宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成9年・問39
手付金等の保全措置・手付放棄による契約の解除・
宅地建物取引業者Aは,自ら売主として,宅地建物取引業者でないBと建築工事完了前の分譲住宅の売買契約 (代金5,000万円,手付金200万円,中間金200万円) を締結した。この場合に,宅地建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。 (平成9年・問39) |
1.「Aは,手付金を受け取る時点では,宅地建物取引業法第41条に規定する手付金等の保全措置 (以下この問において「保全措置」という。)を講じる必要はない。」 |
2.「売買契約で手付金が解約手付であることを定めておかなかった場合でも,Aが契約の履行に着手していなければ,Bは,手付を放棄して契約の解除をすることができる。」 |
3.「売買契約で 「手付放棄による契約の解除は、契約締結後30日以内に限る」 旨の特約をしていた場合でも,契約締結から45日経過後にAが契約の履行に着手していなければ,Bは,手付を放棄して契約の解除をすることができる。」 |
4.「契約締結時の2月後で分譲住宅の引渡し及び登記前に,Aが中間金を受け取る場合で,中間金を受け取る時点では当該分譲住宅の建築工事が完了していたとき,Aは,手付金及び中間金について保全措置を講じる必要はない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | × |
1.「Aは,手付金を受け取る時点では,宅地建物取引業法第41条に規定する手付金等の保全措置 (以下この問において「保全措置」という。)を講じる必要はない。」 |
【正解:○】 ◆未完成物件での手付金等保全措置 宅建業者は,工事完了前の宅地または建物について,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結するに際して,代金の5%超または1,00万円超の手付金等を受領するには,あらかじめ,手付金等保全措置を講じておく必要があります(宅建業法41条1項,施行令3条の2)。 しかし,200万円は代金5,000万円の4%〔5%以下〕,かつ,1,000万円以下なので,Aが手付金200万円を受領する時点では,手付金等保全措置を講じる必要はありません。 |
2.「売買契約で手付金が解約手付であることを定めておかなかった場合でも,Aが契約の履行に着手していなければ,Bは,手付を放棄して契約の解除をすることができる。」 |
【正解:○】 宅建業者が,自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは,その手附がいかなる性質のものであつても,当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主はその手附を放棄して,当該宅建業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができます(宅建業法39条2項)。 したがって,自ら売主の宅建業者Aが契約の履行に着手していなければ,宅建業者ではない買主のBは,手付を放棄して契約の解除をすることができます。 |
3.「売買契約で 「手付放棄による契約の解除は、契約締結後30日以内に限る」 旨の特約をしていた場合でも,契約締結から45日経過後にAが契約の履行に着手していなければ,Bは,手付を放棄して契約の解除をすることができる。」 |
【正解:○】 ◆解約手附 問題文に,契約締結後の日数が出てきますが,手附による解除ができるか判定するのに必要なのは,<相手方が契約の履行に着手しているかどうか>です。 売買契約で 「手付放棄による契約の解除は、契約締結後30日以内に限る」 旨の特約をしていた場合でも,契約締結から45日経過後に自ら売主の宅建業者Aが契約の履行に着手していなければ,宅建業者ではない買主のBは,手付を放棄して契約の解除をすることができます。 |
4.「契約締結時の2月後で分譲住宅の引渡し及び登記前に,Aが中間金を受け取る場合で,中間金を受け取る時点では当該分譲住宅の建築工事が完了していたとき,Aは,手付金及び中間金について保全措置を講じる必要はない。」 |
【正解:×】 ◆中間金を受け取る時点で工事が完了している場合の保全措置の要否
工事完了前に売買契約を締結し,中間金を受け取る時点で工事が完了している場合に保全措置を講じるかどうかは,未完成物件での手付金等保全措置を講じる額になっているかどうかで考えます(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。 本肢では,手付金200万円+中間金200万円=合計400万円〔代金の8%〕,つまり,代金の5%超になるので,中間金を受領する前に,手付金+中間金の合計400万円について,保全措置を講じなければなりません。 したがって,手付金・中間金とも,保全措置を講じる必要がないとする本肢は誤りです。
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