宅建業法 実戦篇
クーリングオフの過去問アーカイブス 平成3年・問46
宅地建物取引業法第37条の2に規定する事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成3年・問46) |
1.「売買契約が、売主である宅地建物取引業者の事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設を有するものにおいて締結された場合,専任の取引主任者がそのとき不在であっても,買主は,当該売買契約を解除することができない。」 |
2.「売買契約が,売主である宅地建物取引業者が行う一団の建物の分譲のためのモデルルームで締結された場合,当該モデルルームについて宅地建物取引業法第50条第2項の届出がされていないときでも,買主は,当該売買契約を解除することができない。」 |
3.「買受けの申込みが,売主である宅地建物取引業者が行う一団の宅地の分譲のためのテント張りの案内所で行われ,売買契約が,その2日後に当該宅地建物取引業者の事務所で締結された場合,買主は,当該申込みの撤回等をすることができない。」 |
4.「買受けの申込みが,売主である宅地建物取引業者から媒介の依頼を受けた他の宅地建物取引業者の事務所で行われた場合,買主は,当該申込みの撤回をすることができない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | × | ○ |
●問題を解く前提●
宅建業者が,<申込みの撤回等を行うことができる旨及びその方法について,書面を交付して,告げていない場合>は,申込者等は,クーリングオフできる期間の起算点が始まっていないので,いつでもクーリングオフができますが,本問題では,その説明はされているものとして考えないと正誤を判断できません。 また,履行関係が終了した場合〔申込者等が引渡しを受け,かつ,代金の全部を支払った〕,クーリングオフはできませんが,本問題では,それについても記述がないことから,引渡し,かつ,代金全部の支払はないものとして考えなければなりません。 |
●買受の申込と契約締結 |
買受の申込をした場所と契約の締結をした場所が異なっている場合は,<買受の申込をした場所>で,クーリングオフの適用があるかないか判断します。(⇒ 買受の申込をしたのが事務所等以外であれば,クーリングオフできる。)
買受の申込場所について問題文で特に指定がない場合は,契約の締結場所でクーリングできるかどうか判断します。 |
●買受の申込をした場所と契約の締結をした場所が異なっている場合
契約の締結場所=事務所等 | 契約の締結場所=事務所等以外 | |
買受の申込場所=事務所等 | クーリングオフできない | クーリングオフできない |
買受の申込場所=事務所等以外 | クーリングオフできる | クーリングオフできる |
●クーリングオフをすることができない買受けの申込・契約の締結の場所−事務所等 | ||||
・事務所 (自ら売主の宅建業者の事務所,他の業者から依頼を受けて媒介・代理する業者の事務所) (宅建業法・37条の2・第1項)
・国土交通省令で定める場所(1) 事務所以外の以下の場所で専任の取引主任者を設置しなければならない場所(宅建業法施行規則・16条の5・1号)
・国土交通省令で定める場所(2) 宅建業者の相手方が自宅又は勤務する場所において売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合は,その相手方の自宅又は勤務する場所(宅建業法施行規則・16条の5・2号) |
1.「売買契約が、売主である宅地建物取引業者の事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設を有するものにおいて締結された場合,専任の取引主任者がそのとき不在であっても,買主は,当該売買契約を解除することができない。」 |
【正解:○】 ◆事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設を有するもの クーリングオフができない契約締結場所〔事務所等〕には,<事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設を有するもので専任の取引主任者の設置義務のあるもの>〔事務所と同規模の物的施設を有してはいるが,契約締結権限を有する者が置かれていないものをいう。出張所など〕も含まれているので,そこで売買契約が締結されると,買主はクーリングオフすることはできなくなります。 契約締結時に専任の取引主任者が不在であっても,このことに変わりはありません。 本肢で問題なのは,契約を締結した場所に専任の取引主任者の設置義務があるかどうかであって,契約締結時にたまたま専任の取引主任者が不在だからといって,クーリングオフの規定が適用されなくなるというものではないからです。 ▼本肢では,<買い受けの申込が事務所等以外で行われたときは,契約の締結が事務所等で行われても,クーリングオフできるのではないか>と疑問を感じると思いますが,問題文には買い受けの申込については記述がないので,買受の申込については考えず,契約の締結のみで考えます。 |
2.「売買契約が,売主である宅地建物取引業者が行う一団の建物の分譲のためのモデルルームで締結された場合,当該モデルルームについて宅地建物取引業法第50条第2項の届出がされていないときでも,買主は,当該売買契約を解除することができない。」 |
【正解:○】 ◆モデルルーム クーリングオフができない契約締結場所〔事務所等〕には,<一団の宅地建物の分譲を案内所を設置して行う場合の案内所 (専任の取引主任者の設置義務がある。土地に定着している建物内にある場合に限る。)>も含まれています。本肢では,モデルルームであり,土地に定着しているものと考えられるので,そこで売買契約が締結されると,買主はクーリングオフすることはできなくなります。 そのモデルルームについて宅建業法第50条第2項の届出がされていないときでも,このことに変わりはないので,本肢は正しい記述です。 ▼本肢では,<買い受けの申込が事務所等以外で行われたときは,契約の締結が事務所等で行われても,クーリングオフできるのではないか>と疑問を感じると思いますが,問題文には買い受けの申込については記述がないので,買受の申込については考えず,契約の締結のみで考えます。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 (国土交通省) |
●1 適用除外となる場所について クーリング・オフ制度の適用のない場所は、原則として、以下の(1)及び(2)に掲げる、専任の取引主任者を置くべき場所に限定されている。また、クーリング・オフ制度の適用の有無については、原則として、その場所が専任の取引主任者を設置しなければならない場所であるか否かにより区別されるものであり、実際に専任の取引主任者がいるか否か、その旨の標識を掲げているか否か(法第50条第1項)、その旨の届出がなされているか否か(法第50条第2項)などによって区別されるものではない。なお、クーリング・オフ制度の適用がある場所において、その旨の標識が掲げられていない場合等は、それぞれ該当する各条項の違反となる。 ●第1号ロに規定する場所について 「案内所」とは、いわゆる駅前案内所、申込受付場所等をも含むものであり、継続的に業務を行うことを予定しているものではないが、一定期間にわたって宅地建物の取引に係る業務を行うことが予定されているような施設を指すものである。なお、本号ロにおいてはクーリング・オフ制度の適用が除外される案内所を「土地に定着する建物内に設けられるもの」に限定しており、別荘地等の販売におけるテント張り、仮設小屋等の一時的かつ移動容易な施設はこれには該当しないものとなる。しかしながら、マンション分譲の場合のモデルルームあるいは戸建分譲の場合のモデルハウス等における販売活動は、通常適正に行われる営業活動であると考えられるので、本号ロに規定する「案内所」と解して差し支えないこととする。 |
3.「買受けの申込みが,売主である宅地建物取引業者が行う一団の宅地の分譲のためのテント張りの案内所で行われ,売買契約が,その2日後に当該宅地建物取引業者の事務所で締結された場合,買主は,当該申込みの撤回等をすることができない。」 |
【正解:×】 ◆テント張りの案内所 買受の申込をした場所と契約の締結をした場所が異なっている場合は,<買受の申込をした場所>で,クーリングオフの適用があるかないか判断するので,買受の申込をしたのが事務所等以外であれば,クーリングオフできます。 テント張りの案内所は,土地に定着していないものと考えられるので,クーリングオフができない買受けの申込場所〔事務所等〕には,含まれません。 したがって,本肢の場合はクーリングオフできるので,本肢は誤りです。 |
4.「買受けの申込みが,売主である宅地建物取引業者から媒介の依頼を受けた他の宅地建物取引業者の事務所で行われた場合,買主は,当該申込みの撤回をすることができない。」 |
【正解:○】 ◆買受けの申込場所が他の宅建業者の事務所のとき 買受けの申込場所が事務所等であれば,契約の締結場所が「事務所等」または「事務所等以外」のどちらであっても,クーリングオフをすることはできません。 クーリングオフができない契約締結場所〔事務所等〕には,<自ら売主の宅建業者から媒介依頼を受けた他の宅建業者の事務所 (専任の取引主任者の設置義務がある)>も含まれています。 したがって,本肢では,買主はクーリングオフすることはできません。 |