宅建業法 実戦篇

重要事項の説明の過去問アーカイブス 平成9年・問40 

重要事項の説明・手附についての信用の供与による契約誘引の禁止


宅地建物取引業者が,売主,買主とする建物の売買の媒介をした場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。 (平成9年・問40)

1.「は,建物の売買契約の成立時において,に手付金全額の用意ができていなかったので,不足分を立て替えて,当該売買契約を成立させた。」

2.「は,売買契約が成立するまでの間に,代金に関する融資のあっせんについて融資条件を説明したが,その融資が成立しないときの措置についてはに説明しなかった。」

3.「は,建物の引渡しの時期についての合意が不確定であったので,売買契約が成立するまでの間に,当該事項をに説明しなかった。」

4.「は,契約の解除に関する事項について売買契約が成立するまでの間にに説明しなかったが,そのことについて過失はあったものの故意はなかった。」

【正解】

違反する 違反する 違反しない 違反する

1.「は,建物の売買契約の成立時において,に手付金全額の用意ができていなかったので,不足分を立て替えて,当該売買契約を成立させた。」

【正解:違反する

◆手附について信用の供与による契約誘引の禁止

 手付金の不足分を立替えて,契約を締結させるのは,<手附について貸付けその他の信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為>に該当し,業務に関する禁止事項として禁止されています(宅建業法47条3項)

 本肢は宅建業法に違反します。

●違反した場合の監督処分と罰則
   監督処分  罰則
 不当な履行遅延の禁止
 (44条)
業務停止

(情状が特に重いときは免許取消し)

6月以下の懲役もしくは
100万円以下の罰金,
または併科
 手形貸与による
 信用の供与
 (47条3号)
業務停止

(情状が特に重いときは免許取消し)

6月以下の懲役もしくは
100万円以下の罰金,
または併科
 事実の不告知・
 不実な告知
 (47条1号)
業務停止

(情状が特に重いときは免許取消し)

2年以下の懲役もしくは
300万円以下の罰金,
または併科

2.「は,売買契約が成立するまでの間に,代金に関する融資のあっせんについて融資条件を説明したが,その融資が成立しないときの措置についてはに説明しなかった。」

【正解:違反する
◆代金に関する金銭の貸借のあっせんの内容,あっせんした金銭の貸借が成立しないときの措置

 <代金に関する融資のあっせんの内容><あっせんした融資が成立しなかったときの措置>は,2つとも,重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項12号)

 本肢では,融資が成立しないときの措置について説明しなかったので,宅建業法に違反します。

   代金に関する金銭の貸借のあっせんの内容,
 あっせんした金銭の貸借が成立しないときの措置
 35条の重要事項  説明義務
 37条書面  記載する必要はない。

3.「は,建物の引渡しの時期についての合意が不確定であったので,売買契約が成立するまでの間に,当該事項をに説明しなかった。」

【正解:違反しない

◆引渡しの時期

 建物の引渡しの時期は,35条の重要事項ではなく,37条書面の記載事項です(宅建業法37条1項4号)

 売買契約が成立するまでに説明しなくても,宅建業法に違反することはありません。

   宅地建物の引渡しの時期
 35条の重要事項  説明義務はない
 37条書面  必ず記載する

4.「は,契約の解除に関する事項について売買契約が成立するまでの間にに説明しなかったが,そのことについて過失はあったものの故意はなかった。」

【正解:違反する

◆契約の解除に関する事項

 契約の解除に関する事項は,契約が成立するまでに必ず説明しなければならない重要事項です(宅建業法35条1項8号)。⇒ 37条書面でも,定めがあれば,その内容を記載しなければなりません。

 故意・過失のどちらであっても,重要事項説明をしなかったのは,宅建業法に違反します。

   契約の解除に関する事項
 35条の重要事項  説明義務
 37条書面  定めがあるときは,その内容を記載する

<47条1号の事実のの不告知,不実な告知の禁止>との対比

 35条の重要事項  故意・過失のどちらでも
 説明しないのは宅建業法に違反する。(無過失責任)
 47条1号  故意に
 事実を告げなかったり,不実のことを告げる行為は
 宅建業法に違反する。


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