宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成9年・問44 手付金等の保全措置


宅地建物取引業者が,自ら売主として,宅地建物取引業者でないと建築工事完了後の分譲住宅についての売買契約 (手付金500万円) を締結した。この場合,宅地建物取引業法第41条の2に規定する手付金等の保全措置 (以下この問において「保全措置」という。) に関する次の記述のうち,同法の規定によれば正しいものはどれか。 (平成9年・問44)

1.「手付金の額が売買代金の額の10%を超える場合でも,営業保証金の額の範囲内であるので,は,保全措置を講じる必要はない。」

2.「手付金の額が売買代金の額の10%を超える場合には,は,手付金の受領後すみやかに保全措置を講じなければならない。」

3.「手付金の額が売買代金の額の20%を超える場合でも,は,手付金全額について保全措置を講ずれば,手付金を受領することができる。」

4.「手付金の額が分譲住宅の本体価額 (売買代金の額から消費税及び地方消費税に相当する額を控除した額) の10%を超えていても,売買代金の額の10%以下である場合には,は,保全措置を講じる必要はない。」

【正解】

× × ×

●工事完了物件の売買についての手付金等保全措置
 宅建業者が自ら売主として,宅建業者ではない者と,工事完了物件について売買契約を締結するに際して,あらかじめ手付金等保全措置を講じた後でなければ,代金の10%超または1,000万円超の手付金等を受領することはできません(宅建業法41条の2第1項,施行令3条の2)

1.「手付金の額が売買代金の額の10%を超える場合でも,営業保証金の額の範囲内であるので,は,保全措置を講じる必要はない。」

【正解:×

◆営業保証金の範囲内かどうかには関係ない

 手付金500万円が代金の額の10%を超える場合は,保全措置を講じなければ,手付金を受領することはできません。

 営業保証金の額とは関係ないので,本肢は誤りです。

2.「手付金の額が売買代金の額の10%を超える場合には,は,手付金の受領後すみやかに保全措置を講じなければならない。」

【正解:×
◆手付金等を受領する前に保全措置を講じる

 保全措置を講じるのは,手付金等を受領する前ですから,本肢は誤りです。

 手付金500万円が代金の額の10%を超える場合は,保全措置を講じなければ,手付金を受領することはできません。

3.「手付金の額が売買代金の額の20%を超える場合でも,は,手付金全額について保全措置を講ずれば,手付金を受領することができる。」

【正解:×

◆手附の額の制限等

 宅建業者は,自ら売主となり,宅建業者ではない者との間で,宅地又は建物の売買契約を締結するに際して,代金の額の20%を超える額の手附を受領することはできません(宅建業法39条1項)

 手付金等保全措置を講じたからといって,この規定に反して,代金の額の20%を超える手附を受領することはできません。

4.「手付金の額が分譲住宅の本体価額 (売買代金の額から消費税及び地方消費税に相当する額を控除した額) の10%を超えていても,売買代金の額の10%以下である場合には,は,保全措置を講じる必要はない。」

【正解:

◆<代金の額の10%>の代金とは,総額表示でのもの

 手付金500万円が代金の額の10%を超える場合は,保全措置を講じなければ,手付金を受領することはできません。

 この場合の代金の額とは,消費税及び地方消費税を含んだものをいいます(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方,その他の留意すべき事項2)

 したがって,本体価額 (売買代金の額から消費税及び地方消費税に相当する額を控除した額) の10%を超えていても,売買代金の額の10%以下である場合には,は,保全措置を講じる必要はありません。

●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

その他の留意すべき事項

2 消費税等相当額の扱いについて

  法第32条、第38条、第39条、第41条及び第41条の2等の規定の適用に当たっては、売買、賃借等につき課されるべき消費税等相当額については、「代金、借賃等の対価の額」の一部に含まれるものとして取り扱うものとする。なお、割賦販売については、法第35条第2項の規定に基づき、現金販売価額と割賦販売価額が区分されている場合で、契約書に分割支払に係る利子額を記載したときは、その利子の額については、非課税となる。

  また、法第37条第1項第3号又は第2項第2号の規定により、宅地建物取引業者は、契約を締結したときは、遅滞なく、「代金の額」又は「借賃の額」を記載した書面を交付しなければならないこととされているが、消費税等相当額は、代金、借賃等の額の一部となるものであり、かつ、代金、借賃に係る重要な事項に該当するので、「代金の額」又は「借賃の額」の記載に当たっては、「当該売買、貸借等につき課されるべき消費税等相当額」を明記することとなる。また、交換については、「交換差金の額」に関する事項として、「当該交換につき課されるべき消費税等相当額」を明示することとなる。同様に、法第34条の2第1項第5号又は法第34条の3の規定により、媒介又は代理契約を締結したときは、遅滞なく「報酬に関する事項」を記載した書面を交付しなければならないこととされているが、その記載に当たっては、当該報酬の額に含まれる消費税等相当額に関する事項についても記載することとなる。

  なお、譲渡、賃貸等に課されるべき消費税等相当額は、法第47条第1号の重要な事項に該当することとなるので、宅地若しくは建物の売買、交換又は貸借の各当事者に対して故意に事実を告げず、又は不実のことを告げた場合には、法第47条違反となる。

 また、消費税法第63条の2の規定により、不特定多数の一般消費者に対して物件価格、賃料等を表示する場合は、譲渡、賃貸等に係る消費税等相当額を含んだ額を表示しなければならないことに留意すること。


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