宅建業法 実戦篇

取引主任者の過去問アーカイブス 平成5年・問37

成年者と同一の能力を有しない未成年者・取引主任者証の提示・37条書面の記名押印・
政令で定める使用人


宅地建物取引主任者 (以下「取引主任者」という。) に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成5年・問36)

1.「宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者は,専任の取引主任者となることはできないが,専任でない取引主任者となることができる。」

2.「取引主任者は,宅地建物取引業法第35条の重要事項の説明を行う場合,相手方に宅地建物取引主任者証を提示しなければならないが,その相手方と初めて会ったときに宅地建物取引主任者証を提示していれば,改めて提示する必要はない。」

3.「宅地建物取引業法第37条の書面については,取引主任者が記名押印することを要し,建物の賃貸借の媒介の場合でも,これを省略することはできない。」

4.「事務所におかれる政令で定める使用人が取引主任者となったときは,その者は,その事務所に置かれる専任の取引主任者とみなされる。」

【正解】

× × ×

1.「宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者は,専任の取引主任者となることはできないが,専任でない取引主任者となることができる。」

【正解:×対比 : 平成8年・問43・肢4,

◆営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者 = 登録できない

 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者は,専任の取引主任者,専任でない取引主任者のどちらもなることはできません。そもそも,営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者は取引主任者の資格登録を受けることができないからです(宅建業法18条1項1号)

未成年者でも,「宅建業に係る営業に関して成年者と同一の能力を有する未成年者〔法定代理人から営業の許可を受けた未成年者〕」,「婚姻をした者,離婚や死別で婚姻を解消した者〔成年擬制のため,成年者とみなされる。〕」 は登録を受けることができます。

 KEY 

 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者

登録を受けることはできない

●専任の取引主任者
 未成年者のうち,民法6条1項の規定により成年者と同一の行為能力を有する者は,個人業者であるとき,または宅建業者である法人の役員のときは,専任の取引主任者とみなされます。 ⇒ 
   ―  専任の
 取引主任者
 専任以外の
 取引主任者
未成年者 成年者と同一の

行為能力を有しない者

 ×

 登録そのものができない 
 のでなれない。

 ×

 登録そのものができない
 のでなれない。

成年者と同一の

行為能力を有する者

 原則は×

 しかし,個人業者であるとき,
 または宅建業者である法人の
 役員のときは,
 専任の取引主任者と
 みなされる。

 しかし,この場合を除けば,
 専任の取引主任者にはなれない。

 
婚姻している者

(婚姻したことがある者)

 

 婚姻している者は,成年者と
 みなされるので,なりえる。

 

 婚姻している者は,成年者と
 みなされるので,なりえる。

註 個人の宅建業者本人が取引主任者であるとき,又は,宅建業者が法人で,その役員(業務を執行する社員,取締役又はこれらに準ずる者)が取引主任者であるときは,その者が自ら主として業務に従事する事務所等については,その者は,その事務所等に置かれる成年者である専任の取引主任者とみなされる(宅建業法15条2項)

2.「取引主任者は,宅地建物取引業法第35条の重要事項の説明を行う場合,相手方に宅地建物取引主任者証を提示しなければならないが,その相手方と初めて会ったときに宅地建物取引主任者証を提示していれば,改めて提示する必要はない。」

【正解:×

◆取引主任者証の提示

 取引主任者は,35条の重要事項の説明を行う場合,請求がなくても,相手方に取引主任者証を提示しなければなりません(宅建業法35条4項)

 その相手方と初めて会ったときに取引主任者証を提示していても,改めて提示する必要があります。〔はじめて会った後に,登録を消除されているかもしれませんから,相手方としても取引主任者証を見るまでは安心できたものではないからです。〕

 したがって,本肢は誤りです。

 KEY 

 重要事項の説明のときは,請求がなくても,取引主任者証を提示する

罰則 10万円以下の過料

3.「宅地建物取引業法第37条の書面については,取引主任者が記名押印することを要し,建物の賃貸借の媒介の場合でも,これを省略することはできない。」

【正解:

◆取引主任者の記名押印−37条書面

 宅建業者は,契約が成立したとき遅滞なく交付する37条書面に,取引主任者をして記名押印させなければなりません。

 宅地建物の売買・交換〔相手方に交付〕,売買・交換の媒介・代理〔両当事者に交付〕,貸借の媒介・代理〔貸主・借主に交付〕のどの場合でも,省略することはできないので,本肢は正しい記述です。

4.「事務所におかれる政令で定める使用人が取引主任者となったときは,その者は,その事務所に置かれる専任の取引主任者とみなされる。」

【正解:×

◆役員は専任の取引主任者とみなす

 宅建業者または法人の役員が取引主任者であるときは,その者が自ら主として業務に従事する事務所等に置かれる成年者である専任の取引主任者とみなすという規定がありますが,

 この規定は政令で定める使用人には適用されないので,本肢は誤りです。

 政令で定める使用人が取引主任者であっても,専任の取引主任者とはみなされないので,政令で定める使用人を専任の取引主任者にするときは,その旨の届出をしなければなりません。〔免許申請時にはその旨の届出,新たに専任の取引主任者にしたときは変更の届出。〕

●政令で定める使用人
 政令で定める使用人は、宅地建物取引業者の使用人で、宅地建物取引業に関し施行令第1条の2に規定する事務所の代表者であるものとする(施行令2条の2)

●取引主任者の設置
(取引主任者の設置)
第15条  宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第50条第1項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の取引主任者(第22条の2第1項の宅地建物取引主任者証の交付を受けた者をいう。以下同じ。)を置かなければならない。

2  前項の場合において、宅地建物取引業者(法人である場合においては、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)が取引主任者であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、その者は、その事務所等に置かれる成年者である専任の取引主任者とみなす。

3  宅地建物取引業者は、第1項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が同項の規定に抵触するに至つたときは、2週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置を執らなければならない。


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