宅建業法 実戦篇

重要事項の説明の過去問アーカイブス 平成12年・問39 


宅地建物取引業者が,宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項について説明をする場合に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成12年・問39)

1.「建物の貸借の媒介において,当該貸借が借地借家法第38条第1項の定期建物賃貸借である場合は,貸主がその内容を書面で説明したときでも,定期建物賃貸借である旨を借主に説明しなければならない。」

2.「建物の売買の媒介において,売主が瑕疵担保責任を負わない旨の定めをする場合は,その内容について買主に説明しなければならない。」

3.「建物の貸借の媒介において,借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは,その額及びその目的のほか,当該金銭の授受の時期についても借主に説明しなければならない。」

4.「建物の売買の媒介において,買主が天災その他不可抗力による損害を負担する旨の定めをする場合は,その内容について買主に説明しなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「建物の貸借の媒介において,当該貸借が借地借家法第38条第1項の定期建物賃貸借である場合は,貸主がその内容を書面で説明したときでも,定期建物賃貸借である旨を借主に説明しなければならない。」

【正解:

◆定期建物賃貸借

 定期建物賃貸借をしようとするとき,賃貸人には,あらかじめ書面を交付して説明する義務があります。〔説明しなかったときは契約の更新がない旨の定めは無効になる。〕(借地借家法38条2項・3項)

 建物の貸借の媒介では,定期建物賃貸借である旨を重要事項として説明しなければなりませんが,賃貸人に課された上記の説明とは別に行うものとされています(宅建業法35条1項14号,施行規則第16条の4の3第8号)

●宅地建物取引業法の考え方

5  定期借地権、定期建物賃貸借及び終身建物賃貸借について(規則第16条の4の3第8号関係)

    定期借地権を設定しようとするとき、定期建物賃貸借契約又は終身建物賃貸借契約をしようとするときは、その旨を説明することとする。

    なお、定期建物賃貸借に関する上記説明義務は、借地借家法第38条第2項に規定する賃貸人の説明義務とは別個のものである。また、宅地建物取引業者が賃貸人を代理して当該説明義務を行う行為は、宅地建物取引業法上の貸借の代理の一部に該当し、関連の規定が適用されることとなる。

2.「建物の売買の媒介において,売主が瑕疵担保責任を負わない旨の定めをする場合は,その内容について買主に説明しなければならない。」

【正解:×

◆瑕疵担保責任

 宅建業者が自ら売主で,宅建業者ではない者が買主のときは,瑕疵担保責任を負わない旨の特約は無効です(宅建業法40条)

 しかし,それ以外のときは,民法の瑕疵担保責任は任意規定なので,売主が瑕疵担保責任を負わない旨の特約は有効です。

 37条書面では,瑕疵担保責任について定めがあるときにはその内容を記載する義務がありますが(宅建業法37条1項11号),35条の重要事項として説明する義務はないので,本肢は誤りです。

瑕疵担保責任

   瑕疵担保責任
 35条の重要事項  説明義務はない。
 37条書面  定めがあれば,記載しなければならない。
●瑕疵担保責任の履行に関する保証保険契約の締結その他の措置
 平成18年の改正により,以下が35条の重要事項に加わりました。

 宅地・建物の瑕疵担保責任の履行に関して保証保険契約の締結その他の措置で,国土交通省令で定めるものを講じるかどうか,及びその措置を講ずる場合のその措置の概要>

 これ以外の瑕疵担保責任の定めについては,従来と同じで,35条の重要事項としては規定されていません。

●瑕疵担保責任に関する保証保険契約

   35条の説明義務  37条書面の記載義務
 売買・交換
 (媒介・代理)
 説明義務  定めがあるときは
 記載義務
 貸借の媒介・代理  説明義務はない  記載義務なし

●瑕疵担保責任

   35条の説明義務  37条書面の記載義務
 売買・交換
 (媒介・代理)
 説明義務はない  定めがあるときは
 記載義務
 貸借の媒介・代理  説明義務はない  記載義務なし

3.「建物の貸借の媒介において,借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは,その額及びその目的のほか,当該金銭の授受の時期についても借主に説明しなければならない。」

【正解:×

◆借賃以外に授受される金銭の額とその目的

 建物の貸借の媒介では,借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは,その額及びその目的を,重要事項として説明する義務があります。しかし,当該金銭の授受の時期については説明する義務はないので,本肢は誤りです(宅建業法35条1項7号)

借賃以外に授受される金銭の額・目的・授受の時期

   借賃以外に授受される
 金銭の額・授受の目的
 授受の時期
 35条の重要事項  説明義務  説明義務はない
 37条書面  定めがあるときに,記載  定めがあるときに,記載

4.「建物の売買の媒介において,買主が天災その他不可抗力による損害を負担する旨の定めをする場合は,その内容について買主に説明しなければならない。」

【正解:×

◆天災その他不可効力による損害の負担

 37条書面では,天災その他不可抗力による損害の負担について定めがあるときにはその内容を記載する義務がありますが(宅建業法37条1項10号),35条の重要事項として説明する義務はないので,本肢は誤りです。

天災その他不可抗力による損害の負担

   天災その他不可抗力による損害の負担
 35条の重要事項  説明義務はない。
 37条書面  定めがあるときは,記載しなければならない。
●重要事項として説明する義務がないもの ⇒ 37条書面の記載事項
代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法(借賃の額並びにその支払の時期及び方法 )

・宅地又は建物の引渡しの時期

移転登記の申請の時期

・代金及び交換差金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは,当該金銭の授受の時期(借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは,当該金銭の授受の時期)

天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容

・当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任についての定めがあるときは、その内容

・当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容

●重要事項説明・37条書面に共通するもの

・契約の解除に関する定めがあるときは、その内容

・損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容

・代金又は交換差金についての金銭の貸借のあつせんに関する定めがある場合においては、当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置

・瑕疵担保責任の履行に関して保証保険契約の締結その他の措置<ただし,宅地・建物の貸借では35条の説明義務,37条書面の記載義務はない>


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