宅建業法 実戦篇

取引主任者の過去問アーカイブス 平成7年・問38 

登録の移転・登録実務講習・消除処分・監督処分


宅地建物取引主任者資格登録 (以下この問において 「登録」 という。) 又は宅地建物取引主任者 (以下 「取引主任者」 という。)に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成7年・問38)

1.「甲県知事の登録を受けて,甲県に所在する本店に従事する者が,乙県に所在する支店に従事することとなったときは,2週間以内に甲県知事を経由して,乙県知事に対し,登録の移転の申請をしなければならない。」

2.「宅地建物取引主任者資格試験に合格した者で,宅地建物の取引に関し2年以上の実務の経験を有しないものは,合格した日から5年を経過する日までに国土交通大臣の登録を受けたもの(登録実務講習)を修了しなければ,登録を受けることができない。」

3.「取引主任者が,取引主任者として行う事務に関し不正又は著しく不当な行為をした場合で,情状が特に重いときは,その登録を消除されるとともに,消除処分があった旨の公告がなされる。」

4.「登録を受けている者で,宅地建物取引主任者証の交付を受けていないものが,宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項説明を行い,書面に記名押印した場合で,情状が特に重いときは,登録を消除される。」

【正解】

× × ×

1.「甲県知事の登録を受けて,甲県に所在する本店に従事する者が,乙県に所在する支店に従事することとなったときは,2週間以内に甲県知事を経由して,乙県知事に対し,登録の移転の申請をしなければならない。」

【正解:×

◆登録の移転は義務ではない

 登録の移転は,登録地 (登録をしている都道府県知事の管轄する都道府県) 以外の都道府県に所在する宅建業者の事務所の業務に従事し,又は従事しようとするときに,申請することができます(宅建業法・19条の2)。〔住所の移転を理由として,登録の移転を申請することはできない。〕

 しかし,登録の移転は任意であり,義務ではないため,本肢のような規定はありません。

事務禁止の期間中は,登録の移転はできないことに注意してください。

●登録の移転のメリット
 登録の移転は,取引主任者だけではなく,都道府県知事から登録を受けているだけの者〔取引主任者証の交付を受けていない者〕もすることができます。

 登録の移転のメリットの一つとして,取引主任者証の更新時の法定講習が,従事している宅建業者の所在する都道府県で受講できるようになるということがあります。

 ただし,神奈川県知事の登録を受けていて,東京都内の宅建業者に勤務している場合のように,登録地と勤務地が近いときでは,登録の移転をするメリットはありません。

 登録の移転のメリットがあるのは,神奈川県知事の登録を受けていて,登録地と離れている大阪府内の宅建業者に勤務しているような場合です。このような場合に,更新のたびにいちいち大阪から神奈川まで行くのでは大変なので,大阪府内で法定講習を受けられるようにするというのが登録の移転の趣旨です。

2.「宅地建物取引主任者資格試験に合格した者で,宅地建物の取引に関し2年以上の実務の経験を有しないものは,合格した日から5年を経過する日までに国土交通大臣の登録を受けたもの(登録実務講習)を修了しなければ,登録を受けることができない。」

【正解:×

◆登録実務講習

 取引主任者の登録申請時には,原則として,宅地建物の取引に関する実務経験が2年以上あることが必要です(宅建業法18条1項,施行規則13条の15)

 宅建試験に合格した者で,宅地建物の取引に関し2年以上の実務の経験を有しないものは,国土交通大臣の登録を受けたもの(登録実務講習)を修了しなければ,登録を受けることができません(宅建業法・18条1項,施行規則13条の16第1号)

 しかし,実務講習は,合格してから何年経っても受講できますから,本肢は誤りです。

 都道府県知事が指定する講習

 (法定講習)

 (宅建業法22条の2第1項,

 施行規則14条の17)

 取引主任者証の交付申請
 国土交通大臣の登録を受けたもの

 (登録実務講習)

(宅建業法18条1項,

施行規則13条の16第1号)

 登録申請時に

 2年の実務経験がないとき

 国土交通大臣の登録を受けた者

が行う講習 (登録講習)

(宅建業法16条3項)  宅建試験での一部免除

※法定講習は法令上の用語ではありませんが,慣用的に使われています。

3.「取引主任者が,取引主任者として行う事務に関し不正又は著しく不当な行為をした場合で,情状が特に重いときは,その登録を消除されるとともに,消除処分があった旨の公告がなされる。」

【正解:×

◆登録消除処分があった旨の公告について,特に規定はない

 取引主任者が,取引主任者として行う事務に関し不正又は著しく不当な行為をした場合で,情状が特に重いときは,その登録を消除されます(宅建業法・68条の2第1項4号)

 宅建業者について,業務停止処分・不正手段による免許取得等による免許取消があったときは,免許権者は,その旨を公告〔国土交通大臣の処分は官報,都道府県知事の処分は当該都道府県の公報〕しなければなりませんが(宅建業法・70条,⇒平成6年・問50・肢4),取引主任者に事務禁止処分・登録消除処分があったときに公告しなければならないという規定は宅建業法にはありません。

●宅建業者

   指示処分  業務停止処分  免許取消処分
 聴聞   ある  ある  ある
 公告  ない  ある  ある

●取引主任者

   指示処分  事務禁止処分  登録消除処分
 聴聞   ある  ある  ある
 公告  ない  ない  ない

4.「登録を受けている者で,宅地建物取引主任者証の交付を受けていないものが,宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項説明を行い,書面に記名押印した場合で,情状が特に重いときは,登録を消除される。」

【正解:

◆登録者が取引主任者の事務を行ったとき−登録消除事由

 登録を受けている者で,取引主任者証の交付を受けていないものが,取引主任者としてすべき事務〔35条の重要事項の説明,35条書面の記名押印・交付,37条書面の記名押印〕を行って,情状が特に重いときは,その登録を消除されます(宅建業法・68条の2第2項3号)


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