宅建業法 実戦篇
重要事項の説明の過去問アーカイブス 平成11年・問34
宅地建物取引業者Aが,自ら売主として,宅地建物取引業者でないBと土地付建物の売買契約を締結しようとする場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,正しいものはどれか。なお,この問において 「重要事項説明書」 とは,同法第35条の規定に基づく重要事項を記載した書面をいうものとする。(平成11年・問34) |
1.「当該建物の敷地の一部に甲市所有の旧道路敷が含まれていることが判明したため,甲市に払下げを申請中である場合,Aは,重要事項説明書に払下申請書の写しを添付し,その旨をBに説明すれば,売買契約を締結することができる。」 |
2.「Bが,当該建物の近所に長年住んでおり,その建物に関する事項を熱知していると言っている場合,Aは,Bに対して重要事項説明書を交付すれば,重要事項の説明を行うことなく,売買契約を締結することができる。」 |
3.「損害賠償額の予定及び違約金について,Bから提示された内容のとおりとする場合,Aは,重要事項説明書に記載してその内容を説明することなく,売買契約を締結することができる。」 |
4.「Aが,遠隔地に住んでいるBの了承を得て,「Bが希望する時期に説明をする」 旨の条件付きで重要事項説明書を郵送した場合で,Bから希望する時期を明示されないときでも,Aは,重要事項の説明を行った後に限り,売買契約を締結することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「当該建物の敷地の一部に甲市所有の旧道路敷が含まれていることが判明したため,甲市に払下げを申請中である場合,Aは,重要事項説明書に払下申請書の写しを添付し,その旨をBに説明すれば,売買契約を締結することができる。」 |
【正解:×】 ◆市所有の旧道路敷を含む宅地−一部他人物 建物の敷地の一部に甲市所有の旧道路敷が含まれているということは,売買の目的物の一部が他人物であるということです。Aが甲市に払下げを申請していても,甲市と売買契約を締結していないので,当該旧道路敷をAが確実に取得できるとはいえません。 このため,重要事項説明書に払下申請書の写しを添付し説明したとしても,売買契約を締結することは,自己の所有に属しない宅地又は建物について売買契約を締結することになり,宅建業法に違反するので,本肢は誤りです。 ●自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と自己の所有に属しない宅地又は建物について売買契約(予約を含む。)を締結することは, 当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み,その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているときその他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令で定めるとき を除いて,原則として,禁止されています(宅建業法33条の2第1号)。 |
2.「Bが,当該建物の近所に長年住んでおり,その建物に関する事項を熱知していると言っている場合,Aは,Bに対して重要事項説明書を交付すれば,重要事項の説明を行うことなく,売買契約を締結することができる。」 |
【正解:×】 ◆買主が熟知していても,重要事項の説明を省略できない たとえ,買主がその物件について熟知しているとしても,宅建業者には調査して重要事項を説明する義務があるので,重要事項の説明を行うことなく,売買契約を締結することはできません(宅建業法35条1項)。本肢は誤りです。 |
3.「損害賠償額の予定及び違約金について,Bから提示された内容のとおりとする場合,Aは,重要事項説明書に記載してその内容を説明することなく,売買契約を締結することができる。」 |
【正解:×】 ◆損害賠償額の予定または違約金に関する事項 損害賠償額の予定または違約金に関する事項は,35条の重要事項として重要事項説明書に記載するだけでなく,必ず説明しなければならないものです(宅建業法35条1項9号)。 買主が提示した内容どおりにするにしても,説明しなければならないので,<重要事項説明書に記載してその内容を説明することなく,売買契約を締結できる>とする本肢は誤りです。 ▼買主が提示した内容どおりにするとしても,損害賠償額の予定及び違約金の合計は代金の20%を超えることはできないので(宅建業法38条),この点にも注意する必要があります。 |
4.「Aが,遠隔地に住んでいるBの了承を得て,「Bが希望する時期に説明をする」 旨の条件付きで重要事項説明書を郵送した場合で,Bから希望する時期を明示されないときでも,Aは,重要事項の説明を行った後に限り,売買契約を締結することができる。」 |
【正解:○】 ◆重要事項の説明は契約締結の前 重要事項説明書を郵送している場合でも,重要事項の説明を行った後でなければ,売買契約を締結することはできません。 本肢は,正しい記述です。 ▼近年は,重要事項説明書を前もって郵送し,よく検討してもらった上で,重要事項の説明をする方法を執る宅建業者が増えています。 |
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