宅建業法 実戦篇

業務上の規制・媒介契約の過去問アーカイブス 平成13年・問37 


宅地建物取引業者は,から住宅用地の購入について依頼を受け媒介契約を締結していたところ,古い空き家が建った土地(甲地)を見つけ,甲地の所有者ととの売買契約を締結させ,又はさせようとしている。この場合,宅地建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(平成13年・問37)

1.「は,が住宅の建設を急いでおり更地の取得を希望していることを知っていた場合でも,空き家について登記がされていないときは,に対して空き家が存する事実を告げる必要はない。」

2.「甲地が都市計画法による第二種低層住居専用地域に指定されている場合で,その制限について宅地建物取引業法第35条の規定による重要事項の説明をするとき,は,に対して,低層の住宅が建築できることを告げれば足りる。」

3.「に対して,甲地の現況を説明しようとする場合,が甲地の地中の埋設管の有無について土地利用状況の経歴,関係者への照会等の調査を実施したが判明せず,埋設管の無いことを断定するためには掘削その他の特別の調査が必要であるときは,は,その旨を告げれば足りる。」

4.「が甲地を取得し,自ら古い空き家を除去するつもりである場合で,媒介契約に特別の定めがないとき,は,が甲地を取得した後も,その空家の除去が完成するまでは,媒介報酬の支払を請求することはできない。」

【正解】

× × ×

1.「は,が住宅の建設を急いでおり更地の取得を希望していることを知っていた場合でも,空き家について登記がされていないときは,に対して空き家が存する事実を告げる必要はない。」

【正解:×

◆重要な事項についての不告知

 は更地の取得を希望しているのですから,その土地に古い空き家が建っていることはその除去費用もかかることを意味し,空き家があることはにとっては重要な事項に該当します。⇒除去費用がかかるならば買わないことも考えられるからです。

 宅建業者は,その相手方等に,<重要な一定の事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為>をすることは禁じられているので(宅建業法47条1号),登記されていなくても,甲地に古い空き家が建っていることを告げないのは,この規定に違反します。

 したがって,本肢は誤りです。

   要件  監督処分  罰則
 35条1項
 に違反
 無過失責任  業務停止処分
 〔情状が特に重いときは免許取消〕
 なし
 47条1号
 に違反
 故意  業務停止処分
 〔情状が特に重いときは免許取消〕
 2年以下の懲役
 もしくは
 300万円以下の罰金
 または 併科
●業務に関する禁止事項
(業務に関する禁止事項)
第47条
 宅地建物取引業者は,その業務に関して,宅地建物取引業者の相手方等に対し,次に掲げる行為をしてはならない。

1号 宅地若しくは建物の売買,交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し,又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため,次のいずれかに該当する事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為

イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項
ロ 第35条の2各号に掲げる事項 (供託所等に関する説明)
ハ 第37条第1項各号又は第2項各号(第1号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか,宅地若しくは建物の所在,規模,形質,現在若しくは将来の利用の制限,環境,交通等の利便,代金,借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって,宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの

2.「甲地が都市計画法による第二種低層住居専用地域に指定されている場合で,その制限について宅地建物取引業法第35条の規定による重要事項の説明をするとき,は,に対して,低層の住宅が建築できることを告げれば足りる。」

【正解:×

◆法令上の制限−用途地域

 宅地の売買の媒介では,用途地域について,その概要を重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項2号,施行令3条1項2号)

 第二種低層住居専用地域について,単に低層の住宅が建築できると説明するだけでは不十分ですから,本肢は誤りです。

法令上の制限については,契約内容の別〔売買・交換(その媒介・代理も含む),宅地の貸借,建物の貸借の3区分に分かれています。〕に応じて,政令で定められています

3.「に対して,甲地の現況を説明しようとする場合,が甲地の地中の埋設管の有無について土地利用状況の経歴,関係者への照会等の調査を実施したが判明せず,埋設管の無いことを断定するためには掘削その他の特別の調査が必要であるときは,は,その旨を告げれば足りる。」

【正解:

◆調査しても判明しないとき

 宅建業者には物件についての調査・説明義務がありますが,地中の埋設管の有無について土地利用状況の経歴,関係者への照会等の調査を実施しても判明しないのであれば,掘削その他の特別の調査〔過大な調査費用のかかるもの〕まで課されているとはいえず,「埋設管の無いことを断定するには掘削その他の特別の調査が必要である」と告げれば足りると考えられます。

4.「が甲地を取得し,自ら古い空き家を除去するつもりである場合で,媒介契約に特別の定めがないとき,は,が甲地を取得した後も,その空家の除去が完成するまでは,媒介報酬の支払を請求することはできない。」

【正解:×

◆媒介の報酬の受領時期

 宅建業法では,報酬の額については制限がありますが,報酬の受領時期については特に制限はないので,は,媒介契約の目的である甲地の売買契約を成立させている以上,依頼者に報酬の支払を請求することができます。


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