宅建業法 実戦篇
監督処分の過去問アーカイブス 平成5年・問49
甲県知事の免許を受けた宅地建物取引業者Aに対する監督処分についての次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成5年・問49) |
1.「Aがその業務に関し取引の関係者に損害を与えるおそれが大であるとして指示処分を受け,その指示に従わなかった場合,甲県知事は,その情状のいかんにかかわらず,その免許を取り消すことができる。」 |
2.「Aが免許を受けてから1年以内に事業を開始しない場合,甲県知事は,Aに対し,1年以内の期間を定めて業務停止を命ずることができる。」 |
3.「Aが乙県内において不正な行為をした場合,甲県知事はAに対し業務停止を命ずることができるが,乙県知事は業務停止を命ずることができない。」 |
4.「甲県知事がAの免許を取り消す場合,Aの出頭を求めて公開による聴聞を行わなければならないが,A又はAの代理人が正当な理由なく聴聞の期日に出頭しないときは,甲県知事は,聴聞を終結させることができ,取り消すことができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「Aがその業務に関し取引の関係者に損害を与えるおそれが大であるとして指示処分を受け,その指示に従わなかった場合,甲県知事は,その情状のいかんにかかわらず,その免許を取り消すことができる。」 |
【正解:×】 ◆指示処分に従わないとき 宅建業者が業務停止処分に違反した場合,都道府県知事はその免許を取り消さなければいけません(宅建業法66条1項9号)。 しかし,単に指示処分に従わなかっただけでは,都道府県知事は業務停止処分ができるのみであり,情状のいかんにかかわらず直ちに免許取消処分をすることはできません(宅建業法65条2項3号)。⇒ 指示処分に従わず,情状が特に重い場合は,免許取消もありえます。
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2.「Aが免許を受けてから1年以内に事業を開始しない場合,甲県知事は,Aに対し,1年以内の期間を定めて業務停止を命ずることができる。」 |
【正解:×】 ◆1年以内に事業を開始しないとき ⇒ 免許取消 宅建業者が免許を受けたにも係らず,1年以内に事業を開始しないとき,または,引き続き1年以上事業を休止したときは,都道府県知事は,その免許を取り消さなければいけません(宅建業法66条1項6号)。 事業をしていない業者の免許を取り消さないで放置しておくと,名義貸しなどで免許を悪用することも考えられるからです。
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3.「Aが乙県内において不正な行為をした場合,甲県知事はAに対し業務停止を命ずることができるが,乙県知事は業務停止を命ずることができない。」 |
【正解:×】 ◆免許権者以外の知事も,指示処分・業務停止処分をすることができる 甲県知事免許業者が,乙県内で不正な行為をした場合,甲県知事だけでなく,乙県知事も全部又は一部の業務停止処分をすることができます(宅建業法65条2項,4項)。 都道府県知事は,その管轄する区域内で業務を行う国土交通大臣免許業者や他の都道府県知事免許業者に対し,指示処分・業務停止処分をすることができます(宅建業法65条3項,4項)。
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4.「甲県知事がAの免許を取り消す場合,Aの出頭を求めて公開による聴聞を行わなければならないが,A又はAの代理人が正当な理由なく聴聞の期日に出頭しないときは,甲県知事は,聴聞を終結させることができ,取り消すことができる。」 |
【正解:○】 ◆聴聞の終結 都道府県知事が免許を取り消そうとするときは,宅建業者にとっては不利益処分なので,原則として,聴聞の手続をしなければいけません(行政手続法13条1項)。 しかし,正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず,かつ,出頭に代わる陳述書・証拠書類等を提出しない場合は,改めて意見を述べ,及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく,聴聞を終結することができ(行政手続法23条1項),免許を取り消すことができます。 |
●行政手続法 |
(不利益処分をしようとする場合の手続) 第13条 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。 一 次のいずれかに該当するとき 聴聞 イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。 ロ イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。 ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。 ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。 二 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与 (陳述書等の提出) 2 主宰者は、聴聞の期日に出頭した者に対し、その求めに応じて、前項の陳述書及び証拠書類等を示すことができる。 (当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結) 2 主宰者は、前項に規定する場合のほか、当事者の全部又は一部が聴聞の期日に出頭せず、かつ、第21条第1項に規定する陳述書又は証拠書類等を提出しない場合において、これらの者の聴聞の期日への出頭が相当期間引き続き見込めないときは、これらの者に対し、期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め、当該期限が到来したときに聴聞を終結することとすることができる。 |
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