宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成5年・問45

瑕疵担保責任の特約の制限・手付金等の保全措置・手付金返還の義務・

重要事項説明義務の承継


宅地建物取引業者社は,自ら売主となって,工事完了前のマンションを宅地建物取引業者でない買主に4,000万円で譲渡する契約を締結し,手付金300万円を受け取った。この場合,宅地建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(平成5年・問45)

1.「AB間で,その譲渡価額について社が1,000万円値引きする代わりに,瑕疵担保責任については,社の責めに帰するものに限るとの特約をした場合,は,この特約に拘束される。」

2.「社の資金事情が悪化して,社が債務を履行しない場合,は,社が講じた手付金等の保全措置により連帯保証した信託会社に対し,契約を解除することなく,300万円の返還を求めることができる。」

3.「社が倒産した場合,は,社の講じた手付金等の保全措置により連帯保証した銀行に対し300万円の返還を求めることができるとともに,その取引により生じた損害があるときは,社が供託していた営業保証金から弁済をするよう求めることができる。」

4.「宅地建物取引業者社が社を吸収合併した場合,社は,社の債権債務を承継するが,社の取引主任者が行った重要事項説明については,責任を負わない。」

【正解】

× × ×

1.「AB間で,その譲渡価額について社が1,000万円値引きする代わりに,瑕疵担保責任については,社の責めに帰するものに限るとの特約をした場合,は,この特約に拘束される。」

【正解:×

◆瑕疵担保責任

 宅建業者が自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結する際に,瑕疵担保責任に関する特約をするときには,民法の規定よりも買主に不利な特約をすることはできず,これに反する特約は無効になります(宅建業法40条1項,2項)

 民法では,瑕疵担保責任は,故意過失を問わず,売主の無過失責任とされているので,本肢の<値引きする代わりに,売主の責めに帰するものに限る>とするのは民法の規定よりも買主に不利な特約になり,無効です。

 したがって,買主はこの特約に拘束されることはありません。

 KEY 

 瑕疵担保責任について,民法の規定よりも買主に不利な特約

宅建業法では無効

民法での瑕疵担保責任は任意規定なので,民法上は当事者間の特約で瑕疵担保責任を売主は負わないとすることができますが,宅建業法では,宅建業者が自ら売主として宅建業者でない者と,民法の規定よりも買主に不利な特約をすることを禁止しています。

 売主・買主とも,宅建業者や宅建業者でない者の場合は,適用されないことに注意してください。

2.「社の資金事情が悪化して,社が債務を履行しない場合,は,社が講じた手付金等の保全措置により連帯保証した信託会社に対し,契約を解除することなく,300万円の返還を求めることができる。」

【正解:×

◆手付金等の返還

 売主の社が債務を履行しないとき,買主は契約を解除しなければ,手付金の返還を請求することはできないので(民法415条,543条),買主は,連帯保証した信託会社に対し,契約を解除することなく,手付金の返還を求めることはできません。

 KEY 

 契約を解除しなければ,手付金の返還を請求することはできない。

3.「社が倒産した場合,は,社の講じた手付金等の保全措置により連帯保証した銀行に対し300万円の返還を求めることができるとともに,その取引により生じた損害があるときは,社が供託していた営業保証金から弁済をするよう求めることができる。」

【正解:

◆手付金等保全措置と営業保証金からの弁済(営業保証金の還付)

 <手付金>と<取引により生じた損害>は分けて考えます。

 売主の社が倒産したときは,買主は,契約を解除して連帯保証した銀行に対して手付金の返還を求めることができます(宅建業法41条1項)

 また,買主は,手付金の返還とは別に,この取引により損害を生じたときは,社が供託していた営業保証金から弁済を受けることができます(宅建業法27条1項)

4.「宅地建物取引業者社が社を吸収合併した場合,社は,社の債権債務を承継するが,社の取引主任者が行った重要事項説明については,責任を負わない。」

【正解:×

◆吸収合併した法人にも重要事項説明の責任

 別の宅建業者社が社を吸収合併した場合,社は,社の債権債務を承継するので,社の取引主任者が行った重要事項説明についても,責任を負います(関連・宅建業法76条)


宅建業法の過去問アーカイブスに戻る  

1000本ノック・宅建業法編・本編のトップに戻る  Brush Up! 自ら売主制限に戻る

Brush UP! 重要事項説明と37条書面に戻る

宅建過去問に戻る