宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成2年・問40 

瑕疵担保責任の特約の制限・重要事項の説明(手付金等保全措置)・
損害賠償額の予定等の制限・
手付金の額の制限


宅地建物取引業者は,自ら売主として工事完了前のマンションをに4,000万円で売却する契約を締結した。この場合において,次の記述のうち,宅地建物取引業法に違反するものはどれか。(平成2年・問40)

1.「は,宅地建物取引業者であると,瑕疵担保責任について,当該マンションの引渡しの日から1年とする特約を結んだ。」

2.「は,宅地建物取引業者でないに,宅地建物取引業法第41条に規定する手付金等の保全措置の概要について,同法第35条に規定する重要事項として説明したが,同法第37条に規定する書面には記載しなかった。」

3.「は,宅地建物取引業者であると,売買契約において損害賠償額の予定の定めをしなかったが,が債務を履行しなかったので,3,000万円を損害賠償金として受領した」

4.「は,宅地建物取引業者でないから,手付金として1,000万円を受領し,その際保険事業者と保証保険契約を締結して,当該保険証券をに交付した」

【正解】

違反しない 違反しない 違反しない 違反する

1.「は,宅地建物取引業者であると,瑕疵担保責任について,当該マンションの引渡しの日から1年とする特約を結んだ。」

【正解:違反しない

◆瑕疵担保責任の特約の制限−宅建業者間の取引には適用されない

 宅建業者は,自ら売主として,買主が宅建業者ではない者との売買契約を締結する際に,瑕疵担保責任の期間を少なくとも<引渡しより2年以上>としなければなりませんが(宅建業法40条),自ら売主の8種制限の規定は宅建業者相互間の取引には適用されないので(宅建業法78条2項),本肢は宅建業法に違反しません。

 KEY 

 瑕疵担保責任の特約の制限 〔自ら売主の8種制限〕

宅建業者間の取引には適用されない。
〔買主が宅建業者のときには適用されない〕

2.「は,宅地建物取引業者でないに,宅地建物取引業法第41条に規定する手付金等の保全措置の概要について,同法第35条に規定する重要事項として説明したが,同法第37条に規定する書面には記載しなかった。」

【正解:違反しない

◆手付金等の保全措置の概要

 手付金等の保全措置の概要は,35条に規定する重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項9号)が,37条書面の記載事項にはないので,本肢は宅建業法に違反しません。

35条に規定する重要事項と37条に規定する書面の記載事項を区別しておきましょう。 

 −  35条書面  37条書面
 手付金等の保全措置  記載する  記載しない

供託所等に関する説明も,契約が成立するまでに説明しなければなりません。

支払金または預かり金の保全措置等の有無も,重要事項で説明しなければなりません。(宅建業法35条1項10号,施行規則16条の3)。これについても,37条書面の記載事項にはなっていません。

 支払金又は預り金(宅建業者の相手方等からその取引の対象となる宅地又は建物に関し受領する代金,交換差金,借賃,権利金,敷金などの金銭で国土交通省令で定めるもの。)を受領しようとする場合に,保証協会の一般保証業務(宅建業法第64条の3第2項)の規定による保証の措置その他国土交通省令で定める保全措置を講ずるかどうか,及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要

 ⇒ 「受領する額が50万円未満のもの」,「手付金等」,「売主・交換の当事者である宅建業者が登記以後に受領するもの」,「報酬」については,支払金・預り金の保全措置等を講じるかどうかやその概要を重要事項として説明する必要はありません。

3.「は,宅地建物取引業者であると,売買契約において損害賠償額の予定の定めをしなかったが,が債務を履行しなかったので,3,000万円を損害賠償金として受領した」

【正解:違反しない

◆損害賠償額の予定等の制限は,宅建業者間の取引には適用されない

 本肢については2つの面で考えられます。

  まず,第一に,宅建業者は,自ら売主として,買主が宅建業者ではない者との売買契約を締結する際に,債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の合計額が代金の20%を超える定めをすることはできず,定めたとしても代金の20%を超える部分について無効になりますが(宅建業法38条),自ら売主の8種制限の規定は宅建業者相互間の取引には適用されません(宅建業法78条2項)

 また,宅建業者は,自ら売主として,買主が宅建業者ではない者との売買契約を締結する際に,損害賠償の予定額を定めなかった場合は,実際に生じた損害額を証明すれば,代金の20%を超える額を請求することができます。

 本肢では宅建業者間の取引なので,自ら売主の8種制限は適用されないということで,宅建業法には違反しないという道筋で考えていいと思います。

 KEY 

 損害賠償額の予定等の制限 〔自ら売主の8種制限〕

宅建業者間の取引には適用されない。
〔買主が宅建業者のときには適用されない〕 

4.「は,宅地建物取引業者でないから,手付金として1,000万円を受領し,その際保険事業者と保証保険契約を締結して,当該保険証券をに交付した」

【正解:違反する

◆手付の額の制限

●未完成物件での手付金等保全措置
 未完成物件での手付金等保全措置には,<銀行等との保証委託契約によるもの〔連帯保証〕>と<保険事業者との保証保険契約によるもの>との2種類あります。

 <保険事業者との保証保険契約>による場合は,保険証券またはこれに代わるべき書面を買主に交付することになっています(宅建業法41条1項)

 宅建業者は,自ら売主として,買主が宅建業者ではない者との売買契約を締結して,手付金を受領しようとするときに,手付金等保全措置を講じたとしても,〔完成物件・未完成物件のどちらであっても〕代金の20%を超える額の手附を受領することはできません(宅建業法39条1項)

 本肢での手付金1,000万円は代金4,000万円の25%に該当するので,自ら売主の8種制限の規定は宅建業者相互間の取引には適用されないので(宅建業法78条2項)宅建業法に違反します。

 KEY 

自ら売主制限

手付金等保全措置を講じたとしても
代金の20%を超える額の手附を受領することはできない。


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