Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記法の過去問アーカイブス 昭和53年 改正対応


不動産登記に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和53年)

1.「不動産について登記した権利の順位は,すべて順位番号又は受付番号の前後による。」

2.「権利の変更の登記は,すべて付記登記によることになり,その順位は主登記の順位による。」

3.「買戻の特約の登記は,すべて同時になされる所有権の取得の登記の付記登記としてなされる。」

4.「登記事項証明書の交付は,手数料を納めれば,だれでも請求することができるが,すべて登記所に出頭しなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「不動産について登記した権利の順位は,すべて順位番号又は受付番号の前後による。」

【正解:×

◆登記した権利の順位

 登記した権利の順位は,原則としては,順位番号又は受付番号の前後によりますが,『法律に別段の定めがある』ときは,その前後にはよりません

 例えば,民法337条・338条の規定に従って登記された不動産保存の先取特権・不動産工事の先取特権は,既に抵当権が登記されていても抵当権に優先します。(民法339条)

 したがって『権利の順位は,すべて順位番号又は受付番号の前後による』としている本肢は×です。

【基本】 同一の不動産について登記してある権利の順位は,法律に別段の定めがないときは,その前後によります(不動産登記法・4条1項,登記規則・2条1項)

 登記記録の権利部の同区の登記(甲区と甲区,乙区と乙区)・・・順位番号による

 登記記録の権利部の別区の登記(甲区と乙区)・・・受付番号による。

●権利の順位
 同一の不動産に関して登記した権利の順位は,法律に別段の定めがある場合を除き,登記の前後による(不動産登記法・4条1項)

登記の前後
 登記の前後は,登記記録の同一の区にした登記相互間については順位番号別の区にした登記相互間については受付番号による(登記規則・2条1項)

●電子申請の受付番号
 電子申請については,申請情報等が登記所に到達した時(登記所に申請情報等が到達するのは,登記所の開庁日の午前8時30分から午後5時までに限られる。)に自動的に受付番号が付され,不動産所在事項の記録がされる(通達,法務省民二第457号,平成17.2.25)

●登記の順序
 登記官は,同一の不動産に関し権利に関する登記の申請が2以上あったときは,これらの登記を受付番号の順序に従ってしなければならない(不動産登記法・20条)

●順位番号等 (登記規則・147条)
1 登記官は、権利に関する登記をするときは、権利部の相当区に登記事項を記録した順序を示す番号を記録しなければならない。

2  登記官は、同順位である二以上の権利に関する登記をするときは、順位番号に当該登記を識別するための符号を付さなければならない。

3  令第二条第八号 の順位事項は、順位番号及び前項の符号とする。

●付記登記の順位
 付記登記の順位は主登記の順位による。但し,付記登記間の順位はその前後による。(不動産登記法・4条2項)

●付記登記の順位番号
 付記登記の順位番号を記録するときは、主登記の順位番号に付記何号を付加する方法により記録するものとする(登記規則・148条)

●仮登記の順位
 仮登記に基づいて本登記をした場合の,当該本登記の順位は,当該仮登記の順位による(不動産登記法・106条)

●関連問題

1.「不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が登記されていると,これより先に登記されていた抵当権に対しても優先される。」類・H3-7-3

【正解:

◆先に登記された抵当権に優先する先取特権

 民法337条・338条の規定に従って不動産保存の先取特権不動産工事の先取特権が登記されていると,これより先に登記されていた抵当権に対しても優先されます。(民法339条) 

2.「権利の変更の登記は,すべて付記登記によることになり,その順位は主登記の順位による。」

【正解:×

◆権利の変更登記 = 付記登記 or 主登記

 権利の変更又は更正の登記は,権利部の登記事項の変更・更正を行う登記です。登記上利害関係がある第三者がいるときにはその承諾が必要であり,その承諾を得た上で付記登記ですることになっています。

 このため,権利の変更又は更正の登記は,

・登記上の利害関係のある第三者の有無

・登記上の利害関係のある第三者の承諾を証する当該第三者が作成した情報(またはこれに対抗できる裁判があったことを証する情報)の提供の有無

により,付記登記によるものと主登記によるものがあります(不動産登記法66条,登記令別表25項)。『すべて付記登記による』のではありません。

 利害関係のある第三者がいない  付記登記  不動産登記法66条

 先例 明治33.1.12 民刑39号回答

 利害関係のある第三者がいて

 承諾を証する情報を提供

 付記登記  不動産登記法66条
 利害関係のある第三者がいるが,

 登記申請のときに,添付情報として

 承諾を証する情報を提供していない

 主登記  (不動産登記法66条)

 先例 明治33.4.26 民刑603号回答

 (権利の変更の登記又は更正の登記)
第66条
 権利の変更の登記又は更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者(権利の変更の登記又は更正の登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)の承諾がある場合及び当該第三者がない場合に限り、付記登記によってすることができる。

登記官は,権利の変更の登記または更正の登記をするときは,変更前または更正前の事項を抹消する記号を記録しなければならない(登記規則150条)

3.「買戻の特約の登記は,すべて同時になされる所有権の取得の登記の付記登記としてなされる。」

【正解:

◆買戻しの登記 = 付記登記 

 買戻し特約の登記は,所有権移転登記と同時に申請されると,その二つの登記は同一の受付番号で受理され,買戻し特約の登記は所有権移転登記に付記して登記されます。(登記規則・3条9号)

4.「登記事項証明書の交付は,手数料を納めれば,だれでも請求することができるが,すべて登記所に出頭しなければならない。」

【正解:×

◆閲覧・交付・送付

 登記所に出頭しなくても,誰でも,手数料のほか送付に要する費用を納付して

 登記事項証明書地図等(地図・建物所在図・地図に準じる図面)登記簿の附属書類政令で定める図面土地所在図等)の全部又は一部の写しの交付を請求することもできる(登記規則197条6項,200条3項,201条3項)ので×です。

閲覧

 誰でも,手数料を納付して,

 地図等(地図・建物所在図・地図に準じる図面)登記簿の附属書類(政令で定める図面(土地所在図等)以外のものは請求人が利害の関係ある部分に限る)閲覧を請求することができます(不動産登記法120条2項,121条2項)

交付

 登記事項証明書地図等(地図・建物所在図・地図に準じる図面)登記簿の附属書類政令で定める図面土地所在図等)の全部又は一部の写しの交付を請求することができます(不動産登記法119条1項,120条1項,121条1項)

   地図等 

 登記簿の附属書類中の
 政令で定める図面
 (土地所在図等と称す)

登記簿の附属書類中の
 
土地所在図等以外のもの

 閲覧    ○ 利害の関係ある部分に限る
 写しの

 交付

  全部若くは一部  × 
 写しの

 送付

  全部若くは一部  × 

権利の登記のトップに戻る

(不動産登記法の) 過去問インデックスに戻る (不動産登記法の) 年度別の過去問に戻る

不動産登記法のトップに戻る

Brush Up! 権利の変動に戻る