Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記の過去問アーカイブス  保証人の適格と保証書 平成7年・問15

⇒ 法改正により保証人・保証書は廃止されたため,改正対応はできません。


登記義務者の権利に関する登記済証が滅失したときに不動産の登記の申請書に添付すべき保証書又は保証書に署名捺印すべき保証人に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成7年・問15)

1.「登記義務者の配偶者又は四親等内の親族は,保証人になることができない。」

2.「保証人は,当該登記の申請をする登記所において登記を受けたことがある成年者でなければならない。」

3.「所有権以外の権利に関する登記の申請については保証人は1名で足りるが,所有権移転に関する登記の申請については保証人は2名以上でなければならない。」

4.「保証書を申請書に添付して所有権移転の登記の申請があったときは,申請を却下すべき場合を除き,登記前に,登記官から登記義務者に対してその旨の通知がされる。」

【正解】

× × ×

●保証書が事実に反している場合
 不動産登記法44条により申請書に保証書を添付してした登記申請に基づいてされた登記は,保証書の内容が事実に反する場合でも無効ではない

(大審院・昭16.1.20)              

■保証書についての出題 (昭和62年・問16)

◆保証書

 前提 登記済証を滅失・紛失しても,登記所では再発行しません。

●登記済証が滅失したときに必要なもの
 ・保証書 2通

 ・保証人2名の印鑑証明書 各1通
 (作成後3ヵ月以内)

   (保証人が他の登記所で登記していた場合)
 
   ・その登記の謄本 or 抄本

●保証書

 登記義務者の権利に関する登記済証を滅失したときは,申請書に,登記を受けた成年者2名以上の者登記義務者の人違いでないことを保証した書面2通を添付することになっています。(不動産登記法44条)〔登記官には滅失の理由を問いただす義務はないので,滅失の理由は呈示する必要はありません。〕

●印鑑証明書(作成後3ヵ月以内)

 見落としがちですが,保証書には保証人2名の印鑑証明書(作成後3ヵ月以内)も添付することが必要です。

●保証人の受けた登記

仮登記の名義人でも構わない

・登記を受けたことがあれば,権利に関する登記・表示に関する登記のどちらでもよい。(昭和36.4.3民甲692号回答)

・保証した時点で登記名義人になっていなくてもよく,すでに抹消された登記の登記名義人であっても構わない。(明治34.10.8民刑1062号回答)

●他の登記所の謄本または抄本(作成後3ヵ月以内でなくてもよい)

 『登記を受けた成年者2名以上の者』というのは,その登記を申請する登記所で受けたことがなくても構わないのですが,その場合は他の登記所で登記を受けたときの登記簿の謄本または抄本を添付することになっています。その謄本または抄本は,作成後3ヵ月以内でなくても構いません。

●保証人になれる人となれない人

 保証人になれる人  保証人になれない人
 登記権利者or登記義務者の代理人
 登記義務者・登記権利者双方の代理人 
 登記権利者
 (登記義務者と利益の相反する者は
 保証人にはなれない。)

1.「登記義務者の配偶者又は四親等内の親族は,保証人になることができない。」

【正解:×

◆保証人の適格

 権利義務者の親族は保証人になれないという規定はありません。

 保証人はその適格についても押さえておく必要があります。

 登記権利者本人や,登記権利者が未成年であるときの法定代理人抵当権設定登記での債務者は保証人になることはできません。(昭和27.11.26民甲672号通達など)

 また,保証人は自然人(これに対するものを法人という)でなければならず,いくら登記を受けたことがあるといっても会社などの法人は保証人にはなれません

登記を受けたことのある成人であればよいので,成年被後見人,被保佐人,破産者なども保証人になれるとされています。

<関連>

 保証書では,成年者であるかどうかの確認のため,保証人の「生年月日」を記載することになっています(不動産登記法施行細則第46条1項4号)

●類題

1.「法人は,その登記の有無にかかわらず,登記義務者の保証人となることはできない。」

【正解:

 保証書の保証人となる資格を有する者は,成年者であることを要し(第44条),つまり成年者とは自然人(これに対するものを法人という)のことをいいます。

 したがって法人は,法人登記(商業登記という)の有無にかかわらず,保証人となることはできません。

2.「保証人は,当該登記の申請をする登記所において登記を受けたことがある成年者でなければならない。」

【正解:×

◆保証人が登記を受けたことがある登記所

 保証人は当該登記の申請をする登記所で登記を受けたことがなくても構いません。日本全国どの登記所でも,登記を受けたことのある成人ならば,保証人になれます。

 その場合は他の登記所で登記を受けたときの登記簿の謄本または抄本を添付することになっています。その謄本または抄本は,作成後3ヵ月以内でなくても構いません

平成5年の法改正により『当該登記の申請をする登記所以外で』登記を受けたことがある者も保証人になれるようになりました。

●関連問題

1.「保証人は,現に効力を有する登記の登記名義人でなければならない。」(土地家屋調査士・平成5年)

【正解:×

 保証人は,登記を受けたことのある成年者でなければいけませんが(法44条),登記を受けたことがあるというのは,現に効力を有する登記の登記名義人に限られるものではなく,かつて登記名義人であった者も含まれます。 

2.「登記の申請人について確実な知識がないにもかかわらず,人違いでないことを保証した者は,懲役または罰金の刑に処せられる。」(土地家屋調査士・平成3年)

【正解:

 登記の申請人について確実な知識がないにもかかわらず,人違いでないことを保証した者は,1年以下の懲役または50万円以下の罰金の刑に処せられます。(法158条)

3.「表題部に所有者として記載されている者は保証人となることはできない。」(土地家屋調査士・平成12年)

註・当該登記申請にかかる不動産の表題部という意味ではありません。

【正解:×

 保証人は,登記を受けたことのある成年者ですが,登記を受けたことがあるというのは権利に関する登記を受けた者に限らず,表題部に所有者として記載されている者でも保証人になることができます。(昭和36.4.3民甲692号回答)

3.「所有権以外の権利に関する登記の申請については保証人は1名で足りるが,所有権移転に関する登記の申請については保証人は2名以上でなければならない。」

【正解:×

◆保証人は2名以上

 保証人が2名以上という44条の規定は,その登記申請が所有権に関するもの,また,所有権以外の権利に関するもののいずれであっても,変わりはありません。

4.「保証書を申請書に添付して所有権移転の登記の申請があったときは,申請を却下すべき場合を除き,登記前に,登記官から登記義務者に対してその旨の通知がされる。」

【正解:

◆事前通知

 保証書を添付して所有権に関する登記を申請したときは,仮受付がされた後,却下される場合を除いて,登記をする前に登記官から登記義務者に対して登記申請がなされた旨の通知が郵送されます。(法44条の2第1項)

 事前に通知をする理由は,『本当に登記申請をしたのか』,『本当に登記申請をする意思があるのか』確認する意味があります。

 登記義務者が登記所に実際に来ていたとしても,脅迫されて登記所に連れてこられたのかもしれず,登記官には形式的な書類のほかは知る由もないからです。

 通知を受けた登記義務者は,この通知の発送日から3週間以内に,登記申請の間違いない旨の申出を,署名捺印して,郵送するか登記所に持参します。〔申出が本人の署名捺印したものであるならば,登記所に出頭して提出するのは代理人を通してでもよい。〕

 登記申請の間違いない旨の申出がなされないまま申出期間が満了したときは,満了日の翌日をもって,登記申請は却下されます。(法49条11号)

  つまり,登記義務者とは登記されることにより権利が失われる者であり,その者から当該申請に間違いがない旨の申出がないということは,当該申請に同意していないものと推定され,当該申請は却下扱いとなるのです。

●所有権以外の権利について保証書を添付して登記申請したとき
施行細則・第69条の4 〔保証書による登記完了の通知〕

 不動産登記法第44条の場合に於て登記官が所有権に関する登記以外の登記を完了したるときは其旨を登記義務者又は其1人に通知すべし

●関連問題

1.「保証書は,その作成後3ヵ月以内のものでなければならない。」(土地家屋調査士・昭和54年)

【正解:×

 保証書には作成年月日を記載しなければいけませんが(準則46条1項5号)保証書には有効期間の定めがなく,作成後3ヵ月以内のものに限られません

2.「保証書に添付すべき保証人の印鑑証明書は,その作成後3ヵ月以内のものでなくともよい。」(土地家屋調査士・昭和54年)

【正解:×

 保証人の印鑑証明書は,その作成後3ヵ月以内のものとされています。(細則44条,46条3項)


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