宅建過去問  権利の変動篇

相隣関係の過去問アーカイブス  (平成21年・問4)


 相隣関係に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。(平成21年・問4)

1 土地の所有者は、境界において障壁を修繕するために必要であれば、必要な範囲内で隣地の使用を請求することができる。

2 複数の筆の他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。

3 の隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、はその根を切り取ることができる。

4 異なる慣習がある場合を除き、境界線から1m未満の範囲の距離において他人の宅地を見通すことができる窓を設ける者は、目隠しを付けなければならない。

<コメント>  
 相隣関係は,この10年間では,平成11年,13年,16年と三度出題された頻出論点です。また,四肢のすべてに出題歴があります。そのため,正答率はかなり高くなっています。この問題は判例からではなく,条文知識だけで解けるので,取りこぼすことはできません。
●出題論点●
  (肢1)〔条文ソノママ〕土地の所有者は,境界やその付近で障壁・建物を築造・修繕するため必要な範囲内で,隣地の使用を請求することができる(民法209条1項本文)

 (肢2)〔条文ソノママ〕囲繞地を通行する場所及び方法は,通行権のある者にとって必要であり,かつ,囲繞地のために損害の最も少ないものを選ばなければならない(民法211条1項)

 (肢3)〔条文ソノママ〕土地の所有者は,隣地の竹木の根が境界線を越えてきたときは,その根を切り取って処分することができる(民法233条2項)

 (肢4)〔条文ソノママ〕境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。)を設ける者は,目隠しを付けなければならない (民法235条1項)

【正解】

×

 正答率  87.7%

1 土地の所有者は、境界において障壁を修繕するために必要であれば、必要な範囲内で隣地の使用を請求することができる。

【正解:昭和38年,62年,平成11年・問2・肢1,
◆隣地使用権

土地の所有者は,境界やその付近で障壁・建物を築造または修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができます(民法209条1項本文)。 隣家が拒否しても裁判所に請求の申立てをすることができるほどに強力な権利です。

ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできず(民法209条1項但書),また,隣人が損害を受けたときは,隣人は,その償金を請求することができます(民法209条2項)

2 複数の筆の他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。

【正解:×平成13年・問3・肢1,
◆公道に至るための他の土地の通行権 (囲繞地通行権)

 「その土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。」が誤りです。

 袋地(他の土地に囲まれて公道に通じない土地)の所有者には,公道に至るために囲繞地(いにょうち,袋地を囲んでいる他の土地)を通行できる権利※が認められています(民法210条1項)。※必要があれば,通路を開設することもできます (民法211条2項)

 ただし,囲繞地を通行する場所及び方法は,通行権のある者にとって必要であり,かつ,囲繞地のために損害の最も少ないものを選ばなければなりません(民法211条1項)。本肢では,複数の囲繞地に囲まれていますが,袋地の所有者は,そのうちのどれかを,たとえ代償を支払うといっても,自己の意思のみによって通行の場所・方法を勝手に定めることができるのではありません。

この囲繞地通行権は,例えば,囲繞地の所有者が袋地の所有者の通行を妨害する場合,袋地の所有者は袋地の所有権に基づく妨害排除請求もできる権利です。

囲繞地に損害を与えた場合には,償金を支払うことになっています(民法212条)

3 の隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、はその根を切り取ることができる。

【正解:平成11年・問2・肢3,平成16年・問7・肢4,
◆根の切取り

 土地の所有者は,隣地の竹木の根が境界線を越えてきたときは,その根を切り取って処分することができます(民法233条2項)

●まとめ

 隣地の竹木の根が境界線を越えて侵入している場合は、自分で切り取ることができます。(民法233条2項)←平成11年,16年出題

 隣地の竹木の枝が境界線を越えて侵入している場合は、その所有者に切り取るように請求することができます。(民法233条1項)←昭和62年,16年出題 (民法233条1項)

4 異なる慣習がある場合を除き、境界線から1m未満の範囲の距離において他人の宅地を見通すことができる窓を設ける者は、目隠しを付けなければならない。

【正解:平成11年・問2・肢4,
◆境界線付近の建築の制限・目隠し

 境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。)を設ける者は,目隠しを付けなければなりません (民法235条1項)

▼本肢は,以下の民法234条1項との混同を狙って出題されたと思われます。

(境界線付近の建築の制限)
第234条
 建物を築造するには、境界線から50cm以上の距離を保たなければならない。


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