宅建過去問 法令上の制限
土地区画整理法の過去問アーカイブス 平成22年・問21
土地区画整理法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(平成22年・問21) |
1 施行地区の土地についての土地区画整理事業は、都市計画事業として施行されることから、これを土地収用法第3条各号の一に規定する事業に該当するものとみなし、同法の規定を適用する。 |
2 宅地について所有権を有する者は、1人で、又は数人共同して、当該権利の目的である宅地及び一定の区域の宅地以外の土地について土地区画整理事業を施行することができる。 |
3 宅地について所有権を有する者が設立する土地区画整理組合は、当該権利の目的である宅地を含む一定の区域の土地について土地区画整理事業を施行することができる。 |
4 国土交通大臣は、施行区域の土地について、国の利害に重大な関係がある土地区画整理事業で特別の事情により急施を要すると認められるもののうち、国土交通大臣が施行する公共施設に関する工事と併せて施行することが必要であると認められるものについては自ら施行することができる。 |
<コメント> |
正解肢は初出題で,ほとんどの受験者には寝耳に水でした。しかし,そのほかの三肢はすべて基本書でなじみのある基本事項【ほぼ条文ソノママ】です。宅建受験者は条文を見ないと言われているので,出題者からの警告的な出題と見てよいでしょう。このような問題設定は,正しい肢の作問方法として,宅建試験では,定着した感があります。実際,本問の正答率は,かなり低いほうなので,出題者側としては,このような出題法に味をしめているようにも思われます。
正解肢そのものは未知でも,それ以外の肢が正しいことがわかれば,たやすく正解肢を導くことができるので,その意味では難問ではありません。 要するに,肢1は目くらましの問題です。このようなトラップにヒッカカって冷静さを失ってはいけません。 |
●出題論点● |
(肢1) 土地区画整理事業は,すべて都市計画事業として施行されるのではなく,またすべてが土地収用法3条の事業に該当するわけではない。
(肢2) 個人施行 条文の一部 (肢3) 組合施行 条文ソノママ (肢4) 国土交通大臣の施行 条文の抜書き |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
正答率 | 33.0% |
1 施行地区の土地についての土地区画整理事業は、都市計画事業として施行されることから、これを土地収用法第3条各号の一に規定する事業に該当するものとみなし、同法の規定を適用する。 |
【正解:×】初出題 ◆土地収用法3条の事業 本肢にはマチガイが以下の二つあるので,誤りです。それぞれ,一部は該当しても,土地区画整理事業のすべてでは成り立たないものだからです。 1) 『土地区画整理事業は、都市計画事業として施行される』→すべてではない ⇒ 土地区画整理事業は、そのすべてが都市計画事業として行われるのではなく,都市計画事業として施行されるものとそうでないもの〔都市計画事業としてではなく施行されるもの〕があります。→参考・平成12年・問21・肢1, 都市計画事業として行われるのは,都市計画で定められ,市街地開発事業の土地区画整理事業として施行されるものです(都市計画法12条1項1号,2項)。← 施行者は,国土交通大臣,都道府県,市町村,都市再生機構,地方住宅供給公社とは限らない。個人,土地区画整理組合,区画整理会社の場合もある。 <施行区域の土地についての土地区画整理事業は、都市計画事業として施行される>ならば正しいのですが(土地区画整理法3条の4第1項,2条8項)。 2) 『土地区画整理事業を土地収用法第3条各号の一に規定する事業に該当するものとみなし、同法の規定を適用する。』→すべてではない(土地区画整理法79条1項) ⇒ 土地収用法第3条には,土地を収用または使用することができる事業が列挙されていますが,そのなかに土地区画整理事業は入っていません。これには以下のような事情があります(実質的には都市計画法の問題なので,本肢は反則問題です。)。 都市計画法69条では,『都市計画事業については、これを土地収用法第3条 各号の一に規定する事業に該当するものとみなし、同法 の規定を適用する。 』となっているので, 施行者が公的主体の都市計画事業として施行される土地区画整理事業は,土地収用法の対象となる事業として適用されますが(土地区画整理法79条1項), 都市計画事業として施行されるのではない土地区画整理事業は,土地収用法の対象となる事業にはなりません。 |
●土地区画整理法79条 |
(土地の使用等) 第79条 第三条第四項若しくは第五項、第三条の二又は第三条の三の規定による施行者※は、移転し、又は除却しなければならない建築物に居住する者を一時的に収容するために必要な施設、公共施設に関する工事の施行のために必要な材料置場等の施設その他土地区画整理事業の施行のために欠くことのできない施設を設置するため必要がある場合においては、土地収用法 で定めるところに従い、土地を使用することができる。 ※都道府県,市町村,国土交通大臣,独立行政法人都市再生機構,地方住宅供給公社 2 前項の規定により施行地区内の土地を使用する場合においては、土地収用法第二十八条の三及び第百四十二条の規定は適用せず、同法第八十九条第三項中「第二十八条の三第一項」とあるのは、「土地区画整理法第七十六条第一項」とする。 |
2 宅地について所有権を有する者は、1人で、又は数人共同して、当該権利の目的である宅地及び一定の区域の宅地以外の土地について土地区画整理事業を施行することができる。 |
【正解:○】 ◆個人施行 本肢は条文の一部を抜書きしたものです。 1) 「宅地について所有権・借地権を有する者」,または,2) 「宅地について所有権・借地権を有する者の同意を得た者」は,一人で,または数人共同して,当該権利の目的である宅地について,またはその宅地及び一定の区域の宅地以外の土地について土地区画整理事業を施行することができる(土地区画整理法3条1項)。 ▼本肢は,「当該権利の目的である宅地及び一定の区域の宅地以外の土地について」で幻惑された受験者が多かったようです。一度条文を見ておけば,自信を持って正しい肢だと判断できたはずなのですが。 |
3 宅地について所有権を有する者が設立する土地区画整理組合は、当該権利の目的である宅地を含む一定の区域の土地について土地区画整理事業を施行することができる。 |
【正解:○】平成19年・問24・肢3と同文 ◆組合施行 本肢は条文ソノママです。 宅地について所有権又は借地権を有する者が設立する土地区画整理組合は,当該権利の目的である宅地を含む一定の区域の土地について土地区画整理事業を施行することができる(土地区画整理法3条2項)。 |
4 国土交通大臣は、施行区域の土地について、国の利害に重大な関係がある土地区画整理事業で特別の事情により急施を要すると認められるもののうち、国土交通大臣が施行する公共施設に関する工事と併せて施行することが必要であると認められるものについては自ら施行することができる。 |
【正解:○】 ◆国土交通大臣の施行 本肢は条文の一部を抜書きしたものです。 国土交通大臣は,施行区域の土地について, 1) 国の利害に重大な関係がある土地区画整理事業で災害の発生その他特別の事情により急施を要すると認められるもののうち,国土交通大臣が施行する公共施設に関する工事と併せて施行することが必要であると認められるもの 2) 都道府県・市町村が施行することが著しく困難であったり,不適当であると認められるもの このどちらかに該当する場合について,自ら施行することができます。 1) 2) 以外のその他のものについては都道府県又は市町村に施行すべきことを指示することができます(土地区画整理法3条5項)。 |
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