宅建業法 実戦篇
重要事項の説明の過去問アーカイブス 平成2年・問45 区分建物の売買
区分所有建物 (建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の目的である建物をいう。) の売買に際しての,宅地建物取引業法第35条の規定に基づく重要事項の説明に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成2年・問45) |
1.「当該建物の管理が委託されているときは,その委託されている管理の内容を説明すれば足り,受託者の氏名及び住所を説明する必要はない。」 |
2.「通常の管理費用の額については,区分所有者が月々負担する経常的経費を説明すれば足り,計画的修繕積立金等については,規約等に定めがなく,その案も定まっていないときは,その説明の必要はない。」 |
3.「共用部分に関する規約の定めについては,その定めがまだ案であるときは,その案を説明すれば足り,規約の定めを待つ必要はない。」 |
4.「建物の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約の定めがあるときは,その規約の内容を説明すれば足り,使用者の氏名及び住所を説明する必要はない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
●本問題での「区分所有建物」について |
宅建業法上,「区分所有建物」という用語はなく,本問題での区分所有建物に該当するものは宅建業法では<区分所有権の目的であるもの>という文言になっています。
他の法律で見ると,<区分所有権の目的であるもの>は,不動産登記法上では,<区分建物>という用語が用いられています(不動産登記法2条22号)。 また,法律用語としての<区分所有建物>は,『被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法』(平成7年3月24日法律第43号)にあり,<専有部分※が属する一棟の建物>と定義されています(同法2条1項)。 ※区分所有法では,<「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。>となっています(区分所有法2条3項)。 出題当時は,『被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法』(平成7年1月17日の阪神・淡路大震災後に制定)は制定されていなかったため,用語としての区分所有建物には注意が必要です。 |
⇒ 宅建業法での条文確認は,こちらをご覧ください。
1.「当該建物の管理が委託されているときは,その委託されている管理の内容を説明すれば足り,受託者の氏名及び住所を説明する必要はない。」 |
【正解:×】 ◆受託者の氏名・住所 マンションの一棟の建物及び敷地の管理が委託されているときは,受託者の氏名(法人では,商号または名称),及び住所(法人では,その主たる事務所の所在地)について説明しなければなりません(宅建業法35条1項6号,施行規則16条の2第7号)。 また,「委託されている管理の内容」については,35条の重要事項で説明するべきものとして規定されていません。 したがって,本肢は誤りです。以下のようにすれば正しい記述になります。
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●国土交通省・宅地建物取引業法の解釈と考え方・第35条第1項第6号関係 |
8 管理が委託されている場合について(規則第16条の2第8号関係) 規則第16条の2第8号においては、管理の委託を受けている者の氏名及び住所を説明すべき事項としているが、管理を受託している者が、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)」第44条の登録を受けている者である場合には、重要事項説明書に氏名とあわせてその者の登録番号を記載し、その旨説明することとする。 また、管理の委託先のほか、管理委託契約の主たる内容もあわせて説明することが望ましい。 |
2.「通常の管理費用の額については,区分所有者が月々負担する経常的経費を説明すれば足り,計画的修繕積立金等については,規約等に定めがなく,その案も定まっていないときは,その説明の必要はない。」 |
【正解:○】 ◆管理費用,修繕積立金 マンションの購入後に負担しなければならない,管理費用や修繕積立金については,説明しなければなりません(宅建業法35条1項6号,施行規則16条の2第6号,第7号)。通常はローンも抱えることになるので,購入しようとする人は知っておかないと困るからです。 ただし,本肢の場合,規約等に定めがなく,その案 (通常は分譲・販売会社などが仮の案として購入者に提示する) も定まっていないので,説明のしようがありません。(このような場合は重要事項として、規約・案ともなければないでその旨を説明する必要があると思われますが,出題当時は○の設定でした。今後,全く同じ文面の選択肢として出題されることはないと思われます。) なお,条文としては以下の表現になっています。 <当該建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額>, <当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積み立てを行う旨の規約の定めがあるときは,その内容及びすでに積み立てられている額>(規約に類するものや案も含む)
▼<維持修繕の実施状況が記録されているときはその内容>も重要事項として説明することになっています(施行規則16条の2第9号)。 |
●国土交通省・宅地建物取引業法の解釈と考え方・第35条第1項第6号関係 |
6 修繕積立金等について(規則第16条の2第6号関係) 規則第16条の2第6号は、いわゆる大規模修繕積立金、計画修繕積立金等の定めに関するものであり、一般の管理費でまかなわれる通常の維持修繕はその対象とはされないこととする。 また、当該区分所有建物に関し修繕積立金等についての滞納があるときはその額を告げることとする。 なお、この積立て額は時間の経緯とともに変動するので、できる限り直近の数値(直前の決算期における額等)を時点を明示して記載することとする。 7 管理費用について(規則第16条の2第7号関係) 「通常の管理費用」とは、共用部分に係る共益費等に充当するため区分所有者が月々負担する経常的経費をいい、規則第16条の2第6号の修繕積立金等に充当される経費は含まれないものとする。 また、管理費用についての滞納があればその額を告げることとする。 なお、この「管理費用の額」も人件費、諸物価等の変動に伴い変動するものと考えられるので、できる限り直近の数値を時点を明示して記載することとする。 |
3.「共用部分に関する規約の定めについては,その定めがまだ案であるときは,その案を説明すれば足り,規約の定めを待つ必要はない。」 |
【正解:○】 ◆共用部分に関する規約の定め ⇒ 案の場合も説明する マンションを購入しようとする人にとって,共用部分や専有部分に制限がある場合は知っておく必要があります。制限によっては,購入する意味がない場合もあるからです。⇒ ペットの禁止や住居としての利用に限るとか,後でトラブルの元になるのを防ぐ意味があります。 このため,共用部分に関する規約の定めや専有部分の用途や利用についての規約による制限があるときには,その案である場合も,重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項6号,施行規則16条の2第2号,第3号)。
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●国土交通省・宅地建物取引業法の解釈と考え方・第35条第1項第6号関係 |
2 共用部分に関する規約の定めについて(規則第16条の2第2号関係) 「共用部分に関する規約の定め」には、いわゆる規約共用部分に関する規約の定めのほか、いわゆる法定共用部分であっても規約で確認的に共用部分とする旨の定めがあるときにはその旨を含むものである。 かっこ書で「その案を含む」としたのは、新規分譲等の場合には、買主に提示されるものが規約の案であることを考慮したものである。 共用部分に関する規約が長文にわたる場合においては、その要点を記載すれば足りるものとする。 |
4.「建物の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約の定めがあるときは,その規約の内容を説明すれば足り,使用者の氏名及び住所を説明する必要はない。」 |
【正解:○】 ◆専用使用権 当該一棟の建物または敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約の定めがあるときは,規約に類するものや案である場合でも,重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項6号,施行規則16条の2第4号)。 ▼通常の管理費用や計画的な維持修繕の費用の負担を特定の者のみに減免する旨の規約の定め〔規約に類するものや案も含む。〕も,重要事項として説明しなければなりません(施行規則16条の2第5号)。
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●国土交通省・宅地建物取引業法の解釈と考え方・第35条第1項第6号関係 |
4 専用使用権について(規則第16条の2第4号関係) 規則第16条の2第4号は、いわゆる専用使用権の設定がなされているものに関するものであり、通常、専用庭、バルコニー等に設定されるものであるが、これらについては、その項目を記載するとともに専用使用料を徴収している場合にあってはその旨及びその帰属先を記載することとする。 駐車場については特に紛争が多発していることにかんがみ、その「内容」としては、使用し得る者の範囲、使用料の有無、使用料を徴収している場合にあってはその帰属先等を記載することとする。 |