宅建業法 実戦篇
重要事項の説明の過去問アーカイブス 平成9年・問38
手附についての信用の供与による契約誘引の禁止・重要事項説明
宅地建物取引業者Aが,貸主Bと借主Cの間の建物貸借契約(以下この問において単に「契約」という。)の締結を媒介し,又はしようとする場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。 (平成9年・問38) |
1.「契約成立前に,Bが,Aを通してCから,貸借希望の真摯なことの証明の目的で申込証拠金を受領した場合において,Aは,Cに対し 「契約が成立したとき,申込証拠金を手付金の一部に充当し,Cは手付金の不足分を契約成立後7日以内に支払わなければならない」 旨説明して,契約を締結させた。」 |
2.「建物の上の抵当権の登記に関し,「建物の引渡しの時期までには必ず抵当権を抹消できるから,Cには内密にしておいてほしい」 旨のBの依頼にかかわらず,Aは,Cに対して宅地建物取引業法第35条の規定に基づく重要事項 (以下この問において 「重要事項」 という。) として,当該登記について説明した。」 |
3.「AがCに対して重要事項の説明を行う場合に,契約終了時における敷金の精算に関する事項についてのBの意思が明確でなかったため,Aは,止むを得ず代替の措置として,当該建物の近隣にある類似建物についての精算の例をCに説明するにとどめた。」 |
4.「Aは,Cが他の物件をも探索していたので,重要事項を口頭で説明したが,その数日後,CからAに対し電話で 「早急に契約を締結したい」 旨の申出があったので,その日のうちにB及びCの合意を得て契約を成立させ,契約成立の日の翌日,Cに重要事項を記載した文書を郵送した。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
違反する | 違反しない | 違反する | 違反する |
1.「契約成立前に,Bが,Aを通してCから,貸借希望の真摯なことの証明の目的で申込証拠金を受領した場合において,Aは,Cに対し 「契約が成立したとき,申込証拠金を手付金の一部に充当し,Cは手付金の不足分を契約成立後7日以内に支払わなければならない」 旨説明して,契約を締結させた。」 |
【正解:違反する】 ◆手附について信用の供与による契約誘引の禁止 申込証拠金を手付けの一部に充当し,手付金の残りを後で支払わせることにして契約を締結させるのは,手附の分割受領です。 手附の分割受領は<手附について貸付けその他の信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為>に該当し,業務に関する禁止事項として禁止されています(宅建業法47条3項,宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方,国土交通省)。 本肢は宅建業法に違反します。 |
●違反した場合の監督処分と罰則 | ||
監督処分 | 罰則 | |
不当な履行遅延の禁止 (44条) |
業務停止
(情状が特に重いときは免許取消し) |
6月以下の懲役もしくは 100万円以下の罰金, または併科 |
手形貸与による 信用の供与 (47条3号) |
業務停止
(情状が特に重いときは免許取消し) |
6月以下の懲役もしくは 100万円以下の罰金, または併科 |
事実の不告知・ 不実な告知 (47条1号) |
業務停止
(情状が特に重いときは免許取消し) |
2年以下の懲役もしくは 300万円以下の罰金, または併科 |
2.「建物の上の抵当権の登記に関し,「建物の引渡しの時期までには必ず抵当権を抹消できるから,Cには内密にしておいてほしい」 旨のBの依頼にかかわらず,Aは,Cに対して宅地建物取引業法第35条の規定に基づく重要事項 (以下この問において 「重要事項」 という。) として,当該登記について説明した。」 |
【正解:違反しない】 宅建業者は,売主から内密にしてほしいといわれても,抵当権の登記について説明しなければいけません。⇒ 抵当権が実行され,競売になると,抵当権者に後れる賃借権者は競落人に対抗できないため,知らせておく必要があります。 登記された権利の種類・内容・登記名義人は,35条の重要事項として説明義務があるからです(宅建業法35条1項1号)。
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3.「AがCに対して重要事項の説明を行う場合に,契約終了時における敷金の精算に関する事項についてのBの意思が明確でなかったため,Aは,止むを得ず代替の措置として,当該建物の近隣にある類似建物についての精算の例をCに説明するにとどめた。」 |
【正解:違反する】 ◆契約終了時に精算することとされている金銭の精算に関する事項 契約終了時における敷金の精算に関する事項は,トラブル防止のために説明する義務があり,定まっていなければ,その旨を説明しなければなりません(宅建業法35条1項14号,施行規則16条の4の3第10号)。 近隣にある類似建物についての精算の例を説明しても,契約終了時における敷金の精算に関する事項を説明したことにはならないので,本肢は宅建業法に違反します。 (近隣にある類似建物についての精算の例を説明しても,BとCの間で締結する賃貸借契約でそれと同じ精算方法をとるとは限りません。) ●賃貸借契約終了時に精算することとされている金銭の精算に関する事項
●借賃以外に授受される金銭の額・目的・授受の時期
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4.「Aは,Cが他の物件をも探索していたので,重要事項を口頭で説明したが,その数日後,CからAに対し電話で 「早急に契約を締結したい」 旨の申出があったので,その日のうちにB及びCの合意を得て契約を成立させ,契約成立の日の翌日,Cに重要事項を記載した文書を郵送した。」 |
【正解:違反する】 ◆重要事項は,書面を交付して説明する 35条の重要事項は,35条書面を交付して説明しなければならないので,本肢のように,重要事項を口頭で説明した後で,35条書面を郵送で交付するのは,宅建業法に違反します。 |
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