宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成3年・問49 手付金等保全措置
宅地建物取引業者Aは,土地付建物 (価格1億5,000万円) を,建築工事の完了前に自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bに販売し,申込証拠金30万円を受領した後,売買契約を締結し,その際手付金として申込証拠金を充当するほか別に2,000万円を受領した。契約によれば,中間金6,000万円を1月後に、残代金6,970万円を所有権移転登記完了後にそれぞれ支払うこととされている。この場合,宅地建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成3年・問49) |
1.「Aは,手付金の受領後1週間以内に,宅地建物取引業法に定める手付金等保全措置 (以下この問において「手付金等保全措置」という。) を講じなければならない。」 |
2.「Aが契約締結時に手付金等保全措置を講じなければならない金額は,2,000万円である。」 |
3.「Bは,Aが手付金等保全措置を講じた後は,手付金を放棄して契約を解除することができない。」 |
4.「Aは,残代金の受領については,手付金等保全措置を講じる必要はない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
●問題文の読解 |
申込証拠金 契約締結 中間金 所有権 残代金 ―●―――――●―――――――●――――――●―――――●――― ・自ら売主 ・建築工事の完了前の物件 土地付建物 (価格1億5,000万円) ・受領した金額及び受領しようとする金額が代金の5%〔750万円〕を超える場合は, |
1.「Aは,手付金の受領後1週間以内に,宅地建物取引業法に定める手付金等保全措置 (以下この問において「手付金等保全措置」という。) を講じなければならない。」 |
【正解:×】 ◆手付金等保全措置は,代金の5%超または1,000万円超を受領する前に講じる
宅建業者Aが手付金として受領することになるのは,申込証拠金30万円を手付金に充当するので,2,030万です。 2,030万は代金の5%超なので,<申込証拠金を手付金として充当し,そのほか2,000万円を受領>するまでに,手付金等の保全措置を講じる必要があります。
▼申込証拠金は売買契約締結前に支払われるものであるため,手付金等の保全措置の対象にはなりませんが,手付金や内金に充当される時点で保全措置の対象となります。 |
●申込証拠金 |
申込証拠金とは,売買契約を締結する前に,買主が購入の意思表示をするために支払うものであり,通常は,申込後に契約が締結されれば,代金の一部に充当され,契約締結にならければ返還される性質だと解される。〔申込証拠金の領収書には,通例はその旨の但書が明記されている。明記されていない場合,契約が成立しないときには返還されないことがある。〕 |
2.「Aが契約締結時に手付金等保全措置を講じなければならない金額は,2,000万円である。」 |
【正解:×】 ◆手付金等保全措置を講じる金額 宅建業者Aは,申込証拠金を手付金に充当してそのほかに2,000万円を受領することになるので,手付金等保全措置を講じなければならない金額は,2,030万円です。 本肢は,2,000万円としていますが,誤りです。 |
3.「Bは,Aが手付金等保全措置を講じた後は,手付金を放棄して契約を解除することができない。」 |
【正解:×】 ◆手付金等保全措置を講じている場合でも,買主は手付を放棄して,契約を解除できる 宅建業者が,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に受領する手付金〔代金の20%までしか受領できない〕は解約手付であり,<相手方が履行に着手するまでは,買主は手付を放棄して,売主である宅建業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができる>というものです(宅建業法39条1項,2項)。 手付金等保全措置を講じたからといって売主は履行に着手したことにはならないのですから,本肢は誤りです。 |
4.「Aは,残代金の受領については,手付金等保全措置を講じる必要はない。」 |
【正解:○】 ◆所有権移転登記完了後に受領するものについては保全措置を講じる必要はない 手付金等の保全措置の対象となるのは,名目を問わず授受される金銭で代金に充当されるものであって,契約締結日以後に,宅地又は建物の引渡し前に支払われるもの〔買主への所有権移転登記がされたとき,又は,買主が所有権の登記をしたときまでに支払われるもの〕です。 したがって,所有権移転登記完了後に受領する残代金については,前もって保全措置を講じておく必要はありません。
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