯保証〕 主たる債務者について消滅時効が完成すれば,保証債務の附従性(主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅する)により,連帯保証人はその保証債務を免れます(民法446条)。しかし,連帯保証人について消滅時効が完成しても,主たる債務者はその債務を免れることはできません。

 したがって,前半は正しくても,後半が誤っているので,本肢は誤りです。

4 AB間の契約が無効であった場合にはが、AC間の契約が無効であった場合にはが、それぞれ1,000万円の債務を負う。DE間の契約が無効であった場合はが、DF間の契約が無効であった場合はが、それぞれ1,000万円の債務を負う。

【正解:×
◆無効

〔連帯債務〕 連帯債務者の一人について契約が無効であっても,他の連帯債務者はその影響を受けず,当初の契約通りの額1,000万円の債務を負います(民法433条)

〔連帯保証〕 主たる債務者と債権者の契約が無効のときには,保証債務の附従性(主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅する)により,連帯保証契約も無効になります(民法446条)。しかし,連帯保証契約が無効であっても,主たる債務者と債権者の契約は無効にはなりません。 

 したがって,前半は正しくても,後半が誤っているので,本肢は誤りです。


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