宅建業法 実戦篇
クーリングオフの過去問アーカイブス 平成4年・問45
宅地建物取引業者Aが自ら売主として買主Bと事務所等以外の場所で売買契約を締結した場合における,宅地建物取引業法第37条の2の規定による売買契約の解除に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成4年・問45) |
1.「Aが宅地建物取引業者でないBとマンションの売買契約を喫茶店で締結した場合,Bは,「事務所等以外の場所で契約をしても,解除できない」 旨の特約をすることを承諾していても,当該契約を解除することができる。」 |
2.「Aが宅地建物取引業者でないBとマンションの売買契約を知人宅で締結した場合,翌日Bが解約通知を契約書記載のAの住所に配達証明付内容証明郵便で発送すれば,転居先不明で戻ってきても,当該契約は,解除されたことになる。」 |
3.「Aが宅地建物取引業者でないBと別荘地の売買契約をテント張りの現地案内所で締結した場合,Aが土地の引渡しと移転登記を完了すれば,Bは,代金の一部が未済でも,当該契約を解除することができない。」 |
4.「Aが宅地建物取引業者Bを現地に案内したところ,Bが即座に購入を決め,近くの料理屋で土地の売買契約を締結した場合,翌日Bの意思が変わっても,Bは,当該契約を解除することができない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | × | ○ |
●Comments |
各肢とも,契約締結の場所が,「喫茶店」,「知人宅」,「テント張りの現地案内所」,「現地の近くの料理屋」と,クーリングオフできる場所〔事務所等以外の場所〕になっています。 |
1.「Aが宅地建物取引業者でないBとマンションの売買契約を喫茶店で締結した場合,Bは,「事務所等以外の場所で契約をしても,解除できない」 旨の特約をすることを承諾していても,当該契約を解除することができる。」 |
【正解:○】 ◆クーリングオフの規定に反し,申込者等に不利な特約をすることはできない クーリングオフの規定に反する特約で申込者等に不利な特約は無効です(宅建業法37条の2第4項)。 本肢では,「事務所等以外の場所で契約をしても,解除できない」 旨の特約をしていますが,上記によりこの規定は無効なので,当該契約を解除することができます。
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2.「Aが宅地建物取引業者でないBとマンションの売買契約を知人宅で締結した場合,翌日Bが解約通知を契約書記載のAの住所に配達証明付内容証明郵便で発送すれば,転居先不明で戻ってきても,当該契約は,解除されたことになる。」 |
【正解:○】 ◆発信主義 申込の撤回等〔クーリングオフの規定による契約解除〕は,申込者等〔買主〕が 『買受けの申込又は当該売買契約の解除をする旨の書面』 〔書式については特に規定はない〕を発したときにその効力が生じます(宅建業法37条の2第2項)。 したがって,売主の転居先不明で,その書面が戻ってきても,当該契約は,解除されたことになります。 ▼<クーリングオフする旨の書面が売主に到達したときに効力が生じる>とすると,売主の転居先不明で戻ってきた場合にはクーリングオフできないことになってしまうため,発信主義をとっています。 |
3.「Aが宅地建物取引業者でないBと別荘地の売買契約をテント張りの現地案内所で締結した場合,Aが土地の引渡しと移転登記を完了すれば,Bは,代金の一部が未済でも,当該契約を解除することができない。」 |
【正解:×】 ◆引渡し,かつ,代金全部の支払のときはクーリングオフできない 宅地建物の引渡しを受け,かつ,代金全部を支払ったときは,クーリングオフの規定による契約解除をすることはできません(宅建業法37条の2第1項2号)。 しかし,本肢の場合は,引渡しを受けていても,代金の一部が未済なので,クーリングオフの規定による契約解除をすることができます。本肢は誤りです。
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●クーリングオフできない場合 |
1 クーリングオフできない場所で買受けの申込等をした場合。
2 クーリングオフできる場所で買受けの申込等をした場合で,以下のどちらかに該当するとき a) 申込の撤回等ができる旨及びその方法を書面により告げられた日から起算して8日が経過したとき b) 引渡しを受け,かつ,代金全部を支払ったとき 〔クーリングオフできる旨の告知をされていなくても,クーリングオフできなくなる。〕 3 買主が宅建業者のとき |
4.「Aが宅地建物取引業者Bを現地に案内したところ,Bが即座に購入を決め,近くの料理屋で土地の売買契約を締結した場合,翌日Bの意思が変わっても,Bは,当該契約を解除することができない。」 |
【正解:○】 ◆適用除外−宅建業者が買主のときはクーリングオフできない クーリングオフは,宅建業者が自ら売主として,宅建業者ではない買主と売買契約の締結をした場合に適用される規定です(宅建業法78条2項)。 宅建業者が買主のときは,クーリングオフの規定は適用されないので,本肢の場合,宅建業者Bは,クーリングオフの規定による契約解除をすることはできません。 ▼買主が宅建業者でも,売主の債務不履行による解除や手付による解除,つまり,クーリングオフ以外の契約解除をすることは当然できます。 |