宅建業法 実戦篇

監督処分の過去問アーカイブス 平成8年・問50 指示処分・業務停止処分・免許取消


甲県内にのみ事務所を設置している宅地建物取引業者が,自ら売主として乙県内でマンション (建築工事完了前) の分譲を行う場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,誤っているものはどれか。(平成8年・問50)

1.「が乙県内にも事務所を有することとなった場合で,国土交通大臣の免許を受けていないことが判明したとき,甲県知事は,に対し1年以内の業務停止を命ずることができる。」

2.「が宅地建物取引業法第41条第1項の規定に違反して手付金等の保全措置を怠ったとき,乙県知事は,に対し1年以内の業務停止を命ずることができる。」

3.「が乙県知事の免許を受けた宅地建物取引業者の名義でマンションの分譲の広告をしたとき,甲県知事は,に対し必要な指示をすることができる。」

4.「がマンション建築のための建築基準法第6条第1項の確認を受ける前にマンションの分譲の広告をしたとき,乙県知事は,に対し必要な指示をすることができる。」

【正解】

×

1.「が乙県内にも事務所を有することとなった場合で,国土交通大臣の免許を受けていないことが判明したとき,甲県知事は,に対し1年以内の業務停止を命ずることができる。」

【正解:×

◆免許取消−免許換えを怠った場合

 複数の都道府県に事務所を有することとなった場合,都道府県知事免許から国土交通大臣免許に免許換えをしなければなりません(宅建業法7条1項3号)

 この規定に違反して,宅建業者が免許換えを怠った場合,免許権者は,業務停止処分ではなく,当該宅建業者の免許を取り消さなければなりません(宅建業法66条1項5号)。⇒罰則はない。

 本肢は,「甲県知事は,1年以内の業務停止を命ずることができる」としているので,誤りです。

 KEY 

 免許換えを怠った

免許権者は,免許を取り消さなければならない

2.「が宅地建物取引業法第41条第1項の規定に違反して手付金等の保全措置を怠ったとき,乙県知事は,に対し1年以内の業務停止を命ずることができる。」

【正解:

◆業務停止処分−手付金等保全措置を怠った場合

 宅建業者が自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結した際に,手付金等の保全措置をしなければならないのに,保全措置をしないで手付金等を受領したときは,免許権者は,当該宅建業者に対して1年以内の期間を定めて,全部または一部の業務停止を命ずることができます(宅建業法65条2項2号)

 都道府県知事は,当該都道府県の区域内で業務を行っている他の都道府県知事免許の業者や国土交通大臣免許の業者に対しても,指示処分や業務停止処分することができるので(宅建業法65条3項・4項),乙県知事は,甲県知事免許業者であるに対して1年以内の業務停止を命ずることができます。

自ら売主の制限で違反したときに,監督処分として<業務停止,情状が特に重い時に免許取消>になるものは,手付金等保全措置・自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限(33条の2)・所有権留保の禁止(43条1項)の三つです。それ以外では指示処分になります。

3.「が乙県知事の免許を受けた宅地建物取引業者の名義でマンションの分譲の広告をしたとき,甲県知事は,に対し必要な指示をすることができる。」

【正解:

◆指示処分−取引の公正を害する行為をした場合

 宅建業者が他の宅建業者の名義で広告をすることは,取引の公正を害する行為に該当し,指示処分の対象になります(宅建業法65条1項2号)

 したがって,甲県知事は,に対し必要な指示をすることができます。

宅建業者は,自己の名義をもって,他人に,宅建業を営む旨の表示をさせ,又は宅建業を営む目的をもつてする広告をさせてはならず,この規定に違反したときは,業務停止処分の対象になります(宅建業法13条2項,65条2項2号)

 したがって,本肢の場合,乙県知事は,に対して,業務停止処分をすることができます(65条2項)

4.「がマンション建築のための建築基準法第6条第1項の確認を受ける前にマンションの分譲の広告をしたとき,乙県知事は,に対し必要な指示をすることができる。」

【正解:

◆指示処分−広告開始時期の制限に違反した場合

 宅建業者が,工事完了前の建物について建築確認を受ける前に,当該工事に係る建物の売買に関する広告をすることは禁止されています(宅建業法33条)

 これに違反すると,指示処分の対象になります(65条1項本文)

 また,都道府県知事は,当該都道府県の区域内で業務を行っている他の都道府県知事免許の業者や国土交通大臣免許の業者に対しても,指示処分や業務停止処分することができるので(宅建業法65条3項・4項),乙県知事は,広告開始時期の制限に違反したに対し必要な指示をすることができます。

 制限対象  監督処分  罰則
 契約締結時期の制限  貸借の媒介・代理は含まない。  業務停止

 免許取消
 (情状が特に重いとき)

 なし
 広告開始時期の制限  貸借の媒介・代理も含まれる。  指示処分  なし


宅建業法の過去問アーカイブスに戻る  

1000本ノック・宅建業法編・本編のトップに戻る  Brush Up! 監督処分・罰則規定

宅建過去問に戻る